松林図屏風

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
3.81
  • (9)
  • (9)
  • (11)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 94
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532170899

作品紹介・あらすじ

絢爛豪華な狩野派全盛の世に、独自の静かなる絵で対抗した巨匠・長谷川等伯の到達点。筆を取るのは己を浄化し、救うため-絵師の真とは。第2回日経小説大賞受賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 何ともこの世ではあらざる小説でした。
    最後の読み終わりも良かった。

  • 長谷川等伯とその一門を描いた作品。松林図屏風をこの目で見たことが無いのでイメージがわかなかったが東京国立博物館に展示しているらしいので一度鑑賞してこの作品を思い返したい。狩野派への対抗心や絵師としてだけではなく経営者としての等伯の視点も面白い。

  • 直木賞を受賞した安倍龍太郎の「等伯」は「松林図屏風」の作品そのものを深く掘り下げ「活字で鑑賞する絵画」の趣きだったが、本作は作品の背景に力点があり、晩年の長谷川等伯がどのような想いや心持ちで作品に向き合ったかぎ良く表現されている。その証拠に「松林図屏風」が登場するのは最後の数十頁程。

    また機会があれば東京国立博物館で「松林図屏風」をじっくりと鑑賞したい。
    (日経小説大賞受賞作)

  • 長谷川等伯をはじめとする、長谷川一門の活躍を、祥雲寺の桜図、楓図の作成場面を中心に物語にしたもの。当時の絵師の苦労がよくわかり、興味深く読み進められた。小説としては、安部龍太郎著「等伯」の方が内容は深く、松林図屏風の作成に対する熱意や作品の偉大さが強く表現されていたと思う。もうすこし、松林図屏風についてのボリュームがほしかった。

  • 2018/05/07

    かねてから日本画に詳しい友人が「狩野派と長谷川等伯あたりの話を大河ドラマにしてほしい、絶対おもしろい」と言っていた。
    この本がおもしろいというのもあるけど、確かにおもしろい。欲を言えば狩野派との関係がもう少し書かれていてほしかった。
    実際これぐらい付かず離れずのライバル関係だったのかもしれないけど。
    等伯本人の視点だけでなく、久蔵の視点も人間味が感じられてよかった。
    芸術としての表現と仕事としての表現、自分で納得できるかどうかと、お金を稼がなくてはいけない現実の狭間で葛藤するのは、アーティストの常なのですね。

    久蔵が才があって華があって恋愛要素も描かれていてなんだか派手な分、宗宅はずっと一家の中で地味に感じる存在だったけど、最後の妻への手紙でこの本でそこまで見られなかった宗宅の視点、とても味わい深かった。彼も彼でずっと苦しんでいたんだなあ。一気に好きになりました。

  • 解説を読んで、なるほど と唸ったのは 初めて。「末期の眼」の発見が テーマだったのか。

    信長、秀吉の天下取りの乱世の時代、いつ死ぬか不安な日々を生きた等伯の「末期の眼」

    日経が 出版しただけあって、長谷川等伯に 業界トップとの競争戦略、まだ誰もやったことないことへの挑戦、組織運営など 経営者マインドを見出すことも 出来ます

  •  時は戦国時代。信長が勢力を拡張する頃、狩野率いる狩野派がほぼ独占していた絵画の世界に、長谷川等伯が食い込みをはかろうとする。等伯は絵の注文をうけるために奔走するが、狩野永徳の妨害をうけ、絵の注文をとることすらままならない。
    或る日、等伯は客から「この世あらざる絵」を描くよう注文をうける。ただ単に、前例を踏襲してきたこれまでの仕事と異なるこの注文に、等伯はあたまを悩ませる。この世あらざる絵とはどういうものなのか…。
     登場人物たちもそれぞれ闇と苦悩をかかえ、読みごたえのある作品です。
     私のお気に入りの人物は、文殊。
     彼は障害を負って生まれており、ことばが話せないんですね。それで、なまえが良くないと言われて、文殊菩薩から文殊の二文字をもらって名前にするのですが、ある時、誰かが話しかけたら、文殊が、「うん」と応える。ようやく文殊という名前が効いてきたと等伯は思うんですが、結局、作中で文殊が喋った言葉は、この「うん」だけですからね。その後、成長して太り、体が大きくなって、突然暴れ出したりして、手がつけられないときもある。救いようがない感じがしますよね。文殊という人物が、この小説の世界観を象徴しているようで、好きな登場人物です。
     もうひとりの息子である久蔵も、魅力がある。彼は、才能はあるが、スランプに陥り、放浪の旅に出てしまい、人妻に恋してしまう……彼の生き様が波乱に満ちています。
     リアルな登場人物を多数配し、最後まで読ませてくれます。ブクログでも、高評価でした。

    * * * * * * * * * * * * * * * * 
     
    にゃんくの本『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語』より
    (あらすじ)

     七歳になるリーベリの元に、或る日、継母のケイとその娘ミミがやって来ます。継母に虐められ、リーベリは学校にも通えず、幼い頃から働かされ、友達すらいなくなります。
     リーベリの心の拠り所は、亡くなったママ・ジュリアが遺してくれた魔法の教科書だけ。リーベリは毎日魔法の勉強をし、早く大人になり自由な生活を送れる日が来ることを夢見る毎日です。
     成長したリーベリの唯一の仲間はぬいぐるみやカラスだけです。
     或る日、そんなリーベリは、海岸にひとり男が倒れているのを見つけますが……。


    ↓ここから本を試し読みできます

    http://p.booklog.jp/users/nyanku

  • 戦国かつ、安土桃山の世のそれぞれもうひとつの戦…永徳と等伯、一門と一門、きりしたんと仏教徒と、、さらに天下人が茶人と絵師と官使を振り回す。等伯の脇を締めるキャストは個性豊か…朱をさす女性陣をはじめ、個々の深い情念は人間臭さが匂い立つ。散らばる力点は多角度なれど、軸はぶれずに命を削る絵師としての仕事の本質を描ききる良作。

  • 安部龍太郎の等伯と読み比べると、登場人物の描き方に違いがあり興味深い。特に久蔵の人物像がよく描かれており、主役の等伯より魅力的で、桜図の場面は引き込まれた。狩野派との対立や松林図の逸話はもっと掘りさげて欲しかった。いつか本物が見たい。

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

萩耿介
1962年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒。2008年『松林図屏風』で第2回日経小説大賞受賞。著書に『炎の帝』『イモータル』(中央公論新社刊)の他、『覚悟の眼』『極悪 五右衛門伝』などがある。

「2022年 『食われる国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩耿介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×