お殿様の定年後

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532264550

作品紹介・あらすじ

   ご隠居様、それではお金がいくらあっても足りませぬ!
       著述に、文化振興に、寄席、歌舞伎……
      家督を譲ったお殿様たちの老後の愉しみは?

 江戸時代の大名には今で言う定年はなく、みずから出処進退を決められた。家督を譲り隠居するのは当人の意思次第だったわけだが、その後、どんな生活を送っていたのか。

 江戸時代は泰平の世。高齢化が非常に進んだ社会だった。そのうえ大名は充実した医療も受けられ、隠居後の長い人生を謳歌できる資産もあった。
 隠居すると、現役時代のように政治向きに関与することはほとんどなく、著述活動のほか、文化財の収集や保護などに力を入れるのが通例で、パトロンとして期待した文化人も集まってくる。そんな文化人のサロンをつくり文化事業を展開した。
 現役時代にはできなかった娯楽に興じるお殿様も多かった。隠居後は江戸で余生を送るのが定番で、上屋敷を跡継ぎに譲り、巨大庭園のある中屋敷や下屋敷が生活の拠点となる。屋敷外での行動も束縛がなくなり、歌舞伎小屋に連日通う事例もみられた。江戸は日本最大の娯楽街であり、お殿様たちが江戸での隠居生活に憧れる大きな理由にもなっていた。
 文化や娯楽に投じた費用が巨額にのぼり、藩の財政を傾かせる要因となった事例まである。例えば、徳川光圀が端緒を付けた『大日本史』編纂は水戸藩の財政に重くのしかかった。また、『大日本史』編纂を通じて創り上げられた水戸学は歴史を動かす原動力となったことは、はからずも幕末の歴史が証明している。政治への影響力も見逃せないのである。

 本書は、徳川(水戸)光圀、松平定信ら5人のお殿様の隠居後のアクティブな活動を読み解くことで、知られざる江戸時代の姿を浮かび上がらせる歴史ノンフィクションである。

感想・レビュー・書評

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  • 知られざるご隠居暮しに迫る。意外な日本史。

    あの徳川光圀、六義園の柳沢信鴻、関係の改革の松平定信、「甲子夜話」の松浦静山、薩摩藩の島津重豪。

    隠居になり自由の身で没頭する趣味の世界。特に松平定信の隠居後が面白い。老中時代に改革のため処罰した山東京伝を自らの文化活動に登用するなど、立場上やむを得ず行なった改革だったことが良く分かる。

    水戸学の元となった大日本史の編さん事業など藩の財政を圧迫するが後世に文化遺産を遺した点は隠居暮しさまさま。

    思わぬ視点から日本史を見るのもまた一興。

  • 隠居後のお殿様のお金で文化が繁栄してきた様子が少し分かります。

  • 東2法経図・6F開架:B1/9/455/K

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著者プロフィール

歴史家。1965年、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学(文学博士)。JR東日本「大人の休日倶楽部」など生涯学習講座の講師を務める。おもな著書に『江戸の間取り』『大名格差』『徳川幕府の資金繰り』『維新直後の日本』『大名廃業』(彩図社)、『15の街道からよむ日本史』(日本ビジネス文庫)、『東京・横浜 激動の幕末明治』(有隣新書)、『徳川時代の古都』(潮新書)などがある。

「2024年 『江戸時代はアンダーグラウンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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