- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532260583
作品紹介・あらすじ
「東京タワーはなぜ紅白?」「ロミオとジュリエットと日本の空港の不思議な関係」「羽田を国際化するための課題って?」…。航空管制の実務に携わった著者が、航空機の運航の実態やルールをわかりやすく解説し、これからの「日本の空の戦略」を問う。
感想・レビュー・書評
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このタイトルに即した内容になっているのは、
第一章「航空機はこうして飛んでいる」と、
第二章「発着容量はこうして決まっている」
の二章。
著者が国土交通省の人で航空管制実務を経験
したというだけあって、この二章に出てくるネタ
はマメ知識・雑学としてとても面白い。
「ロミオ&ジュリエットのアカデミー賞、おめでとう」
あたりは二級の雑学だけれど、滑走路に書かれた
文字の意味や、航空機の“車間距離”についての
くだりは、知識としては正統的。
また、二章の最後に書かれている、航空管制官
が業務上過失致傷として訴追された2000年1月
の事故に関する筆者の指摘は興味深い。
”誰かを処罰して責任を取らせるという結論ありき
の論理にしか受け取れ”ないというこの指摘は、
説得力十分。
でも、こうした内容はあくまでこの本の序章で、
筆者が書きたかったのは、今まさに話題になって
いる羽田空港の国際化に関すること。
そのものすばりの第四章「羽田は国際化できる
のか」と、第五章「日本の空の戦略」がその中心。
決して一人よがりにならずに分かりやすく書いて
あるので、羽田国際化議論を考えるには、最適な
内容。
ただ、A~Dの四本の滑走路のことがたびたび本文
中に出てくる割には、羽田の地図を載せたページが
本書の中で限られているので、読みながら何度も
地図ページに戻らなければいけなかったのは少々
面倒だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まえがきから魅力的。
「セキュリティチェックを受け、指定された搭乗ゲートからボーディングブリッジを通って機内に入ると、次に席を立つのは到着空港のボーディングブリッジ、という多くの航空利用者にとって、航空機の運航はほぼ完全にブラックボックスの中にあり、ほとんど知られていません」
こういう素人目線に立ってくれる記述だからか、ひとつひとつの説明(表現)が、信じられないくらい分かり易い。
VOR/DMEのような保安施設だって、この人のペンにかかればなんだかわかった気がする。
様々なレベルで働く管制官たちの仕事の大変さ、奥深さも、手に取るように感得してしまえる。
本来とっても難解(そして敷居が高い)航空(保安)分野を、よく噛み砕いて説いてくれる、勉強になる一冊。 -
航空管制官がどんな仕事をしているか?簡単じゃないことは想像つくが、想像以上に高度な仕事だ。乗客の立場から逆に見れば、なぜ離発着時に待たされるかが良くわかる。次回からは多少の遅延はおおらかに許そう。
後半は、航空行政というか空の国家戦略の話題だが、その争点大半は羽田の将来像にかかっているようだ。 -
日中間での国内幹線相互カボタージュ…
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航空管制の具体的な内容が述べられている前半が良かった。後半の発着枠、航空行政の話はまるでお役所資料。後半は削って前半の内容をさらに掘り下げてほしかった。
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ちょっと期待してたのとは違ったかな。
航空業界の全体像と動向を知りたくて読んでみようかなと思ったんだけど、
主には風向きの重要さとか、滑走路が1本増えるとどうなるかとか、ダイヤやどのように決まるのかといったことが具体的に述べられており、航空業界人向けなのかなというかんじで、あまり興味の沸かない内容だった。
もちろんそれはわたしに興味がなかっただけで、とても丁寧に説明してくれてるからそういうことを知りたい人にとっては良書だと思う。
でも、最後のあたりはわりと興味のある内容だった。
羽田空港をハブ空港にするメリット、デメリットについて理解が深まった。
メリットとしてはやはり都心から近く、かつ日本一利用者の多い空港からすぐに海外に行けるということかな。それは個人利用者にとっても、企業にとっても魅力的なことだし。さらに視野を広げると、少子高齢社会の日本にとってアジアの国々との結びつきをもっと密にする必要があることは明らかなので、そのための重要なインフラとして羽田を見ると、やはりハブ空港にすることには一部の人の利益を超えた大きな意義があると思う。
でもデメリットとしては、羽田の発着容量を劇的に増やすことには限界があるため、増やそうと思ったら国内線の発着枠を国際線にまわすか、それとも騒音被害が規模・時間ともに拡大することを容認してもらう必要があるということが挙げられる。
あと、この本を読んで管制官の仕事って本当に責任が重く、高度な技量が要求されるものなんだなと驚かされた。ちょっとしたミスが大事故に繋がる、というかあんなに複雑なのにむしろ大事故がほとんど起こっていないということがすごいと思った。だから、飛行機の便数を増やそうとする試みは経済的社会的には望ましいことだと思うけど、安易に増やせば事故にもなりやすいんじゃないかと思った。管制官の仕事の精度を落とさないような仕組みづくりをしてほしいと思った。 -
さすが国土交通省の現役官僚が書いた作品である。航空のイメージは基本は「パイロット」。
多く注目される中で、管制の実情を分かりやすいのとマニアックな構成になっているのが、個人的にこの本を評価するところである。 -
航空行政には納得がいかないこと、不明なことが多い。本書を読むことで少しは疑問が減るかと思ったが、残念ながら私の関心とは少し離れたところにある本だった。何でJALが破綻にまで追い込まれたのか、この本を読んだ限りでは分からない。
この本では飛行機が飛ぶまでのテクニカルなプロセスについては非常に事細かに書かれているが、空港がどういう風に造られるのか、路線がどういう風に決められるのか、政治的・歴史的プロセスについてはほとんど書かれていない。そういう意味で、本書のタイトルは、「(建前上)航空機は誰か飛ばしている(ことになって)いるのか」が相応しい気がする。
航空機が実際に飛ぶ際の膨大なプロセス、決まりごとの多さは、やはりただごとではない。全く知らない世界の話なので、それなりに面白かった。特に第2章「発着容量はこうして決まっている」は興味深かった。例えば、「延長上で交差する二本の滑走路を同時使用する場合、経路が交差する地点において安全間隔を確保する必要があるため、一本で運用する場合と比べても、発着容量の大幅な増加は出来ない」とか。
結局、飛行機がバンバンバン飛べない原因は、安全上航空機間の距離を保たなければいけないことと、騒音対策のために離着陸時に都市上空を避け、無理矢理洋上(羽田だったら東京湾上)に航路を持っていってることが大きいようだ。例えば、羽田から北海道と九州、反対の方向に行く飛行機でも、騒音対策上、東京湾上の同じ航路を通らなければならない。同じ航路ということは、安全対策上、先発と後発の距離を開けるため時間差を多めにとらなければならなくなる。
最も興味があった第4章・第5章は期待外れ。
第4章は増便の為の細かな検証ばかりが延々と続く。単純に旅客数で言ったら羽田は既にヒースロー並なわけで、国際化ったそういうことなのかね?と思う。戦略性の問題だと思うのだけど。
4章を補完してくれるはずの第5章は、大局的な話をしているようで、今度は話が大雑把過ぎでリアリティーがない。現在の問題点の検証なくして漠然とした戦略並べてもね。やっぱり、現在の状況に陥ったのは、国際的な要因より先に、国内の政治・利権が原因でしょ、と思う。
あと、全般的に無駄な専門用語の使用や、図のまずさか気になった。ここら辺、編集者が良くないのだと思うのだけど。 -
現在の航空業界の課題と、今後の展望。
ちょっと専門知識が必要かもしれないけども、
意見の偏りがあまり見られず、参考になった。 -
飛行機の飛ばし方
まったく知らない世界で大変興味深い