- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784540201394
作品紹介・あらすじ
河川工学の泰斗が、日本人の伝統的な自然観に迫りつつ、今日頻発する水害の実態と今後の治水のあり方について論じ、ローカルな自然に根ざした自然観の再生と川との共生を展望する。大熊河川工学集大成の書。
感想・レビュー・書評
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2023年1-2月期展示本です。
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川を見る感覚を養いたい
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開発目標13:気候変動に具体的な対策を
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一章の、自然観や近代論は、内山節さんのこととかも出てきて懐かしい感じ(学生のときによく考えたことなので)だけど、
こういうのがわからないと河川のことを論じることもできないのだという風に、市民や学生に思われちゃったらイヤだなとは思った。
勿論、本来大事なことだし、文中にもでてくるJR東日本の不正取水や維持流量や小出博の河川観(おすすめ書籍※ もいいな)とか理解するには、却ってわかりやすいのかもしれないけどさ。
近年の「水害調査」について書かれた4章は出色。
そもそもこういう水害調査のエッセンスが、専門外のかたにも読めるような形で出版されること自体が少ない。
新潟水害の高齢者被災を教訓に、破堤を「一気に」引き起こさないように検討すべきということ。
紀伊半島豪雨で被災した「輪中堤」は、そもそも住まうような場所ではないような危険な地域に強引に高く築かれたものだったということ。
鬼怒川での自然堤防の保全の認識の甘さ。
小田川での井原鉄道等の沿川開発(建築に全く浸水対策がなかった)、支川にバック堤のないような地域だったこと。
千曲川での河積確保が「管理」できていなかったこと。
・・・どれも説得力があるし、今の課題が詰まっているなと感じる。
後半では、ダムの問題点として、現実的な(基本高水に見合うような)適地の不足、堆砂、「緊急放流」のことなどを指摘。そして、「洪水調節用ダムはすべて撤去すべき」とする等、ラディカルな主張が遠慮なくでてくる。
ダムによる治水が十分望めないとすると、、ということで、河道からの計画的な越流(+洗掘させないための水防活動、そして下流の霞からの河道への還元)という、過去からの技術に脚光を当てている。
更に、「耐越水堤防」として地中連続壁堤防やアーマーレビーといった技術にも焦点を当てているのも印象的だし、さほど異論は感じない(但し、「決壊しにくい堤防」は「決壊の可能性がない」のとは違うことに、留意すべきとは思うけど)。
ただ、最終的な結論が「上下流の住民による徹底した議論による、お互いの痛みの共有・連帯による解決」という、学生のレポートのようなまとめになっていたのは残念。好事例として示している淀川の流域委員会だって、(筆者も書いているが)バラ色ではない訳だし、筆者の率いてきた「新潟水辺の会」だって、(それはそれで感銘を受けるすばらしい活動だが)世代交代や継承・拡大に失敗したようであるし。
それから、利根川の話のところで出てきた「三角波形」の議論には疑問。精度はそこまで悪くないはず、と大熊はいうが、本当にそんなにピークが寝ているものだろうか、と思わざるを得ない。
利根川水系での、足尾銅山前後の火山噴火による河積の減少のことや、信濃川をはじめとした日本海側の河川や平地の与条件として日本海の干満差が小さいこと(による農地の淀みっぷり)等の話は、地理学的にも面白かったし、大熊の集大成たる力作には違いないのだが。
※)大熊が影響を受けたという小出の著書を抜粋
①日本の水害~天災か人災か(編著)東洋経済新報社1954
②日本の地辷り~その予知と対策 東洋経済新報社1955
③日本の河川~自然史と社会史 東大出版1970
④日本の河川研究~地域性と個別性 東大出版1972
⑤日本の国土(上・下)~自然と開発 東大出版1973
⑥利根川と淀川~東日本・西日本の歴史的展開 中公新書1975
⑦長江~自然と総合開発 築地書館1987 →読んでみたい! -
図書館本、面白かった。西洋的と東洋的との対比。制御か共生か。また、真理探究と関係探究との分類もなるほど。いろいろと勉強になる一冊。