灰王家の怪人 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)

著者 :
  • 南雲堂
3.50
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本棚登録 : 86
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784523265023

感想・レビュー・書評

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  • 己が出生の秘密を知りたくば、山口県鳴女村の灰王家を訪ねよ」
    という手紙をもらい鳴女村を訪ねた鈴木慶四郎。
    すでに廃業した温泉旅館灰王館でもてなされるうち、13年前にそこの座敷牢で起きた密室ばらばら殺人事件と現在周囲をうろつく怪しい人影の話を聞く。
    それらの謎を調べるうち、またもや同じ座敷牢で殺人が。
    そして事件を調べていた友人・雪入も同様に座敷牢で殺されてしまう。
    13年前の事件との関係は?そして犯人どうやって座敷牢から消え失せたのか。

    門前さんの新作は本格ミステリー・ワールド・スペシャルからの刊行でした。
    今年始まったこのシリーズ。島田荘司さんと二階堂黎人さんが作られたそうで。
    第一弾が小島さん、そして第二弾が門前さんという。
    この人選だけで、私にとってはとても期待のもてるシリーズとなっておりますが。

    ん~、でも今回は門前さんということで期待しすぎてたかも。
    雪入については早々にネタがわれてしまうように書かれていました。
    そのせいでちょっとがっかりでしたが、その後の二転三転はさすが。
    個人的には13年前の真相、アレが出てきたことはかなりツボでした。
    でも謎解きが説明的すぎて、ちょっとしんどかったです。
    ものすごい考えられていたのはわかりましたが。

    次はまた蜘蛛手のでてくる長編が読みたいな。

  • さすが「屍の命題」の作者と言うべき、めちゃくちゃ攻めたストーリー(笑)
    そのチャレンジャースピリットは、個人的には大いに買えるが、絶対許せない人がいるのもわかる。大きく括れば麻耶雄嵩御大と同じ箱に入るのだろうが(名文家ではけしてないところも含めw)、品格やカリスマでは及ばないと感じる。

    2020/3/9読了

  • 灰王家の登場人物が少ないせいか、旧家を舞台にした豪華な人間関係のドキドキ感に乏しくて中弛み。違和感ありありの伏線にも薄々感づいてしまって、若干萎えた気持ちで事件の真相へ。
    そんなこちらの油断を軽くあざ笑う、あっと驚く圧巻の畳みかけで目が冴える。「伏線一つ分かったくらいでいい気になるな」とお叱りを受けたような衝撃。こんなんありえないと思うより先に、その発想と組み立てに脱帽。母の涙々の苦悩と明日を信じて生きてきた人間の悲しい叫びが最終で胸を抉った。

  • かつては豪勢を極めながら今は寂れた温泉旅館、と言う設定もいいし、そこで起きる2度の密室バラバラ殺人事件と言う設定も掴みとして魅力的。
    登場人物は少ないながら、うまく人間関係を絡めて、退屈させない。

    叙述トリックがあるのは分かるし、主人公の一人称が伏線となって探偵役の雪入の正体も分かる。
    猟奇殺人で死体が部分的に見つからないトリック(シャム双生児)も以前読んだ事があって早々に分かってしまう。

    それでもラストにもう一捻りあって、主人公がそのシャム双生児の生き残りというのは想像できなかった。
    そこまでバラバラになって生き残れるかは疑問だけど、ロジックとしては意表を突かれた。
    緻密に構築されたプロットは魅力的で、門前典之氏の作品は初めてだったが、是非次を読んでみたい。

  • 話としてはそれなりに面白いのですが、それを打ち消す設定のあり得ない感がすさまじくて。
    それと、鬼の話がうまく筋にからんできていないように感じました。

  • 『屍の命題』でのとんでもない奇想にすっかり魅せられ、続いてこの本を買ってきました。
    いやぁ!これは悪魔の発想とでも言えば良いのでしょうか?
    その発想を着地させるために、綺麗に決まっているものから、意図的に(?)分かりやすくなっているものまで様々な趣向や伏線が仕込まれていて唸らされました。
    そしてミステリとしてよく出来ているのも勿論なのですが、事件の真相と共に浮かび上がってくるなんとも物悲しい物語は、その邪悪な発想のもつ性質と相成ってかなり泣かせます。
    二重三重の密室や首切り殺人という本格ミステリ的なガジェットを用いつつも、そこに物語を上手く組み込んだ異様な趣のあるミステリです。

  • 未解決怪奇事件を誰が気にしてて、解決するのかまでがミステリーの一部です
    全体がどんでん返し
    殺人事件があったのかどうかすら怪しくみえてくる
    変態的な構成
    作家が怪人だよ
    (7/07/'14)

  • 門前典之作品としては建築色が薄い作品で、
    冒頭の舞台見取り図も超シンプル。

    その分、鬼伝説を冒頭に据えたり、独白をこまめに挟んだりと
    物語の雰囲気作りと話の持っていき方に力が注がれていて
    雰囲気に酔いながら次々とページを捲ってしまう
    読みやすさと没入感はこれまでの作品にない特徴。

    登場人物も必要最小限に絞られていて、
    余計なことに目を逸らせずにトリックに焦点を絞った上で
    土台となる下部にあたるトリックは読者にあえて気付かせておいて
    メイントリックわかっちゃったよと読者が油断しておいたところに
    真相にあたる上部のトリックを最後にもってきて驚かす
    という上下の多重構造で構えておくというのが
    おそらく作者の意図としてあったのだろうと思われる。

    その試みはほとんどの読者に対して成功していると思うけど
    如何せん肝心のトリック自体がトンデモに近いものなので
    驚きというより「おお、もう・・・」という状態に
    なってしまったのが、惜しいといえば惜しかったところ。

    相変わらずのグロさはあって想像したくない場面もあるが、
    読者を驚かそうという考えられた試みは好感が持てるし
    読み終わっての満足感は高かった。

    奥深い山の中にある、かつての名家を主人公が訪れると、
    そこには蔵があって、座敷牢に閉じ込められた人がいて・・・
    という横溝風の本格ミステリーが好きな人は
    読んで損はしない作品だと思う。

  • おどろおどろしい廃業した田舎の温泉宿。謎の蔵に美しい母娘。と、くれば子守歌の見たて連続殺人を思い出したが、金田一は金田一でも子守歌でなく悪霊島のほうだった。こういう設定はあまりにも作りすぎな感じがしてあまり好みはでないのでどうしても辛い評価になってしまう。ただトリックと真相の意外さはよくできていた。

  • 門前作品ではトップクラス

    探偵役っぽい人が唐突にでてきて、主人公のもう一つの人格臭いのはわかりやすすぎたけれども、密室に対しての答えとえぐさはつぼにはまる。どんどん突っ走って欲しいです。

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著者プロフィール

2001年に『建築屍材』で第11回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。他の著作に『エンデンジャード・トリック』『首なし男と踊る生首』『灰王家の怪人』『屍の命題』『浮遊封館』など多数。

「2021年 『卵の中の刺殺体 世界最小の密室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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