ベスト&ブライテスト (上巻) (Nigensha Simultaneous World Issues)
- 二玄社 (2009年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784544053067
作品紹介・あらすじ
アメリカの「最良にして最も聡明な」人びとが、なぜ、ベトナム戦争という非道かつ愚かな泥沼へとアメリカを引きずりこんでいったかを、その権力深奥部の人間ドラマに重ね合わせて見事に描き出し、ハルバースタムの名を伝説的にした記念碑的な名著。権力の上層に結集するエリートたちが、その傲慢と偽善のゆえに愚行を重ねてゆくさまを、そして組織の政策決定・権力行使にたえず潜在する危険性を、鮮烈にえぐり出す。ルーズヴェルトからトルーマン、マッカーシズム、栄光と興奮に憑かれたケネディの時代、自ら盲目になったジョンソンのアメリカ、そしてウォーターゲートへの道-苦悩と挫折のアメリカ現代史を、卓越した明晰さと知性でビビッドに描いた、これぞニュー・ジャーナリズムの傑作。
感想・レビュー・書評
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アメリカをベトナム戦争の泥沼に引きずり込んだ政策決定者たち。彼らを描いた傑作ノンフィクション。
名著と誉れ高いが、読んで納得。
もっと早く読めばよかったと後悔するほどいい作品だった。お薦め。
「最良にして最も聡明な人たち - ベスト&ブライテスト - 」とは、ケネディ大統領が集めジョンソンが引き継いだ、合理的で実行力があるエリート達のこと。そんな彼らがなぜベトナム戦争という愚行に突き進んだのか?
バルバースタムは彼らエリートに潜む傲慢、驕り、うぬぼれを浮き彫りにして政策決定を歪めていく過程を丹念に描く。そしてなにより政権参加者の人物描写がいい。生い立ち、価値観、考え、癖、行動スタイルなどをエピソードを交えて緻密に描写していく。これが読ませる。本書の醍醐味である。
スタイルと知性を重視したジョン・F・ケネディ。
状況に応じて考えを変えることができる柔軟性をもった弟ロバート・ケネディ。
元ハーバード大学長で切れ者の補佐官マクジョージ・バンディ。
数学と統計の才能に恵まれた元フォード社社長の国防長官マクナマラ。
八方美人でひたすら勤勉な元ローズ奨学生の国務長官ディーン・ラスク。
政治家、軍人双方から尊敬されたインテリ軍人テーラー将軍。
ケネディ亡き後このドリームチームを引き継いだのが南部出身がコンプレックスの上院議会のボス、密室政治家リンドン・ジョンソン。
上流家庭に生まれる。学歴がある。合理的で頭の回転が速い。仕事もできる。東部の上流層に人脈がある。当時のアメリカ社会のトップにいる人びと。
完璧だ。その名の通り「最良にして最も聡明な人たち」だ。
何事も成せばなると思っている彼らにとってベトナムで戦うことは簡単だった。‘負けるわけないじゃないか、あんなアジアの小国に’と。ベトナム戦争は8ヶ月で終わるはずだった。しかしケネディ政権からの関わりから数えて15年。ジョンソン政権の本格的な戦争(北爆)から数えて11年続く。
ベトナム介入反対派を締め出し戦況に関する悲観的な情報は握りつぶす。自己に不利な情報は見なかったことにする。世界を自分の意のままにコントロールできるというその傲慢さ。その驕り。そのうぬぼれ。であるがゆえにアメリカをベトナム戦争に引きずり込み、米国社会に深い傷を残した。ハルバースタムの筆致は容赦なく政権内部の人物たちに切り込んでいく。
D・ハルバースタムはジャーナリストというより(もちろん優れたジャーナリストだけれども)、優れたストーリーテラーだと思う。事実を淡々と並べるのでなく、物語のなかで人物や事象を描く。
3年前に交通事故で死んでしまった。ホントに惜しいし残念だ。イラク戦争の取材を死ぬ間際まで精力的にしていたというし。レポート読みたかったな。
実際、ケネディーグループの人たちはホントに頭がよかったのか否か?という真偽は脇に置くとして、この本は重要なことを示唆しているように思う。
政治家が無能では駄目だ。それは全くその通り。
でも、ベスト&ブライテストば必ずベストな意思決定を(する場合もあるが)してベストな結果を出してくれるということではない。
この頭を抱えたくなるような事例にどう向き合えばいいんだろう。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ベスト&ブライテスト」上巻読んだ。http://tinyurl.com/3bwatme 2週間びっちりかかった。まだ中、下と続く。な長い…読み終わるのはいつになることやら。ケネディ政権が優秀聡明なスタッフ陣を抱えつつもベトナムに介入し泥沼戦争化させていく。タイトルは皮肉(つづく
内情はもちろんのこと人物描写も骨太でおもしろい。前に読んだランド研究所本より格段いい。ベトナム戦争=マクナマラしか知らなかったけど、出てくる出てくる綺羅星逸材、そしてそのほぼ全員が、情報収集と状況分析を正しく行わずに意図せず米国を奈落の底へ導いて行く。いやー興味深い。
ベトコンが情報操作も含め高度な政治戦を展開しているという事実を見誤り、武力戦と捉え数量投入で圧制しようとしたり。中枢と現地の両方にあった「嘘」の主原因が虚栄や疑心や権力欲や保身だったり。警告や悪い事実を受容せず、司令部の意に沿うように情報をねじ曲げ辻褄合わせに終始したり。(おわり
※んーアメリカの世界観の土台は恐怖なんだな(マイケルムーアみたいだけど)。常に敵を設定してないと精神平穏を保てないみたいだ。共産主義、核、宗教、文化。対峙する何かがなければ自分の立ち位置を確認できないなんて幼稚だ。学校の窓割ってバイク盗んじゃダメ。塀に卵ぶつけてもダメ(笑 -
我々は現在、構造主義的発想を常識と考える、特殊歴史的な奇習に囚われているともいえる。
デビッド•ハルバースタムがケネディ政権の綺羅星のような知的エリートがベトナム戦争という泥沼にハマり込んだ経緯を克明に辿り、「何故なのか」という問いに対して到達した結論は、アメリカ知的エリートの「傲慢さ」だった。
アメリカの政治決定を下す立場にいる者の中には、ベトナムの場所さえあやふやな者もいた、という。
しかし、あの時代、その発想が常識であり、今から見れば、特殊アメリカ的な奇習であったのだ。
それを構造主義的方法論を使わず暴いたハルバースタムはすごい。
というメモ書きは、内田樹「寝ながら学べる構造主義」の受け売りに過ぎない。 -
アメリカは何故・どのようにしてベトナム戦争の泥沼へと意思決定していったか。
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人物描写が秀逸。単にその人物の主張や性格をなぞるだけでなく、他社とのかかわり、政治的力学の観点からこうした複雑な人間関係が描かれており、興味深い。登場人物が多岐にわたるので、人物チャート的な解説がなりがついているとより理解しやすかったかもしれない。上巻は主にケネディ政権がどのようにベトナム戦争に関わっていったかについてであるが、多様な人物が詳述されており、読んでいて引き込まれる。
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ベスト&ブライテスト上2021/05/09
1.「米国のよき時代の終焉」戦後世界を構想し実現
①欧州 マーシャルプラン 復興と反ソ連
②日本 民主主義国家
2.ルーズベルトの偉大さ 19450412逝去→世界の運命
弱者を守る 反植民地主義vs英国・仏国「反共産主義」脅し 政治力学のリアリズム 現実主義・利害への配慮
3.§5仏国vsベトナム民族主義=反植民地主義
米国が仏国を肩代わり 矛盾
民族主義か共産主義か →これが「米国の失敗の本質」
ベトナム・アジアの軽視 驕りがあった
4.ケネディの世界観
「反共産主義」負けられない意識が柔軟性を奪った
「その時代の観念」の恐ろしさ
人類はそれほど賢明ではない cf ケインズ
キューバ危機→ベトナム戦争へ深入り
頭脳と力の過信 面子プライド
アジア・ベトナムの軽視 -
上巻はベトナム戦争に本格的に踏み込んでいくまでであるが、エリートが自分の考えが正であると、現実(現場)を見ずに決定していく様が描かれている。
現代の会社組織や世界の機関で現在でも起こっている事象である。
アメリカの民主党や野党の上層部がそうであり、現代を考える上でも参考になる。 -
アメリカの最も優秀な知性(Best & Brightest)はなぜ道を誤ったのか。第二次世界大戦後、1950~1960年代のアメリカ黄金期を経て、ベトナム戦争の泥沼に陥っていく過程を描く。
ケネディ始め当時アメリカを動かしていた超エリートたちのポジショントークや顕示欲による為政ミスはなかなか興味深い。但しアメリカの政治家に馴染みがないので人物説明や牽引が欲しかったのと、内容と言い回しが回りくどく読み解くのに一苦労する。
ピューリッツァー賞を受賞した歴史的名著とのことだが、日本人が日本語版を読むと★3つといったところだ。 -
【要約】
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【ノート】
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