エントロピーと秩序: 熱力学第二法則への招待

  • 日経サイエンス
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532520144

作品紹介・あらすじ

エントロピーは、単なる無秩序さの尺度ではない。エネルギーとの関係を説き明かし、従来のエントロピー観をくつがえした快著。

感想・レビュー・書評

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  • 門外漢にとって、熱力学第二法則は極めてとっつきにくい概念だ。一見して何を言っているのかわからないし、シンプルな第一法則(エネルギー保存)と並んでいるのが不思議に思える。これまで読んだ本で、この「気持ち悪さ」についてストレートに触れたものはなかった。しかしこの本は違う。第二法則がなぜ理解しにくいのかというその理由を、専門家でありながら一般読者の視点を視野に収めることで端的にわかりやすく表現してくれている。そしてさらに凄いのは、経験的に捉え難いというまさにその性質こそが、第二法則の存在意義の重要性、すなわち自然が持つある傾向を正確に描写していることの裏返しであることを、様々な視点から説明してくれているところだ。

    第二法則が一般に理解し難いのは当然だという著者。彼によれば、我々が物質の反応を目の当たりにするとき、「現象面」に着目して描写をするのが普通だが、第二法則は反応を原子や分子の振る舞いに着目した「機構面」から記述している。つまり、「自然な過程には、宇宙のエントロピーの増加が伴う」という第二法則は、我々の直接経験の一部でない物性を表現しており、さらにそこで自発的変化の指標として使用される「エントロピー」なる概念も、当然一般人の生活の場に直接立ち現れる数値ではない。「エントロピーという代物は、やはり手ほどきしてもらわないことには、識別不可能な類の物性である」。これが了解できれば、あとはミクロな視点に移行して、素直にカオスがもたらす秩序と崩壊に驚きながら読み進めればいいだけだ。

    「起こる確率が最も高い状態への落ち込み=カオス増大=エントロピー増大」。この図式が、熱力学のみならず化学反応や生物化学においても当てはまり、世界の向かう「自然な」方向を指し示しているというのが素直な驚きだった。ある場所で秩序が生み出されているとき、世界のどこかで同じだけのカオスが生じている。このことを念頭に置くだけでも、自らの生命や世界のあらゆる現象がこれまでと違った色彩を帯びて現前してくることだろう。

  • 《目次》
    ・1 自然は対称的ではない| NATURE'S DISSYMMETRY
    ・2 変化の道しるべ| THE SIGNPOST OF CHANGE
    ・3 カオスに落ちこむ| COLLASPE INTO CHAOS
    ・4 無秩序さの定量化| THE ENUMERATION OF CHAOS
    ・5 カオスの力| THE POWER OF CHAOS
    ・6 カオスを変化させる| TRANSFORMATIONS OF CHAOS
    ・7 パワーズ・オブ・温度| POWERS OF TEMPERATURE
    ・8 物をつくりだすカオス| CONSTRUCTIVE CHAOS
    ・9 カオスがつくりだす模様| PATTERNS OF CHAOS

  • なるほどそういうことだったのかと、今さら納得しても遅いのだが、昔、熱力学や統計力学を勉強していた頃にこの本を読んでいれば、少しは苦労が減ったのではなかろうかなどといろいろ思ってしまった。『虹の解体』の参考文献。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜

    No.50

  • 368夜

  • エントロピーとエネルギーの違いは?どうやったらエンジンは動くのだろう?この世界はどうなっていくの?とかいろいろ疑問を持ったらこの本を読むべし。
    この世界はランダムに向かって全てが分散してしまうのか?!いやだぁぁそんなのぉぉ!!

  • 世界の半分くらいが分かった気になれる。数学がダメな科学ファンにおすすめ。お子供衆には特におすすめ。熱力第二法則だけでかなり物事の流れが理解できるようになる。

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