組織の〈重さ〉: 日本的企業組織の再点検

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532133375

作品紹介・あらすじ

戦略情報は共有されない一方で、社内の合意形成を過剰に重視する日本の企業組織-。経営政策の転換や前進のための投資を阻害し、非合理的な経営戦略を創発する「重い組織」の実態を、詳細な質問調査表にもとづいて解明する本格的実証分析。

感想・レビュー・書評

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  • 組織の<重さ>という観点を設定して、様々な課題の解決や新規事業への取り組みなど、組織が本来取り組んでいくべきことにスピーディーに立ち向かっていけない要因は何なのかを分析した本。

    組織のもつどのような特徴が組織を<重く>しており、それらは企業の意思決定にどのような影響をどの程度与えているのか、企業内の事業部のトップからミドル・ロワークラスのマネジメント層へのインタビューをもとに分析をしている。

    全体的には、組織の硬直化や意思決定の遅さを生むと思われている様々な要因が、調査をもとにした統計解析によって明らかにされており、非常に説得力のあるものだった。一方で、一般的には組織の中のコミュニケーションを円滑にするように思われる、組織内の他部門の知人の多さも、逆に調整の時間を長引かせる要因になっている側面もあるといったように、予想外の発見もあり、非常に興味深く読んだ。

    また、計画に基づく公式ルートでの人事評価や部門間調整が目には見えないところで組織の活動をスムーズにするとともに、求められる課題に対して各部署の自主的な取組みの実施を可能にしているという点も、重要な指摘であると思った。

    そもそもの計画の策定がどのような形で行われるべきなのかという点にはより一層の検討が必要であろうが、組織内の情報伝達や評価、方針決定のあり方について非常に示唆の多い研究だと思う。

  • 「重い組織」とは「通常の組織運営や創発戦略の生成・実現に際してミドル・マネジメント層が苦労する組織」であり、そのような「組織劣化の程度」を<重さ>としています。

    一番面白かったのは、ミドル/ロワーの構成員が組織の「重さ」を比較的感じないのは、有機的組織と機械的組織が共存している状態、言い換えると縦の公式組織と横の非公式組織が共に機能している状態であることです。組織論の基本となるいわゆる官僚的な縦の支持命令報告ルートを適切な情報が流れ、かつ非公式なつながりに基づく有機組織が補完している状態、とはどちらかに極端に触れやすい組織論において、当然かもしれませんが王道を行く回答の証明と言えるのではないでしょうか。奇抜な非現実的なアイディアを提示するのではなく、学術的に、実務家としての実感をしっかりサポートしてくれる良著です。

  • 重すぎる。

  • 組織の重さと諸要因の関係を科学的に把握するための貴重な研究。
    ミドル層へのアンケート調査をもとに定量分析を行っている。
    参加企業はプロジェクトに賛同した計18社。BU数は107。

    組織の重さを
    ①過剰な「和」志向
    ②経済合理性から離れた内向きの合意形成
    ③フリーライダー問題(口は出すが責任は取らない人、決断力の不足)
    ④経営リテラシー不足
    の4つの変数から推定。
    因子分析にかけて①②を「内向き調整志向」変数、
    ③④を「組織弛緩性」変数として組織の重さを計測する。

    本研究の一番のインプリケーションとしては
    機械的組織と有機的組織、
    縦横における公式と非公式の繋がり
    これらがバランス良く設計されている組織は
    組織の重さが軽くなる可能性が高い、ということ。

    そして本研究では組織の重さと業績面での統計的相関分析は行わず、(そもそも選択バイアスがあるため無意味)
    調整比率と組織の重さの相関分析を行っている。
    調整比率はモデルチェンジの日数、新規事業日数、撤退日数に際して、組織内での調整にかかる時間をアンケートで定量的に把握して分析している。
    日数(比率)が減れば、コスト削減や市場への迅速な対応に繋がり、業績に好影響が出るという仮定が裏にある。

  • 書名同様重かった。

    思うところは数多くあるが、
    理解するまでにまだまだ時間がかかりそう。

    読み過ぎると、診断士試験の事例Ⅰ(組織戦略)に影響しそう(かも?)。

  • 組織論をここまで実証分析した本って中々なくないかという程、数多くの会社組織にアンケートをとって定量化した本。

    この本は過剰な「和」志向が組織を<重く>してしまって創発性を欠乏させてしまうというシナリオ。従って、アメリカ企業の組織劣化に見られるような、計画・ルール・ヒエラルキー・体制という機械的組織デザインニングの失敗ではなく、内向きの弛んだ共同体意識(馴れ合い)が齎したものだと説く。


    こういう柔らかい議論を統計という言語で捉えているので興味深かった。そして何といってもちゃっかり榊原先生の名が載っている本でもある笑 やはり先生は偉大だw


    経済学も経営学も追いかけ続けるバブル後の『失われた10年』の検証の様な物でもある。しかしこの本の示唆は極めて大きい。

    実はこうした日本企業の経営劣化の議論は、経済学でもコーポレートガバナンスの分野で議論されており、読者である私にヒントをくれた本でもある。

    それにしても日本は依然として『失われた10年』を引きづり続けているのだから「日本は、変らない」。

  • 最近の仕事ではお客様の組織に関する課題解決をお手伝いすることが凄く増えているのですが、合理性にかける課題が多いと感じていて、本書を買ってみた。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2023年 『わかりやすいマーケティング戦略〔第3版〕<2色>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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