リーダー・パワー: 21世紀型組織の主導者のために

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532166823

作品紹介・あらすじ

21世紀のフラット化した組織では、従来のトップダウン型リーダーシップは通用しない。新時代のリーダーは、どのような力と資質を獲得し、どのような方法で人々を主導すべきなのか。権力を背景にしたアメとムチ(ハード・パワー)か、それとも相手の心を引き寄せる力(ソフト・パワー)だろうか?前著『ソフト・パワー』で、21世紀の国家は、軍事力、経済力といったハード・パワーのみならず、国の文化、政治的な理想、政策の魅力といったソフト・パワーの活用を重視しなければならないと喝破し、全世界で注目を集めた著者が、本書ではその理論を国家、組織、会社を主導するリーダーにあてはめ、歴史に残る偉大なリーダーの事例を引きながら論じる。ハード・パワーとソフト・パワーの両方を組み合わせて人々を従わせるにはどう考えればいいのか。リーダーを選び、リーダーを査定し、またはリーダーになるための最高の入門書である。

感想・レビュー・書評

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  •  国際政治学者による指導者論。
     すでに汗牛充棟の観がある指導者論の中にあって、本書を類書から分かつのは、リーダーシップを論ずるにこれ以上ないほどふさわしい著者の経歴だ。

     著者は米ハーバード大学で40数年にわたって教鞭をとり、同大ケネディスクール(行政大学院)の院長もつとめ、各界のリーダーを数多く教育してきた。また、自らも米政府の要職を歴任し、国際政治の現場で多くの指導者とも接してきた。長年の研鑽と経験をふまえて書かれた本書は、これからの時代に求められる指導者像を的確に分析した内容となっている。

     著者は「ソフト・パワー」(自国の魅力によって他国を味方につける力)という概念の提唱者として知られるが、本書においても、ソフト・パワーがリーダーの資質を読み解く要因として重視されている。本来は国力を測る概念であるものを、リーダーの力量を測るために援用しているのだ。
     自らの魅力で他者を動かす力がリーダーとしてのソフト・パワーであり、権威や報酬などによって他者を強制的に動かすハード・パワーと区別される。

     リーダーシップにおけるソフト・パワーの重要性は、年々高まりつつある。「今日の人々は組織や政治の権威に対して、あまり敬意を払わない」からだ。
     そう認識したうえで、著者は「優秀なリーダーは、ソフト・パワーとハード・パワーの両方のスキルを必要とする」と言う。そして、その時々の状況に応じて2つの力をどう使い分けるかを瞬時に判断する「状況把握の知性」こそ、リーダーに不可欠な最重要の資質だとしている。

     著者は、「リーダーシップは学習可能だ」とも指摘する。
     リーダーが広く分散して存在する現代民主主義社会にあって、リーダーシップは政治家や経営者などのみならず、誰もが身につけるべきスキルといえる。
     古今東西の指導者論のエッセンスをちりばめ、よいリーダーと悪いリーダーの違いを豊富な実例から平明に示した本書は、そのための格好の“教科書”でもある。

     タイトルだけ見ると安直なビジネス書のようだが、内容は凡百の「ビジネスマン向けリーダー論」よりはるかに深く、示唆に富んでいる。再読、三読に値する本だ。

  • 政治の事例が多く、自分には馴染みがなく、多くの発見はなかった。あったのはリーダーはフォロワーの影響も受け、相互依存的であるという点。文脈次第であるという点。オンラインでのコミュニケーションが増えることから、言語を操る能力が極めて大事なこと。かつ多様化する価値観を持つ個人がいる世界においては、それらをつなげる新たな共同体の価値観を強く見せることのできるリーダーが求められていくというのは共感した。日本の教育であれば、いかにスピーチ等で相手の心をつかめるかなど、あるとよいのではと安直に思った。

  • リーダーシップって何なのかを知るために読もうとしていたが、逆にリーダーを審査する必要性も感じた。そのための指標として5つ学べた。
    ソフトスキルのうちの3つとして、コミュニケーション、EQ、VISION、ハードスキルのうちの2つとして、組織、政治スキル、
    この5つをもって、この人はどの力に長けたリーダーなのか分析していこうと思いました。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 3

  • リーダーシップとは何か、そしてどんなリーダーシップが最良かを論ずる、理論と実践を両面から追求した書。21世紀のリーダーは必読であろう。訳文も平易で読みやすい。

  • 2010.8.24

    著者のリーダーの定義は、「集団の共通の目標を設定し、それを達成する手助けをする存在」だ。

    リーダーシップを考えるときに注意すべきなのは、リーダーその人の個人的資質で全てを評価しないことである。リーダーとフォロワーは相互依存的であることを忘れてはならない。

    本著のキー概念は、「状況把握の知性」である。
    状況に応じて、ハードパワーとソフトパワーを使っていくことがリーダーに最も必要なことである。

    ソフトパワーの概念は自分としては新出なので、著者の前著『ソフトパワー』もよまなきゃね。

    メモ
    ・取引型と鼓舞型
    ・変革型と現状維持型
    ・ソフトパワー:EQ、コミュニケーション、ビジョン

  • (090926読了)
    【はじめに】
    ・最上の人(君主)について、その臣下たちは、そういう人があると知るだけである。その次の(君主)ならば、彼らは親近感を持って褒め称える。その次の(君主)には、彼らは畏れてよりつかない。その次(最下位の君主)になると、軽蔑するだけだ。(老子)
    ・ここから一つの議論が生まれる。すなわち、恐れられるよりも慕われる方がよいか、それとも逆か。人はそのいずれでもありたいと答えるであろうが、それらを併せ持つ事はおよそ困難であるから、二つのうち一つを手放さねばならない時には、慕われるよりも恐れられていた方がかなり安全である。・・・だがしかし、君主は、慕われないまでも、憎まれる事を避けながら、恐れられる存在にならねばならない。(マキアヴェッリ)

    【第1章 リーダーシップ】
    ・リーダーシップは変わりつつあり、世論調査によると今日の人々は組織や政治の権威に対して、あまり敬意を払わない。ソフト・パワーの重要性がますます高まってきている。
    ・マネジメント研究の専門家「全員参加型のプロセスの使用がますます増加している」。リーダーシップの専門家「リーダーシップの共有や分散」を口にする。
    ・リーダが預言者のようなスタイルととるのは、あまりしっかりと組織されていない社会運動にはふさわしいが、きちんとした組織の場合には、マネジメントの力量が重要になる。キャ開運動では、我々は会社組織の場合より、頼れるリーダーを期待することが多くなる。
    ・ハーバード・スペンサー1873年、「人が社会を作り出す前に、まず社会の方がそういう人間を作らなければならない」と指摘。
    ・カール・マルクス「人間は自分自身の歴史を作るが、自分が選んだ状況下で思うように作るのではなく、手近にある、与えられ、過去から伝えられた状況下でそうするのである」。
    ・リーダーの重要性は、「多かれ少なかれ、自分達が属する政治的共同体に対して、問題の状況をどのように診断して見せるか、そして、そのようにして、その政治共同体が自分達の決断を支援するように持っていくかという点にかかっている」。
    ・機会を逃さぬ直感とスキルを身につけていれば、リーダーは重要な存在になる。
    ・英雄型リーダーの上に成り立つ社会は、市民社会を発達させることができないし、今日のネットワーク社会の先頭を行くのに必要な広範な社会資本を整備することもできない。
    ・アインシュタインは、世捨て人というわけではなく、有名人という立場を楽しんでいたが、イスラエルの大統領やブランダイス大学学長への就任要請を断った。リーダーになることへの興味もスキルもないというのが、その理由だった。
    ・我々が一番普通に使うリーダーの意味は、他人の行動に責任を持ちつつ指示を出す人のこと。そこにはリーダーと同じ方向へ進むフォロワーの存在が暗示される。
    ・リーダーとは、人間の集団が共通の目標を設定し、それを達成する手助けをする存在であると定義。
    ・リーダシップを考える場合、リーダーが誰かという事だけでなく、リーダーが何をするかも重要。リーダーが人間集団に大してい実行する機能は、意味と目標を創設し、手段のアイデンティティと団結を強化し、命令を下し、集団で作業できるように動員をかけること。
    ・リチャード・ハックマン「リーダーの機能とは、強制的な指示を設定し、チームの構造を巧みに調整し、資源のサポートと専門的なコーチングを提供してやることである」と考えた。
    ・また、「チームのリーダーシップは複数のリーダーたちが『共同で』果たす事もあり得るし、チーム構造を改善する人、所属組織の制度を取り付ける人、チームのパフォーマンス向上につながるコーチングを行う人などは皆、チームでリーダーシップを発揮している」と述べている。
    ・リーダーシップとは三つの重要な構成要素、リーダー、フォロワー、状況を備えたプロセスと考えることができる。
    ・人をリードするやり方を学ぶには、様々な方法がある。経験から学ぶ事は一番普通で、一番効果も高い。経験は、危機に際して極めて重要な暗黙知を生み出す。しかし、経験と直観を補うのは分析論。
    ・リーダーシップに興味を持っている個人の経験から学ぶ人達が、科学的研究の成果を−例え限定的なものに過ぎないにしても−理解する事、そして、歴史的事例によって解明可能な行動の幅、さらには、状況が異なる事の持つ大きな意味を理解することは有益。

    【第2章 リーダーシップと力】
    ・人は持つ力が大きくなればなるほど、他人の考え方を拒絶する傾向が強まる。
    ・権力とは自分が望む結果を得るために、他人の行動に影響を及ぼす能力。これを実現するには大きく分けて三つの方法。
     ?威圧して脅迫するやり方
     ?報酬で誘うやり方
     ?相手を勧誘して仲間にするやり方
    ・警察、財力、人を雇用・解雇する力はハード・パワーで、これは誘導と脅迫に基づいている。脅迫や報酬がなくても、今日日の場を設定して相手を自分の側に引き寄せることで、望み通りの結果が得られる場合もある。これがソフト・パワー。
    ・「マネージャーは全てを管理する事はできない。そんな事は考えずに、影響、説得、それには多大な訓練を通じて仕事をする事を覚悟しなければならない。そして人々を導いてくれるのは、一人のマネージャーが作った規則や指導ではなく、企業文化−人々が身につけている、その組織共通の価値観−であることが多い」。
    ・「確かにコミットメントなしでも命令を出す事はできる。だが、それなくしてリードはできない。そしてリーダーシップがなければ、命令などうつろな経験、それも不信と傲慢に満たされた空疎なものになってしまう」。
    ・人々の好みを形作る能力は、人格、文化、政治的価値観、政治制度の魅力や、正当性があり倫理的に正しいとされる政策など、無形のものに関連することが多い。もし私があなたの心を引きつけて、望み通りの行動をとらせる事ができるなら、あなたのやりたくない事を無理強いする必要はない。他人が従いたくなる価値観を指導者が代表していれば、指導に必要なコストは低くなる。ソフト・パワーがあれば、リーダーはアメとムチの節約ができる。
    ・大学やNPOなどのように、フラット化したヒエラルキーを持つ組織では、ソフト・パワーが、リーダーにとって事実上唯一の利用可能な資産。
    ・ドワイト・アイゼンハワー「リーダーシップとは、人々に対して、そのようにやれと命令によって強制するだけでなく、人々が本心からリーダーのためにそうしたいと望むように、一緒に仕事をさせる能力のことである」
    ・ほとんどの人は、組織の中間層から上方と下方の両方に対して、人を引きつけたり説得したりする努力を続けながら、リードを行っている。成功する中間層のリーダーは、上司と部下の両方を説得したり、心をつかんだりするもの。
    ・マックス・ウェーバー「なぜ人々は追随し服従するのか」という疑問に対し、「支配や合法的権力を検討し、伝統的支配、合法的支配、カリスマ的支配という三つの典型的な型を提示」。
    ・力のタイプ  行動          源泉                事例
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     ソフト    勧誘して仲間に入れる  先天的資質、コミュニケーション   カリスマ、説得、レトリック、例示
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     ハード    脅迫して誘導する    脅迫と威嚇、給与と報酬       雇用、解雇、降格、昇進と補償
    ・心理学者「リーダーの自己主張が弱すぎると物事の達成は難しくなるが、強すぎても人間関係が悪化してうまくいかなくなる」事を指摘。
    ・情報革命は組織構造に影響を及ぼしつつなる。ヒエラルキーはますますフラット化し、流動的な接触のネットワークの中に埋没する。ホワイト・カラーと呼ばれる知的労働者が反応するインセンティブや政治的主張は、ブルー・カラーと呼ばれる産業労働者のそれとは異なる。現代の人々は組織や指示における権威に対して敬意を払う度合いが低くなっている。

    【第3章 タイプとスキル】
    ・変革型リーダーは、フォロワー達に働きかけて、自分達の関係を定めている集団全体の、より高い目標を達成する為に、各人が利己主義を超越するように誘導する。
    ・取引型リーダーは、フォロワー達の利己心に訴えかけて彼らを動かすタイプのリーダーであり、様々なアプローチを用いるが、その全てが報酬、処罰、利己主義に基づくもの。
    ・変革型は鼓舞とソフト・パワーに依存し、取引型は脅迫と報酬というハード・パワーに依存する。
    ・「変革型と取引型リーダーシップは高度に関連しあっているため、二つを分離してそれぞれ独自の効果を考えることは難しい」
    ・ソフト・パワーのスキル・・・EQ(心の知性)、コミュニケーション、ビジョン
     ?EQ・・・リーダーが自らの個人的情熱を伝え、他人をひきつけるのに必要な克己心、自制心、感情移入
     ?コミュニケーション・・・
     ?ビジョン・・・コミュニケーションを通じて伝える内容の一部がビジョン。ある思想に意味を与え、他人の心を鼓舞する絵を明確に表現して見せるスキル。
       成功するビジョンは、ある集団が直面している状況を的確に診断した上で作られていなければならない。
    ・ハード・パワーのスキル・・・組織、政治
     ?組織のスキル・・・ある組織や集団の構造、情報の流れ、報酬を与えるシステムを管理運営する能力。リーダーはシステムがきちんと整備されていて、効果的に実施するだけでなく、正しい決断を下すのに必要な情報を提供する事を補償できるだけのマネジメント能力を十分に持つ必要がある。
     ?マキアヴェリズムの政治スキル・・・実効性のあるリーダーシップにとって政治のスキルは非常に重要だが、見かけ以上に複雑なこと。威嚇、暗躍、交渉などはハード・パワーと関連深いが、政治には、人心の鼓舞、新しい有益な協定の周施、信頼関係のネットワーク構築などのソフト・パワーも含まれる。

    【第4章 状況と把握する知性】
    ・状況把握の知性は、幸運を構成するようそのうち、自分の力を及ぼせる唯一の部分。
    ・リーダーは何よりもまず、今の状況には、技術的で日常業務的な解決策が要求されているのか、それとも状況に適応できるような変化が必要なのか、判定しなければならない。
    ・リーダーが行動を起こさなければならない状況は多岐に渡る。
     ?文化の状況・・・人が取る周期的な行動パターン。集団は知識や価値観を伝えてゆく。国であれ組織であれ、異なる環境に遭遇したとき、文化の中で何が起きているのかを直ちに推定できる適切な手がかりを得られる人が、他人より優れている事になる。
     ?力の資源の分散の程度・・・集団内の力の分散の具合を直観的に把握し、精査する能力。
     ?フォロワーのニーズ・・・潜在的なフォロワー達のニーズや要求の変化を把握する能力。現状はどこまで安定しているのか?、人々はどの程度変化の必要性を感じているのか、どういうタイプの変化を望んでいるのかなど。
     ?時間の切迫性・・・危機は、不安定な状況の転換点であり、一般に時間的には切迫性という意味合いを持つ。危機とは極めて重要な価値観への脅威が存在し、時宜にかなった対応が重要となる状況と定義できる。
               時間的に切迫した危機が起こると個人であればアドレナリンをはじめとする各種ホルモンが分泌され敏捷性や活動力のレベルが上昇する。しかし、ストレスの最適点を超えると動揺と疲弊が強まって、理性的判断の邪魔をする。
               大きな危機で行う重要な仕事には
                1、状況診断の手助けをする、分析による認識的な仕事。
                2、分析よりも、暗黙知と経験が必要になる作業的な仕事
                3、トップ・リーダーが行う政治的な仕事で、これは戦略的選択も必要になる。
     ?情報の流れ・・・情報の流れという状況を作り出すことは、あらゆるレベルでの効果的なリーダーシップにとって重要。
           チームの成功をもっとも確実に予測させる重要な秘訣は、適切なチームを編成し、そこにコミュニケーションと情報についての集団的文化を作ってやる事。
           次にリーダーはチームの監視と維持を行い、チームが行う仕事がどの段階に達したら、指導を通じて有益な情報を提供するかを理解しなければならない。
    【第5章 よいリーダーと悪いリーダー】
    ・マネージャーを人間のモチベーションの違いから分類、一番有力になると判定したのは「権力要求型」
     ?仕事のやり方を改善することを重視するのが「業績改善型」
     ?他者と友好的関係を築くことを重視するのが、「提携要求型」
     ?他者に強い影響力を及ぼすことを重視するのが「権力要求型」
    ・よいリーダーとは、集団が目標を作り出し、それを達成する手助けを効率的に行う人物のことであり、その目標がよいか悪いかは関係ない。
    ・人々は「公正なリーダーよりも、集団内への利益を優先するリーダーの方を好む」
    ・マックス・ウェーバー「信条倫理の場合、絶対的な道徳の命令は、例えよい結果を得るためであっても決して侵犯してはならないのに対して、義務の倫理では結果が重要になる」
    ・日常的な行動の場合、人々の道徳的義務の間隔は三つの根源に由来する傾向
     ?良心の間隔で、これは個人や宗教に根拠を置くもので、完璧な道徳性をめざしている人々を導く
     ?全ての人々が社会生活で持つべき義務として取扱われる、一般的な道徳のルールに関するもの。
     ?職業的な倫理、人の果たす役割に伴う義務とみなされる伝統的な期待といったもの。
    ・リーダーの行動が結果によって正当化される時には、他の人間に課せられる犠牲についての疑問と、「道徳的運」と呼んだものについての問題が発生する。
    ・リーダーが意味を生み出す際、一番重要なのは、集団のアイデンティティを新たに確立するか、あるいは、既存のアイデンティティを変化させること。
    ・最良のフォロワーとは、自分で考える権限を持ち、忠誠心を持ちながらも、積極的にリーダーを批判し、正そうとする人々。消極的な人々では、リーダーが集団の目標を達成する手助けにあまりならない。
    ・消極的か孤立的な態度を取るリーダーは集団の任務達成に貢献することはほとんどないし、体制順応的なリーダーもあまり役に立たない。
    ・中間的にいるリーダーが政治的空白のため、トップからの明確な指示がないことに気付くという場面は非常に多い。
    ・リベラルな民主主義社会の重要な特徴の一つは、リーダ0シップの拠り所となるものが、広く分散している点。これに対して、独裁主義的な体制では、それが狭い範囲に集中する傾向にある。
    ・力とは、自分が望む結果を得るために、他の人々に影響を及ぼす能力の事だが、ただ単に他人を支配する力を求める事と、他の人々と一緒に力を求める事は、区別するべき。
    ・最良のリーダー「調整者として働く二つの特徴する−自己中心的な要素が皆無に近くなるまでに、感情面で大きく成熟している事、そして、民主的でコーチング力を備えたマネジャー的なスタイルである」
    ・リーダーシップは、主として本から学ぶものではない。しかし、本書のような本を読めば、歴史や心理学からの教訓を学び、必要なスキルについて認識し、よりよい理解を得る事ができる。

    【付録 リーダーシップ−12の短いヒント】
    ?よいリーダーシップが重要。よい=有能で、倫理的。成功には幸運も重要だが、よいリーダーは自分の運の成り行きについて、ある程度影響をおよぼすことができる。
    ?ほぼ全ての人がリーダーになれる。リーダーシップは学習可能である。リーダーシップは天性の素質だけでなく、育った環境にも依存する。リーダーシップは、公式の権威のある梨に関わらず、あらゆるレベルで存在しえる。ほとんどの人は、リーダーであると同時にフォロワーでもなる。彼らは「中間層からリード」する。
    ?リーダーシップは集団の目標を創設し、手助けをする。効果的なリーダーシップに必要なのは、ビジョンと対人関係/組織のスキル。
    ?優秀なリーダーは、ソフト・パワーとハード・パワーの両方のスキルを必要とする。勧誘して仲間にするスタイルと、命令を下すスタイルがある。変革型と取引型の、どちらの目標・スタイルとも、有益なものになり得る。とちらがよいかは、機械的に決まるものではない。
    ?リーダーはフォロワーに依存すると同時に部分的にはフォロワーによって形成される。ある程度のソフト・パワーが必要になる。一部の人には、先天的に他の人よりも強い存在感/魅力あるが、「カリスマ」はフォロワーから与えられることが多い。
    ?どのスタイルが適切かは状況次第である。「独裁的状況」と「民主主義的状況」、通常の状況と危機的状況、日常的な危機と前代未聞の危機がある。変化(あるいは変わらない事)への必要性の的確な判断が、状況把握の知性には必要不可欠である。
    ?時間の観点からすると、協議的なスタイルはコストがかかるが、より多くの情報を提供し、協力を取り付け、フォロワーに権限を委譲する事になる。
    ?マネジャーだからといって優れたリーダーだとは限らないが、有能なリーダーは普通マネジメントや組織についてのスキルを必要とする。そうしたスキルが、システムと制度を創設し、維持する。リーダーは単なる決定者ではない。リーダーは集団が、どのように決定したらよいかを決める手助けをする。
    ?危機の状況に対処するリーダーシップには、十分な準備、感情的な成熟、作業、分析、政治的な仕事などについて、それぞれの役割を見分ける能力が必要になる。スタイルとスキルの適切な組合せは、危機の段階に応じて変化する。経験が暗黙知を生み出すが、分析も重要になる。高熱のコンロの上に座った猫は、二度とそこへ座らない。火が落ちた冷たいコンロでも同じだ。
    ?情報革命と民主化が、ポストモダン的組織という状況における長期的な大変化を引き起こす−命令型から勧誘型のスタイルへの継続て変化に沿っておきつつある転換。ネットワーク組織には、協議スタイルが一層必要になる。時として、女性的スタイルというステレオタイプで見られるが、男女を問わずこの変化に直面しているのだから、それに適応する必要がある。権限を委譲されたフォロワーたちは、リーダーに力を与える。
    ?現実への挑戦、絶えず情報を求める事、変化に合わせて調整する事は、よい結果を得るのに欠かせないが、判断の際に重要なのは、伝統的なIQよりも、EQや経験豊かな知識である。
    ?倫理的なリーダーは可能性がある。三次元的な倫理判断には、目標、手段、結果へ注意を払う事が必要である。なお、結果とは、リーダーの属す集団にとっての結果だけでなく、外部から見た結果も含む。集団どうしの間にアイデンティティを作り出す事は、難しいが非常に重要である。

  • ・ソフトパワーとハードパワーを備えたスマートパワーが要求される。
    ・リーダーとフォロアーが相互に影響を及ぼしあう状況。
    リーダーシップとはアートである。よりカウンセラー的な役割を果たす。
    敵の肉体を破壊するだけでなく、敵の感情と精神を手中に収める必要がある。
    同心円の中心に位置するようなリーダー。
    歴史とは不完全な実験室に過ぎず、他の変数を一手に保つようなきちんと管理された実験をすることは不可能。
    実行の伴わないビジョンは意味がない。
    フラット化したヒエラルキーを持つ組織ではソフトパワーが唯一の資源。
    人気を求めることしか考えないリーダーは必要なときでも,ハードパワーの行使をためらう。
    EQ;自制心と他人への共感。盟友が身につけているものと同じような感情面での訓練をスキルが必要。
    トップの気分はすぐに伝わる。でれもがボスの事を注意深く見ている。
    優れた弁論の能力に欠けるリーダーでも例示、象徴、行動によって効果的なコミュニケーションを実現できる。レーガンは十分に選び抜いた小話を演説の中にちりばめる名人であった。
    ビジョンだけでは実現はできない。実行の伴わないビジョンも意味がない。良いリーダーは自分に不足する部分を補う部下を必ずチームに入れるようにする。
    意思決定を行い、決定したことを実現するために正確な情報が入ってくることと正確な情報を外に流すことはリーダーの能力。効率性より実効性のほうが重要。
    ハードパワーとスマートパワーをうまく組み合わせてスマートパワーの戦略とする。
    より広い範囲の人々が参加すると物事のスピードは落ちるが、より幅広い見解が得られいたずらに他人の意見に付和雷同する集団思考が避けられる。
    ポピュリズムと冷笑主義の間を揺れ動いてしまわないようにする。

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