新しい共同体の思想とは (内山節と語る未来社会のデザイン 3)

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  • 農山漁村文化協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540201783

作品紹介・あらすじ

近代ヨーロッパの文明思想は結局、国境やおカネといった虚構に支配された今日の世界をつくり出した。実体のある、結び合って暮らす共同体的世界をとりもどすにはどうすればよいのか。その手がかりは、日本の民衆が培ってきた土着・伝統の思想・文化にあった。自然信仰や仏教思想の展開をわかりやすくひもときながら、転換の時代をともに生きるための思想を構想する。自然と人間の関係、労働や共同体をめぐる独自の思想を構築してきた哲学者・内山節が、2019年2月に開催された「東北農家の二月セミナー」にて語った新しい思想論。

感想・レビュー・書評

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  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/545340

  • 「共同体」という日本語は、明治時代になってから生まれた言葉だ。

    この共同体なるものの基盤として、華厳経は「人間関係」を挙げている。大乗仏教ではそもそも自己も、真理も「空」だとされている。つまり、私たちが見ている現象には全て実体がなく、関係に本質を見出しているためである。関係自体も実体があるわけではないので、「空」とされる(p.77)。

    そこで華厳経では、「一即一切」という考えを大事にしている。宇宙の全真理はホコリくらいの世界にあり、一と全ては同じ、という考えだ。つまり、真理はひとつの小さな世界にあり、それはすべてが関係で結びあっているためだからだ(p.79)。また、華厳経は利他も重要視している。

    自分の考えとかなり親和性があるな。。。

  • 現在の日本では、過去から伝わってきたものを守ろうとすると、むしろ変革を志さねばならないという逆説。(たとえば保守とされてきた自民党が新自由主義を導入して日本をここまで変わり果てた姿にしたのだから)

    伝統回帰ということの本当の意味を、山村での暮らし、自然と農業に親しむ生活実感から、身体レベルで腑に落ちるように諄々と説く著者の語り口の柔らかさとしなやかさ、そして強靭さ。

    内山節を読むことは、現代社会の歪みによって疲弊した心に一筋の希望を与えてくれる。

  • 西洋と東洋思想の比較をしながら、共同体に対する姿勢を論じる。

    西洋では実体を軸にして、東洋(主として仏教)では、関係を軸としているよう。
    例えば、死者がいるかいないかであれば、西洋では死者の魂というのが現実にあるかないかという論になるが、東洋では関係に主を置くので、いると思えば、いるというスタンスをとる。関係があればそれはあるということだと。
    また関係が大事なので、「一は全で、全は一」だとする、それは正確には大乗仏教という仏教の一つの言説のようだが、その一個体はある意味あらゆるものに関係しているので、その個体は全をすら表すという考え。なので、利他的につながるのだと。自分という個体が悟るには、つながりのある他を悟らせる必要がある(他が悟ると自分も悟ってるということ)ので。ハガレンの最後は恋人に献身的になっていたのだと思うけど、まさにそういう意味だったんだ、仏教的だったんだ。
    関係がすべてであれば、その状態が正しい(そういう人もおっていいとか、多様性だとか言論の自由とかになる)が、それでもいろんなところに問題はある。
    関係がすべてでそのままにしておきたいけど、そんなこと言ってられない問題が目の前にあるから仕方なく取り組むみたいなスタンスが仏教的な対決理論だとしている。この辺の感覚はすごくわかるな。ほっておいておけばいいというのとどうにかせなあかんがブレンドされている。
    そのブレンドの中でどういうスタンスをとるのか。
    それは、役割を自認することだと。問題があるとすれば、それはある種自分のせいだともいえる。一は全なので。
    じゃあそれが起こらないように少し心がけるとか。結局そういうことなんだろうな。その想像力の範囲が共同体だと。
    要は Man in the mirror
    共同体に対する想像を広げて、自分がやれることやっていく。それだけなんだろうなあ。

  • 東2法経図・6F開架:304A/U25u/3/K

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著者プロフィール

内山 節:1950年、東京生まれ。哲学者。1970年代から東京と群馬県上野村を往復して暮らす。NPO法人・森づくりフォーラム代表理事。『かがり火』編集長。東北農家の会、九州農家の会などで講師を務める。立教大学大学院教授、東京大学講師などを歴任。

「2021年 『BIOCITY ビオシティ 88号 ガイアの危機と生命圏(BIO)デザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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