逆転の世界史: 覇権争奪の5000年

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176389

作品紹介・あらすじ

◆目からうろこの意外史
世界史を3000年の長さでとらえると、EUの先を行く経済圏の統合に成功し成長した中国を中心とする先進地域アジアを、劣悪な環境下にあった後進地域ヨーロッパが交易、産業革命で逆転し、さらに21世紀再びアジアがヘゲモニー奪還に挑むという逆転の歴史として描けます。人類の誕生、秦・漢の成立からアメリカの時代、一帯一路までの興亡の歴史をコンパクトに解説するかつてない世界史です。
◆本書の目次
第I部 人類が誕生して世界はどう変わったか
1.人類の誕生 2.文明の伝播 3.農耕生活が引き起こした問題 4.中国の興隆 5.唐から元へ さらに発展する中国
第II部 ヨーロッパ世界の形成
6古代地中海世界 7.中世ヨーロッパとイスラーム世界 8.ヨーロッパの貿易の変貌
9.大西洋経済形成とヨーロッパの台頭 10.情報の非対称性が少ない世界へ グーテンベルク革命の意味
11.オランダのヘゲモニーとヨーロッパ経済の発展
第III部 ヨーロッパの台頭からアジアの再興まで
12.アジアの海の一体化 13.イギリスの工業化からヨーロッパ大陸の工業化まで 14.縮まった世界とイギリスの役割
15.電信がイギリスのヘゲモニーをつくった 16.20世紀の世界とアメリカのヘゲモニー
17.戦後のアジア 再興から一帯一路まで

感想・レビュー・書評

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  • 人類の歴史をスリリングに解説、面白くなくては歴史学ではない。

  • 高校世界史の教科書を平易にした本"のはずだ"
    逆転の意味もよく分からなかった

  • 「はじめに」に記載のある通り、本書は、経済史をベースとして、経済的覇権(=ヘゲモニー)の変遷を軸に、世界の変貌を叙述した教養書である。

    一言でいうと、とても面白かった。
    経済、物流、ネットワーク、それらを構築した人々の動きに焦点を当てて叙述し、経済的な覇権を握ることがすなわち政治的な覇権に繋がっていたことが浮き彫りになっている。その点が目からうろこであった。

    中国はなぜ早期に経済発展を遂げ世界一の帝国であり続けたのに、近世になりヨーロッパに逆転されてしまった
    のか。
    グーテンベルクの活版印刷術や、大航海時代がもたらした歴史へのインパクトがどれほど大きかったか。
    また特に、産業革命以降、第一次世界大戦までのイギリスの覇権確立の流れについての叙述は、特に気づきの連続だった。
    高校世界史で習ったときは、なんで産業革命の頁で、いきなり「飛び杼」や紡績機の話が始まるのか分からなかったし、なぜ第二次産業革命がドイツで盛んになり重化学工業中心になったのかも、よく腑に落ちた。

    惜しむらくは著者の専門外の時代だからだろうか、古代~中世くらいまでの項と、現代史の項は幾分叙述が薄いところか。

    いずれにせよ、世界の覇権の歴史を、経済史という側面から眺めることで、より多面的に世界史を理解できる一助となる良書だと思う。

  • タイトルにやや偽りあり。正しくは「経済からみた世界史」。
    歴史の本には人物や政治を中心に語ったものが多いが、この本は経済の流れから、覇権の移り変わりを述べている。

    「なぜ、歴史はこうなったのか」を考えたとき、やはり人物や政治体制よりも、経済による要因が大きいと実感する。

    イギリスが産業革命により世界の工場になったが、貿易収支は赤字で、電信の手数料で大儲けしていた、というのはかなり衝撃であった。確かに、貿易黒字だけだったらその時はいいけど、その後も維持し続けることは難しい。将来に渡って稼げる手数料資本主義を構築したことがその後のイギリスの覇権につながったわけだ。
    日本も、バブルの時の儲けをきちんとそういった手数料資本主義の構築に使っていれば、今みたいな凋落は無かっただろう。

  • 経済学者が書いた世界史で、政治上のできごとに金融経済が絡めてある。
    カタカナの人物や事件の羅列が頭に入らず、世界史の教科書が苦手だった自分でも、
    身近な暮らしに近いこと(食生活や貨幣、物流)の流れを追っているので、理解しやすい。

    中国ふくめアジア圏を世界経済の最初の覇者と捉えた視点が面白く。
    現代の中国経済の隆盛はリヴァイヴァルであるが、大航海時代から産業革命の近代英国が成し遂げた経済の覇権と異なるのは、交易上の手数料であるという指摘が興味深かった。銀行の引落やカードの利用時のように、ものの価値に関わらず、経済活動に対する手数料の源はそこなのだろうか。

  • 一般的に世界史はヨーロッパを中心に語られるが、経済面の観点から世界史を語っている。
    経済的にはずっとアジアのほうが高かった、というのは意外、というかそんな観点からは見たことなかったな。ヨーロッパが有利になるのは、活版印刷技術により商品の価格表や商売の手引きを作成できるようになったこと、海上航路を支配したこと、によるもの。いまにも通じることだけど、情報を支配している国が中心になってるんだな。

  • 大学 209A/Ta78g
    法経開架 209A/Ta78g//K

  •  世界秩序について、現在を起点にしてではなく時間と空間を俯瞰して考えていく。そこにはそれぞれの時間と空間の繋がりが、ある時は重なり合い、ある時は別々のものとして現れてきた。それぞれの世界史ではなく、地球の世界史が続いてきた。
     本書は、リベラールアーツの学びとして、自分自身が向き合う様々な場面で活きる知識といえよう。
     それでは、世界秩序が収斂していく中で何が決め手となったのか。本書では、情報と物流を手元に集めて、自ら働きかけることではないかと問う。そうする中で、自動的に富が集まるようになるのがヘゲモニー国家という世界秩序の覇権を握る存在である。
     中国が「再興」するにおよび、これからどうなるのかを考えるところで本書は締めくくられている。中国はヘゲモニー国家になりえないと説く。かつてのイギリス、アメリカにはなれないのだと。どうだろうか、この点はもう少し多面的な評価が必要ではないだろうか。本書の頁数ではもう少し足りない。

  • 東2法経図・6F開架 209A/Ta78g//K

  • 歴史の楽しみ方は色々あります、どれが一番とかではなく、どれも面白いです。その1つが、歴史を通して眺めてみるものがあります。この本は、覇権争奪の歴史として5000年間を通して、覇権がどのように移ってきたのかが理解できるようになっています。

    私が中学高校で習ってきた世界史は、西洋史が中心で、いかに欧州が優れているのかを学んできたように思いますが、なぜ欧州が世界の国境線を引けるほど強力になったのか、今一歩理解できていませんでした。

    勢力を蓄えるためには、どんな場合も黎明期、成長期があります、その秘策は何であったのか、その点を知りたかった私にとっては、この本に書かれている内容は大変に参考になりました。

    それを知ることで複雑な思いをすることはありますが、これも人間の成長記録(=歴史)ということで自分が成長するときの参考にしたいなと感じました。

    以下は気になったポイントです。

    ・人類はこれまで三度、大きなグローバリゼーションを経験している、1)ホモ・エレクトスがアフリカからユーラシア大陸に拡散、2)ホモ・サピエンスがアフリカを出て、世界各地に広がった、3)大航海時代に欧州人が世界のあちこちに出かけて行った(p3)

    ・イギリスは、まず世界的物流ネットワークを支配したのちに、綿織物工業によって工業化、世界中に電信を敷設することで情報獲得時間を短縮、国際貿易がロンドンで電信により決済されることになった、これは欧州が工業を発展、商品販売をするほど、輸送料・貿易手数料が入ってくるシステムである(p6)

    ・排水システムが不充分な灌漑を行ってしまうと、土中の塩類を含んだ水が蒸発して地表付近に塩分を集積、作物が育たなくなり砂漠化が進む、これがメソポタミア(p31)

    ・アッシリア帝国により首都テーベは陥落、これにより全オリエントが統一、すなわち、メソポタミア文明とエジプト文明は融合した(p33)

    ・前6000-5000にはすでに長江流域に文明はあった、畑作中心の黄河文明と異なり、稲作文明であった、これが日本に伝わる(p37)

    ・移動する人がいないと文明の伝播はなく文明の交流はない、定住生活をする人と移動する人は相互依存関係にある(p47)

    ・平均寿命が短くなった理由として、1)狩猟採集民の食事に比べて単調な種類、カロリー少なく栄養状態悪い、2)限られた作物に依存していたので作物が育たないと飢饉、3)人々が密集するので寄生虫、伝染病が広がる(p52)

    ・始皇帝は中央集権制としたが、劉邦(高祖)は、直轄地には中央集権体制である「郡県制」を、それ以外にいは地方分権体制である封建制(=郡国制)と採用した(p62)

    ・チンギスハンが即位したときの支配領域は決して大きなものでなはかったが、モンゴル高原統一後のチンギスハンとその後継者は、中継貿易による利益に目を向けた(p77)

    ・ペルシア戦争とは、アケメネス朝ペルシアと、ギリシアポリスという2つの帝国主義的な勢力の争いであった(p88)

    ・古代ローマでは食料が不足していたので、それを供給したのはアフリカの属州(エジプト)であった、その輸送ネットワークはフェニキア人の流通網を使った(p94)

    ・ポエニ戦争とは、新興国古代ローマが、西地中海の覇権をカルタゴから奪い取った戦争と位置付けられる(p96)

    ・地中海世界の終焉は、古代ローマ帝国が滅んだ476年ではなく、ゲルマン王朝のメロヴィング朝と、カロリング朝の間(751年)に断絶があったとされる。カロリング朝において地中海はムスリムが支配していたので(p99)

    ・中世のイタリアでは会社は目的事業が終了すると解散し、永続化を前提とする会社ではなかった、中近世イタリアの経済システムは、そのまま近代的なシステムに発展することは無かった(p110)

    ・ヨーロッパ諸国(ポルトガル、オランダ、イギリス、デンマーク等)は、イタリアとは異なり、自国船を用いて自分たちの製品をアジアに輸出するようになった(p113)

    ・ポルトガルはイギリスとの貿易で赤字を出していたが、ブラジルから輸入される「金」で補填された、1580年には織物を販売して、それを奴隷と交換し始めた(p118)

    ・イスラム勢力が強く、サハラ縦断交易に参画できなかった欧州人は、イスラム勢力から金を購入せざるを得なかった、アフリカ産の金を入手するには直接海上ルートを使うしかなかった(p122)

    ・奴隷貿易は、1720-1850年が盛んで、ポルトガル船で輸送された奴隷数が最も多い、上陸地域としてはポルトガル(p126)

    ・イギリスは、砂糖のみならず、西インド諸島・北米南部・ブラジルから奴隷が栽培した綿花を本国へ輸入、綿織物に加工した、イギリス船で世界へ輸出した、このシステム構築はイギリスだけであり、これが世界最初の工業国家へとなった(p130)

    ・欧州は情報の非対称性の少ない社会を構築した、これは経済活動が活性化することを意味する、世界の商業システムを欧州に都合の良いものへと変化させることに成功した(p132)

    ・欧州は、軍事力というハードだけでなく、活版印刷術というソフトパワーによっても世界を支配した(p139)

    ・アントウェルペンは、ネーデルランドがスペインからの独立運動をしていたため、1585年にスペイン軍に包囲され陥落、そのため商人はアムステルダムへ移住した(p141)

    ・欧州最大の投資社会となったオランダの投資先として、イギリスが選ばれた、オランダ人はイングランド銀行が発行する国債を購入し、イギリスが覇権国家になるのに寄与した(p148)

    ・中国は、世界経済の活動が活発になることで中国に自動的にお金が入ってくるシステムを開発しようとしていない(p153、243)

    ・中国は18世紀、税金に必要な銀の輸送をスペインに委ねた、これは信じられないほどの物流システムの軽視であり、これが中国の致命的な問題点となる(p165)

    ・ドイツはイギリスと異なり植民地を持たなかったので、植民地から原材料を輸入、完成品である綿織物を輸出というシステムが構築できなかったので、重化学工業に投資して人工的に化学繊維を開発した(p176)

    ・電信は世界を根本的に変えた、その影響の大きさはインターネット登場よりもはるかに大きい、電信によって人間が動くよりも速く情報が移動するようになった(p198)

    ・アメリカがイギリスについでヘゲモニー国家になったのは、電信=蒸気船の発展の時代に、イギリスに次ぐ「情報国家」に発展していたら(p198)

    ・イギリスが金本位制を採用したのは1703年のポルトガルとのメシュエン条約の結果、ブラジルの金がイギリスに流入したから(p205)

    ・世界初のヘゲモニー国家・オランダは、30年戦争を終結させたウェストファリア条約(1648)で、スペインからの独立が認められた、ナポレオン戦争を終結されたウィーン条約(1815)により、イギリスがヘゲモニー国家となった。ブレトン・ウッズ体制によりアメリカが取って代わった(p215)

    ・AIIBは、2017年12月現在で、84か国が加盟して、ユーラシア大陸は本当に単一経済地域となり、大西洋経済に匹敵するレベル。(p219)

    2018年7月16日作成

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著者プロフィール

玉木俊明(たまき・としあき)
1964年生まれ。京都産業大学経済学部教授。著書に『近代ヨーロッパの誕生』『海洋帝国興隆史』(講談社選書メチエ)、『金融課の世界史』『ヨーロッパ覇権史』(ちくま新書)などが、訳書にパトリック・オブライエン『帝国主義と工業化 1414~1974』(共訳、ミネルヴァ書房)などがある。

「2022年 『世界をつくった貿易商人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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