写真ルポ イマドキの野生動物―人間なんて怖くない

著者 :
  • 農山漁村文化協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540121166

作品紹介・あらすじ

大胆不敵、傍若無人…いったいなぜ動物たちはこれほど大胆な行動をとるようになったのか。

感想・レビュー・書評

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  • 写真ルポ イマドキの野生動物―人間なんて怖くない 単行本 – 2012/3/10

    宮崎学(みやざき まなぶ) 1949年、長野県に生まれる。精密機械会社勤務を経て、1972年、独学でプロ写真家として独立。中央アルプスを拠点に動物写真を撮り続け、「けもの道」を中心とした哺乳類および猛禽類の撮影で、独自の分野を開拓。現在、「自然と人間」をテーマに社会的視点に立った「自然界の報道写真家」として精力的に活動している。動物写真で始めて土門拳賞を受賞、その他日本写真協会年度賞、講談社出版文化賞など、数々の賞を受賞。主な著書に、『鷲と鷹』『フクロウ』『死』(以上、平凡社)『アニマル黙示録』(講談社)『アニマルアイズ』全5巻、『森の写真動物記』全8巻(以上、偕成社)、『カラスのお宅拝見』『となりのツキノワグマ』(以上、新樹社)などがある。


    獣害対策として有効な策やヒントが数多く掲載
    2012年9月23日記述

    写真家の宮崎学さんの写真集兼ルポタージュ。
    本書を読み進めていくと私達の持つ追い詰められている野生動物という認識が間違っているという事に驚かされる。
    ジブリ映画にある平成狸合戦ぽんぽこのような動物がすみかを奪われる一方というのは野生動物達の適応能力を舐めているとしか言いようがないのだ。

    間接的な餌付け(農作物の廃棄や冬に路面が凍るのを防止する塩化カルシウムなど)を上手く活用し人間社会を巧みに利用し生きている動物たちを想像できるだろうか。

    都市部に住んでいるとどうしても無関心になりがちである。
    しかし人間を恐れることなく悠々と人里に野生動物が現れる時代であるという認識を持つべきだ。
    今の野生動物たちにとって人里の影響を大きく受ける今の自然環境が当たり前なのだ。

    本書では獣害対策として有効な策やヒントが数多く掲載されている。
    田舎にすまれている方、農業に従事されている方、こらから農業に参入することを考えている方、
    各市町村で獣害対策に取り組まれている方などに本書の指摘は貴重であると思う。

    (日本犬、柴犬などを放し飼いにすることが獣害対策で特に有効であるようだ。これは日本全国での野生動物の実態把握に比べ取り組みやすい対策で是非実行されたい。無力な結果になることの多い網や爆竹などの対策より効果も大きい。捕獲についても著者のハクビシンの捕獲アイデアなどが有効に思われる)

  • 写真集の様で、写真集でない?

    それは何か?

    写真ルポだ。

    宮崎学の活動を紹介するテレビ番組があり、
    それでこの人のことを知った。

    動物の死体からその進行状況、動物の排泄物も撮る。

    野生動物に対する貴重なフィールドワークだと思う。

    これからも頑張ってください。

  • 今、野生動物が人間社会の中で、周りでどのような生態でいるか、
    学者の目ではなく写真家の目で見た現実を見せてくれます。
    人間の生活が知らず知らずのうちに野生の動物に多大な影響を与えている実態がわかり、一人一人の行動を直していかないと知らずに野生動物を害獣としてしまう。
    共存していかなくてはと思う。

  • 2013.9記。

    日本の野生動物は自然を奪われてやむなく人里に出てきているわけではない。食べ物がより豊富で、しかも安全だから出没するのだ。都市の明かりを利用して捕食する水鳥、路面凍結防止のためにまかれた塩を摂取して繁殖するシカ、この写真ルポを見ているとやはり考えざるを得ない。ヒトと野生との境界線はどうあるべきか。自然との共生とは何を指すのか・・・

    古くは中世ヨーロッパにおいて、人間を突き殺したイノシシを死刑にしたり、大量発生したイナゴを破門したりといった「動物裁判」を通じて、人々はキリスト教秩序の中に自然界を位置づけようとした。ひとつの共生の試みといえなくもない。

    村上春樹の旅行記「辺境・近境」に、モンゴルの平原でオオカミと遭遇する話が出てくる。「モンゴル人は狼をみつけると、必ず殺す。ほとんど条件反射的に殺す。遊牧民である彼らにとって、狼というのは見かければその場で殺すしかない動物なのだ」(新潮文庫、P.221-2)。ジープで追い詰め、自動小銃でとどめを刺す。自然とともに生きる草原の民は、そのようにして境界線の秩序を守っている。

    そして宮沢賢治。彼のことも、エコロジーとか共生の思想で理解しようとする試みは多い。が、読んでいると、彼は「自然との共生は本質的には不可能」と考えていたのでは、とふと感じる時がある。それを「だったらこちらが譲るよ」という形にまで突き詰めようとしていたのではないかと・・・。以下に引用する「なめとこ山の熊」の一場面において、熊と猟師の小十郎は「ともに生きる」のではなく、「譲り合って」いる。まさにそれゆえに我々の心をこれほどまでに打つのではないだろうか?

    ------------------
    ・・・すると樹の上の熊はしばらくの間おりて小十郎に飛びかかろうかそのまま射(う)たれてやろうか思案しているらしかったがいきなり両手を樹からはなしてどたりと落ちて来たのだ。小十郎は油断なく銃を構えて打つばかりにして近寄って行ったら熊は両手をあげて叫んだ。
    「おまえは何がほしくておれを殺すんだ」
    「ああ、おれはお前の毛皮と、肝(きも)のほかにはなんにもいらない。それも町へ持って行ってひどく高く売れるというのではないしほんとうに気の毒だけれどもやっぱり仕方ない。けれどもお前に今ごろそんなことを言われるともうおれなどは何か栗かしだのみでも食っていてそれで死ぬならおれも死んでもいいような気がするよ」
    「もう二年ばかり待ってくれ、おれも死ぬのはもうかまわないようなもんだけれども少しし残した仕事もあるしただ二年だけ待ってくれ。二年目にはおれもおまえの家の前でちゃんと死んでいてやるから。毛皮も胃袋もやってしまうから」・・・
    ・・・熊はもう小十郎がいきなりうしろから鉄砲を射ったり決してしないことがよくわかってるというふうでうしろも見ないでゆっくりゆっくり歩いて行った。

    ・・・それからちょうど二年目だったがある朝小十郎があんまり風が烈しくて木もかきねも倒れたろうと思って外へ出たらひのきのかきねはいつものようにかわりなくその下のところに始終見たことのある赤黒いものが横になっているのでした。ちょうど二年目だしあの熊がやって来るかと少し心配するようにしていたときでしたから小十郎はどきっとしてしまいました。そばに寄って見ましたらちゃんとあのこの前の熊が口からいっぱいに血を吐いて倒れていた。小十郎は思わず拝むようにした。」(「注文の多い料理店」、新潮文庫より)

  • 私たちイマドキの人間が、人に慣れ大胆なイマドキの野生動物たちをつくりだしたのでしょうか・・・。野生動物たちにとって食料は最大の関心事、自然環境の変化(人間の都合によって)で動物たちはどんどん人間社会に接近してきたのですね。都会の人間の自然や野生動物への関心の低さ、地方の過疎化による山野の管理不足も影響してると。サル、イノシシ、シカ、ツキノワグマ、ハクビシン、アライグマ・・・。また、農産物廃棄場、墓地のお供え、生ごみなど人間が無意識に行ってる「餌付け」もこれらに拍車をかけていることでしょう。どう向き合えばいいのか、対策は、一部共存の道はあるのか・・・、自然を壊したり、汚したりしてきた人間の負の「ツケ」は大きいですね。抜本的な対策は、残念ながら私にはみえてこないです。

  • 野生動物が人里に進出してきている話。人里や都会での手軽な「自然」観察のネタとして購入。実際は、40年にわたるヒトと野生動物の関係の記録だった。とはいえ、観察のポイントや写真といった点、自然保護や動物とのかかわりなどの点、長年観察のを続けた筆者ならではのものが満載なことはまちがいない。ネイチャー系の出版社ではなく農業系の出版社であることも注目。

  • ◆新世代動物、勢力拡大中◆
    イマドキの野生動物は、本当に人をナメている。堂々と人里に出てくるし、人を見ても怖がらなくなった。いったいなぜ、動物たちはこれほど大胆な行動をとるようになったのか。写真家宮崎学は中央アルプスをおもなフィールドにしながら、もう半世紀近く、日本の人と自然をテーマに写真を撮り続けてきた。人間社会に迫り来る動物たちの驚くべき生態に肉迫した、長野県出身・宮崎学の写真ルポ集。

  • 数年前、夜間伊木山に登ったら、愛知県側の灯りで、月明りもないのに、山道をあるくことができたのにビックリしたことがあります。野生動物は、いまや人間とのかかわりなしには語ることができないことを、この本は私に語ってくれました。

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著者プロフィール

写真家。1949年長野県生まれ。精密機械会社勤務を経て、1972年、プロ写真家として独立。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会賞年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。2013年IZU PHOTO MUSEUMにて「宮崎学 自然の鉛筆」展を開催。2016年パリ・カルティエ現代美術財団に招かれ、グループ展に参加。著書に『アニマルアイズ・動物の目で環境を見る』(全5巻)『カラスのお宅拝見!』『となりのツキノワグマ』『イマドキの野生動物』他多数。

「2021年 『【新装版】森の探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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