農業ビッグバンの経済学: 真の食料安全保障のために

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532354084

作品紹介・あらすじ

なぜ、もっと米を作ってはいけないのか?農政失敗の本質に迫り、農地法廃止とゾーニング強化、直接支払いへの転換、農協・農水省の解体的改革など抜本改革を提言。

感想・レビュー・書評

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  • 元農水官僚でありながら、今は農政改革の旗振り役となっている著者が、内外の食料・農業事情を解説するとともに、戦後農政を規定していきた高米価政策、農地政策、農協制度などの諸制度を分析することにより、あるべき農政改革についいて提言している。緻密で丁寧な分析が行われているが、経済学的な分析は、数式も頻出し、結構難解ではあった。
    本書の主張は納得のいくものであり、今後の日本農政の羅針盤になりうるものである。減反制度、農地制度、農協制度などにより誤った生産者保護を行い続けてきた農政が日本農業衰退の原因というのはまさにその通りだと思う。食料自給率ではなく食料自給力が重要、価格支持から直接支払いへといった著者の提言も至当だと思われる。
    特に印象に残ったのは、小規模兼業農家は、実は農外所得や農地の転用で専業農家よりも豊かであり、また、手間暇をかけないため、専業農家よりも農薬や機械に依存した農業を行っているという実態があるのに、彼らは「弱者」とされ、その保護を図る「小農主義」が跋扈し、それが専業農家の規模拡大を妨げ、日本農業を衰退させているという指摘だ。民主党政権の戸別所得補償もまさにこの構図に当てはまる。日本農政は、早く「小農主義」から脱却すべきだ。

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著者プロフィール

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
1977 年東京大学法学部卒業。ミシガン大学行政学修士、同大学応用経済学修士。博士(農学)。農林水産省ガット室長、地域振興課長、農村振興局次長などを経て、2008年より独立行政法人経済産業研究所上席研究員、2010年よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
主な著書に、『国民と消費者重視の農政改革 ―― WTO・FTA時代を生き抜く農業戦略』(東洋経済新報社、2004年)、『食の安全と貿易 ―― WTO・SPS協定の法と経済分析』(編著、日本評論社、2008年)、『環境と貿易 ―― WTOと多国間環境協定の法と経済学』(日本評論社、2011年)、『日本農業は世界に勝てる』(日本経済新聞出版社、2015年)など。

「2016年 『経済政策論 日本と世界が直面する諸課題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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