RAGE(レイジ)怒り

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176945

作品紹介・あらすじ

「米朝で素晴らしい結果を達成することに疑いの余地はない。それができるのは、私とあなたの2人の指導者だけだ」――金正恩に宛てたトランプの手紙より
北朝鮮の金正恩委員長とトランプが交わした手紙25通を入手!
歴史的な米朝首脳会談の裏で、何が起こっていたのか?

『FEAR 恐怖の男』でトランプとその政権運営の実態を克明に報道したボブ・ウッドワードが、コロナ禍と戦後最大の経済危機に直面した大統領を徹底取材、7カ月間に17回におよぶインタビューを敢行。伝説のジャーナリストが「本能」で動いたトランプの4年間を総括する。

コロナウイルスが「国家安全保障上の脅威」であり、スペイン風邪に匹敵する感染拡大を引き起こすと知らされた際に、トランプは何を考えていたのか。パンデミック、戦後最大の経済危機、反人種差別運動の激化――危機の連続であった2020年にトランプが下した決断は、その前の3年間に下した決断と同様に、「トランプの本能と習慣と流儀」に根ざしたものであることも明らかにする。

関係者に対する数百時間におよぶインタビュー、関係者の覚え書きやメール、日記、カレンダー、秘密文書をもとに、大統領執務室で何が起こっていたかを克明に再現。「すべての扉の裏にダイナマイトが仕掛けられているようなもの」と、ときに大統領職に対する危機感をあらわにしつつ、現状否認と闘争心剥き出しの姿勢も見せるトランプの複雑な内面に迫る。本書は調査報道の名手が放つ、新たな傑作である。

感想・レビュー・書評

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  • 「私は人々の怒りを引き出す。怒りを引き出すんだ。つねにそうだった。それが長所なのか不都合なことなのかはわからないが、なんであろうと、私はそうする。」ドナルド・J・トランプ

    彼が放った言葉は、2017年から2021年までの間に世界中の人々が感じていた疑問――ドナルド・トランプとは何なのか――について端的に、そしてこの上なく明快に説明するものであった。

    彼の言動を見た人間は誰でも怒りを覚える。左派にとっては彼の支離滅裂なヘイトスピーチに憎しみを覚えるからであり、右派にとっては、自分達が心の中で感じている被差別的な感情――左派が平等とグローバリズムをうたっていながら、その実足元にいる同郷の人間を顧みないことに対する嫌悪感と劣等感――を、頭の片隅に思い起こさせるからである。

    トランプはそうした両岸の人間の間に効果的にくさびを打ち込み、4年間をかけて米国を分断した。イスラム人の入国拒否、グローバリズムからの逆行、パリ協定からの離脱、WHOからの脱退騒動、コロナ禍でのロックダウン、BLM運動、そして大統領選挙。多くの分野において、人々は2つの価値観のうちのどちらかに居場所を決めることを強いられた。一つの国に暮らす同じ人間であるのに、両岸にいる人々は友人として混じり合うことはない。まるでこの国には白と黒の2種類の人間しか認められないように、人々は自分の収まる場所を強制的に決められた。

    だが、これは果たしてトランプが作り出した分断なのだろうか?
    私はそうは思わない。オバマ政権下から、いや、それよりもはるか昔から、アメリカは「自分が望む世界を望む人々」と、「その逆を望む人々」で二分されていたのではないだろうか?
    そしてもしそれが真実であるならば、ジョー・バイデンはアメリカの治療薬足りうるのだろうか?彼もまた、トランプとは正反対の立場で、自分が望む世界を望むがままに実現しようとする人間である。アメリカ社会の間に生まれた裂傷は、単に肌のカラーチャートを細かくすれば解決する問題なのだろうか?

    2020年11月4日、多くの米国民が自らの運命を決めるため投票所に足を運んだ。結果は僅かにジョー・バイデンが勝利。あと4年の追加課税を免れたリベラルは、新たな指導者の誕生を心から歓迎した。
    投票用紙には二種類の言葉が書けたが、もしかしたら、意味するところは両方とも同じだったのかもしれない。
    「どちらに分かれる?」

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1280909

  • ボッブウッドワードが描くトランプ大統領の政権運営のドキュメンタリー。トランプ元大統領の個性が前面に出ているが、北朝鮮、ウクライナ、サウジアラビアといった現在、話題の国とのやりとりも興味深い。

  • 2022年11月14日読了

  • 時期的には「恐怖の男」とかぶる時期もあるが、本書はトランプ本人のインタビューを17回実施したり、金正恩との親書のやりとりの公開等取材対象の材料が広がった。
    テイラーソンの就任経緯や解任、マティスの就任経緯や辞任といった重要閣僚についてはより両方の立場から描かれている。
    北朝鮮との子供っぽい罵りから、親書によるおだてに乗ってまんまと手玉に取られるパフォーマンス大統領の愚劣な対応ぶりに唖然とする。
    また本作で最大のテーマはコロナウィルスとの長く深刻な対応のやりとりだ。
    医療専門家たちの助言に基ずく対策から経済再生にかじを切る中で感染拡大,死亡者の増加への判断に対するビジネスライクな割り切り方に国民性の違いを痛感する。
    攻撃的な行動は大好きで得意だが、防御的な政策は苦手で不得意な有様が如実に描かれトランプの本質の大きな1面がよくわかる。

  • とってもヨカッタ.

    これぞジャーナリズムなのかなという気がする.
    トランプの直面してる問題を0距離で伝えてて読み応えある.

    彼らが国際問題を、他の国をどう捉えてるか、トランプという極端な人物がいるからか、他のアメリカの中枢にいるであろう人たちのリアクションがむしろ面白い.

    こういうおじいちゃんいるもんな.
    私の所属する組織にもいます.

    マティスとクシュナーの印象は変わった.

  • 500ページを超える大著。

    著者は米国を代表するジャーナリスト、ボブ・ウッドワード。

    その肩書き通り、著者はニクソンからトランプまで約50年にわたり、米国の歴代大統領を取材してきた。

    それだけに本書もトランプ及びその側近たちとのやりとりなどがかなり詳細に描かれており、これは記録としては非常に有意義なものだと思う。

    ただ、内容が冗長で、どうも私の求めていることは書かれていないような気がしたため、100ページを過ぎた辺りで読むのを止めてしまった。

    100ページというと、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、コーツ国家情報長官(いずれの役職も当時のもの)がトランプの横暴ぶりに辟易しテイル様子が描かれている。

    この3人は国防や国際情勢などに関して実務経験や知識も豊富で、トランプよりもよっぽど米国の将来を考えていた。
    そして、自らの信念をトランプにぶつけたが、それ故、この3人はいずれも2年ほどでトランプにより、実質的に解任された。

    ただこのようなことは新聞報道でも知れたのであり、問題はなぜこのような人間を多くのアメリカ人が支持し、大統領にまで上り詰めさせたのか、そして更にあわや再選されそうになったのかということである。

    まさにその答えを本書に求めたが、どうも回答が出てこなそうだという予感がしたので、途中で読むのを止めたのだ。

    著者もトランプについて、「結論はたったひとつしかない。トランプはこの重責には不適格だ」と言っているが、そんなことは誰でも知っている。

    私が読んでいない100ページ以降にその答えが、もしでてくるのであれば、本書を再読したいと思うが、おそらくそれは幻想にすぎないであろう。

  • 著名ジャーナリストによる、トランプへのインタビューと各種調査・情報収集に基づき、トランプが大統領になってから2020年7月までの動きをまとめたもの。
    著者のトランプへの質問が鋭く、トランプの回答についての検証も丁寧に事実と照合。
    事象が小分けになっているので、ちょこちょことぶつ切りに読んでも面白い。つまり、どこを読んでも面白い。

    私は、トランプはいろいろダメだと思うが、
    (金儲けのためや、金を持っていれば、何をやってもいい、なんてことはありえない。社会共通の価値観、社会で決めたルールの遵守、個人の相互尊重、倫理観、道徳感、責任感、知性など、必要なこと大切なことは山ほどある)
    もちろんトランプが大統領の期間の業績というのもあると思う。
    ただ、その業績はトランプじゃなくてもできたものかもしれないし、トランプにしかできなかったものなのか、その仕分けは必要。
    (ちなみに、日本でも同じ。安倍菅100%なんでもダメという論調は能が無い。ちゃんとやった部分があればそれは評価すべき。それでも、政治倫理的なコアの考え方が賛同できないというのであれば、理由を明確にして批判すればいいし、落選させればいい。)

    それでもトランプがダメだと感じることは、
    そこに「それはやっちゃダメだろ」という事象、理由があるからで、
    トランプに関して受けるその一番は、「嘘はついちゃダメ」ってこと。
    頻度と内容がとにかくひどい。二枚舌も含めて。
    嘘や二枚舌をやられると、その人がからむことは、ほぼ間違いなくトラブルになる。
    私のような一般民だってたまに仕事や私事で運悪くそういう人に当たるとものすごく困るし疲れるのに、アメリカの大統領が嘘や二枚舌(しかも無戦略)、よく世界が4年間もちこたえたもんだと思う。それこそ奇跡。

    もう一つ、本書の中で繰り返し語られる、トランプのダメなところは、「煽ってはいけない分断を煽った」ということ。
    たしかにそう。そんなことは社会として許されるべきではなく、それこそ「何でもあり」になってしまい、少し大きな視点、将来視点を持てば、すぐに破綻し、社会全体としてのコストが増大することは火を見るよりも明らか。過去の歴史が証明している。
    社会全体を見ず、特定の団体の利益ばかりを優先しては、個別団体の自己主張ばかりが跋扈し、譲り合わず、当該社会全体が退化するだけ。

    最後に、トランプは、前述の「分断を煽る」ということを含めて、自分が「選挙に勝つこと」およびそれによって自分にもたらされる権力を第一に考えているということがダメ。
    ただ、この「選挙に勝つこと」というのは、全世界どこの議員にとっても必要なことのため、トランプに限らず、票を入れてくれる人の言うことを聞きたくなるのが議員のサガ。
    それでも、どんな議員も、当選して仕事をする予定の行政単位の社会全体が中長期的にも最大に幸福になるように政策を立案して実施することを壮大かつ緻密にビジョンとプランとして選挙民に語って、その政策の必要性を選挙民に納得させ、それをもって票を得て当選すべき、と思う。

  • 人びとの怒りを引き出せ

  • かなりの長編だが、ニュースで見聞きした事象と登場人物だったので、興味深く読み進められた。また、翻訳本にありがちなわかりにくい表現が少なくて、読みやすかった。

    過去の名誉や現職を捨てて、馬鹿なトランプをコントロールしつつアメリカのために尽くそうとしたティラーソンやマティス、コミーの辞任劇は本当に可哀想だったが、前例をぶち壊し、直感で判断するトランプ流も、北朝鮮との戦争を避けるのには機能した?かもしれないし、、、評価は難しいところ。。

    トランプはどうしようもない人間だが、周囲の専門家が高い倫理観を持って職務にあたる姿は、日本のダメ政治を見せられている人間としては、羨ましかった。。

    それにしても、わがままなトランプにこれだけイヤらしい質問をし、うまく聞き出し、本にできるボブは、本当にすごい!

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著者プロフィール

米国を代表するジャーナリスト。1943年生まれ、イェール大学卒。50年間にわたりワシントン・ポスト紙の記者、編集者を務め、ニクソンからバイデンまで歴代大統領を取材・報道しつづけている。
ウッドワードは同紙の社会部若手記者時代に、同僚のカール・バーンスタイン記者とともにウォーターゲート事件をスクープし、ニクソン大統領退陣のきっかけを作ったことで知られる。このときの二人の活動から「調査報道」というスタイルが確立され、また同紙はピュリツァー賞を受賞した。ウッドワードはその後も記者活動を続け、2002年には9.11テロに関する報道でピュリツァー賞を再度受賞。
『大統領の陰謀』『ブッシュの戦争』『FEAR 恐怖の男』『RAGE 怒り』など、共著を含めた20冊の著作すべてがノンフィクション書籍のベストセラーリスト入りを果たしている。そのうち14冊は全米№1ベストセラーとなった。現在はワシントン・ポスト紙アソシエイト・エディターの責にある。

「2021年 『PERIL(ペリル)危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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