ソーラー・デジタル・グリッド-卒FITで加速する日本型エネルギーシステム再構築-

  • 日刊工業新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784526080586

作品紹介・あらすじ

日本版FITで図らずも急増した太陽光発電をベースに、急激に普及するEV/PHVの電源としての活用、及びエネルギーを需給に合わせて制御・取引する高い層のデジタルグリッド網など、卒FITが起爆剤となって進む日本型エネルギーシステム再構築の姿を訴える。

感想・レビュー・書評

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  • 前半、業界、海外動向の概観。
    後半、情報のやりとりや決済ネットワークをエネルギーシステムの外にも広げ、ステークホルダーを増やし、インセンティブプログラムやブロックチェーンを使って多くのアセットを活用して構築する、再エネ大量導入のエネルギーシステムの提案。

    <第1章>
    ◯海外でのFIT制度からFIP制度への移行
    ・プレミアム固定FIP:スペイン(-2007)
     +電力需要の大きい時間帯における再エネ供給インセンティブが高まる
     −卸電力価格の変動に再エネ事業者の利益が大きく左右される
    ・プレミアム固定FIP(上限・下限付):スペイン(2007-2013)、デンマーク
     +卸電力価格の変動による事業の収益性への影響をある程度軽減できる
     −適正な上限値、下限値の設定が難しい
    ・プレミアム変動型:イタリア、ドイツ、オランダ、スイス
     +卸電力価格の変動による収益性への影響を低減できる
     −市場価格が低下した場合、賦課金が増大

    ◯日本のFIT制度は不幸が重なりスタート。異例に高い買取価格からの急激な低下、国民負担の増大、国内メーカーの淘汰、発電ポートフォリオの歪み

    <第2章>
    ◯EU
    ・座礁資産論、EUタクソノミーによる投資誘導

    ・電力自由化
    1996年 小売部分自由化、送電事業の会計分離
    2003年 小売全面自由化、送電事業の法的分離
    2009年 送電事業の会社分離

    ・ピーク時約5億8000万kWの広域送電網。広域送電機関ENTSO-e

    ・電力・ガス小売、配電事業の集約、再エネ事業の集約等の再編

    ◯米
    ・送電網
     ①州ごとの独立送電運用機関(ISO: Independent System Operator)
     ②複数の州のISOが連携した地域送電運用機関(RTO: Regional Transmission Operator)
     ③垂直一貫統合型

    ・自由化
     ISO/RTOの地域の中の13州
     2000-2001年のカリフォルニア電力危機の影響

    ◯再エネファンド
    ・アセットファイナンスとして、金融機関、不動産会社が算入

    ◯大規模電源開発の停滞による重電メーカーの苦境

    ◯AI/IoT技術の進展によるスマートシティ化
     VPP、リソースアグリゲート
     例)柏の葉、藤沢

    <第3章>
    ◯再エネ評価
    ・風力:適地、コスト低減の限界
    ・バイオマス:社会システム転換とともにコスト削減
     例)乾式バイオガス精製設備
     海外輸入は制限すべき?エネルギー密度が低く現地利用が適切
     藻類・微生物バイオ燃料は有用
    ・メガソーラー:適地、防災面での限界
    ・ルーフトップPV:①断熱効果、②投資バリエーション、③送電線負荷相対的低、④建物・システムパッケージ商品化

    ◯ルーフトップPVの課題
    1低圧レイヤーの電気の融通
    2発電量予測・管理
    3発電投資の持続性
    4発電規模(需要ベースからポテンシャルベース)
    5変動吸収

    ◯変動吸収:揚水発電、蓄電池、熱転換、水素
    ・揚水発電は154,000Vの超高圧変電所
    ・多くの太陽光は6,600V以下の配電網に接続
    →昇降圧ロス

    ・稼働率の低いEV蓄電池の活用
    →3割程度参加で吸収可能

    ・PV発電量予測に必要な情報:設備仕様、設備規模、設備の設置状況、設備の劣化状態、日照
    ・スマートコントラクトを活用した自然主導マッチングシステム

    ・冷熱・温熱エネルギーの調整力の活用:冷蔵庫、給湯ヒートポンプ、工業用炉
    例)冷蔵庫:5000万世帯、1台、消費電力量0.3kW、ピーク時フル稼働に応じる稼働率を30%とすると約450万kWの上げDR

  • 【推薦コメント】
    インフラ系企業にインターンシップに行った際に,再生可能エネルギー分野におけるFIT(固定価格買取制度)の重要性について学びました.また,再生可能エネルギー分野は近年発展が目覚ましく,常にアンテナを張っていないと取り残されてしまうと感じました.そこで,再生可能エネルギーにおいて要となってきたFIT法が大きく見直される今年,FITに関する知識を深めてほしいと思い,この本を選書しました.
    (工学研究科 M2)

    【所蔵館】
    総合図書館中百舌鳥

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000941196

  • 請求記号 543.1/I 38

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著者プロフィール

日本総合研究所フェロー。1958年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、三菱重工業に入社。1990年に日本総研へ。2021年に同社専務執行役員を退任し現職。アイフォー代表取締役、北陸産業活性化センター・エグゼクティブフェロー、NECエグゼクティブ コンサルタント、Team Energy顧問、DONKEY取締役会長も務める。

「2021年 『脱炭素で変わる世界経済 ゼロカーボノミクス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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