純粋機械化経済 頭脳資本主義と日本の没落

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532358181

作品紹介・あらすじ

2030年頃にAI は、人間と同等になったり人間を超えたりはしないものの、人間の知的振る舞いをぎこちなく真似る程度には進歩している可能性があります。人間の知性に近いそのようなAI を手にしたものが、次世代の経済的覇権や政治的覇権を手にするでしょう。
それゆえ、AI の進歩の遅れている日本のような国は没落し、進んでいる中国のような国は飛躍的に経済力や軍事力を伸ばして、覇権国家となるでしょう。AI 時代に世界は大きく分岐するのです。
本書は、AI が持つ暴力的なまでの巨大な力の正体と、それが一体どんな便益や害悪をもたらすのかを明らかにします。
AI は爆発的な経済成長をもたらすとともに、多くの雇用を破壊し格差を拡大させるかもしれません。私達の生活を便利にし豊かにするとともに、私達を怠惰にして堕落させるかもしれません。犯罪のない安全な社会とともに、人の悪口や不道徳な行い、政府批判を一切許さないような偏狭な監視社会をもたらすかもしれません。
第1章は導入で、第2章以降を読み進めるのに必要な基本的な知識を提供する役割を担っています。
第2章では、AI がどのような技術でどこまで人間の知的振る舞いを真似ることができるのかについて検討します。
第3章では、AI がどのように人々の雇用を奪ったり、格差を拡大させるのかを論じます。
第4章では、さらにそれを経済理論に基づいて議論します。AI による爆発的な経済成長の始まりを、本書では「テイクオフ」(離陸)と言います。テイクオフの時期には、国によるばらつきが生じます。早めにテイクオフする国々と遅めにテイクオフする国々との間の経済成長に関する開きを「AI 時代の大分岐」と呼びます。
第5章と第6章で説明するように、過去に「新石器時代の大分岐」と「工業化時代の大分岐」という二つの同様の開きが生じました。これらの章では歴史的にどのような国や地域が繁栄したかということについても議論します。そのうえで第7章で、「AI 時代の大分岐」について論じます。
最後に第8章で、AI時代に人々が豊かになるには、国家が何をなさなければならないのかを検討します。

感想・レビュー・書評

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  • 中村伊知哉さんの『超ヒマ社会』に登場していた著者で、繋がり読みしました。デジタルのインパクトを歴史や哲学を引用しながら語り、マクロの仕組みはどうなった行くのかと考えたり、いやまずは自分自身の人生設計はどうなるのかと考えたり、思考を振り回されるのですが、それほどマインドセットが揺さぶられる本。

    ベーシックインカム論者として注目される著者ですが、これに限らず様々なスキームが変わることを展望したくなる、良書です。

  • 経済学者としての著書ではあるものの、AIを題材に文明論まで踏み込んだ意欲的な著書。AIそのものの理解を深めようとする読者よりもAIによって近未来がどの様な社会になるのか、過去の文明論との関連性の中で理解したい人向けの著作。
    個人的には、著者本人の思考の深さと奥行きを知るというよりも、巷で話題になっている著作を編集して論を展開する様な、音楽でいうザッピングの様な著作です。

  • AIの技術的な話に終始するかと思いきや、ハラリさんばりに人類史・特に経済史を中心に過去から現在、そして未来まで網羅した一冊。
    AIのところは結局、格差が広がるからBI導入!という結論かと…長くて集中力失ってしまったのも正直なところ…。いつか再読チャレンジします。

  • AIの登場により、人類は失業するらしい。
     労働者は1811年のラッダイト運動の時代から仕事が奪われるとみな心配していましたが、仕事は現在においても無くなってません。しかし、今度はAIにより仕事がなくなる。経営者とエリート労働者(AIに詳しい)のグループとそれ以外の代替え可能な人々に2極分化する。そして貧富の差が拡大して失業の時代が始まる。99%が貧しいグループになるため、モノは売れなくなる。不況は続く。そこでBI(ベーシック・インカム)が必要になる。と言うことらしい。
     昔は、イギリスでも児童労働で、一般工場法(1833年)でやっと、9歳未満労働禁止13歳未満上限48h/week、18歳未満の夜業禁止になった。さらに、若年労働者と女性労働者について10時間労働(1847年)成立、フランスでは1848年に1日12時間労働を勝ち取った。国際労働機関(ILO)により1919年に『1日8時間、週48時間」が労働基準として確立された。
     それから100年以上たっても8時間より少なくなっていない。私が思うには生産性が上がっているのだから、「6時間労働、週24時間」ぐらいになってもいいと思います。このままだすると、BI(ベーシック・インカム)とヘリコプターマネーが必要になると井上智洋氏は言うわけです。
     クエートでは、国民の90%が公務員で労働の2/3が外人労働者によって賄われると言われていますが、日本は石油が取れないので外人労働者なしで、BI(ベーシック・インカム)で暮らすようになるのかもと思いました。

  • AIを皮切りに文明論まで踏み込んだ一冊。
    この本を読めば、過去、現在・未来がわかる

  • うーん。

  • 日経の書評で高評価だったので、読んでみた。
    AIについて書いているのだが、納得できるような記述がなかった。全体的に文章が冗長で、著者の主張にどのように関連しているのかが不明な箇所が多い。雑誌や新聞のコラムやエッセイを切り抜いたスクラップ帳にコメントをつけただけのようだ。厚い本の割に主張がぼやけているような感じ。学術的ではないし説得力に乏しい。他の著作や理論、データも真新しいものはなく、基礎的なものばかりで、新たな発見もなかった。残念。
    「(画像認識)日本ではNECが群衆分析を得意としている」p13
    「クラウド会計ソフトの導入率は、アメリカで40%、イギリスで65%であるのに対し、日本は14%ほどである」p52

  • 凄い本だ。AIとBIの考えが変わった。これから世界はもっと面白くなるのか、でも70歳の自分はそれをどこまで見ていられるのか。

  • AIの発展により産業の大部分で限界費用が限りなく0に近くなる。ベーシックインカムなどの政策を考えるべきではないか、という内容。

    ポップカルチャーにも詳しく、流行りの本の引用も多く、読みやすい。しかし著者自身もよく分かってないのではないかと思えるような引用をつなぎ合わせているだけのような印象で、あまり得るところはないと思った。AIの何が脅威なのかを概観して次に読む本を探すためにはよいかも。

  • 井上智洋のこれまでの集大成ともいえる一冊。

    なのでAIのシンギュラリティやベーシックインカム論について余すところなく語っている。
    後半は哲学の話になりやや難しかったが、勉強になった。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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