刃の下

著者 : アンドレ・ピエール・ドマンディアルグ 露崎俊和

• 白水社 (1996年5月1日発売)

作品紹介・あらすじ

愛妻への不可解な殺意に憑かれ、深夜の町を彷徨する男が絡みとられていく倒錯的なエロスの誘惑。三島由紀夫に捧げられた『一九三三年』ほか全六篇の短篇には、透明な鏡に不意に黒々とした欲望の暗渠が映じるかのような、マンディアルグ特有の異様な、しかし詩的で豊穣なイメージ群が横溢する。

感想・レビュー・書評

[デュラム・セモリナ子さんの感想 · 2010年4月29日]

タイトルにも表れてるように、収められた短編は刃にかかって誰かが死ぬという結末が多いです。『オートバイ』ほどの完成度は期待できないものの、著者のイタリアへのある種官能的な憧憬が伺えます

[輝扇碧さんの感想 · 2008年6月13日]

「薔薇の葬儀」から入ったせいか、人を殺したり人が殺されたりするのが多いなあという印象を受けました。
「1933年」は三島に、「ミランダ」はホアン・ミロにささげられた作品ですが、「薔薇の〜」にも彼らへの作品があることを考えると、交友があったのかな？「催眠術師」の催眠術師の鮮やかさが印象的でした。全編を通してどこか不安な暗さを滲ませたエロスに満ちていて、書評通りですが豊穣な世界を堪能することができます。
筆者の人物像を透けさせることのないファンタスムへの徹底が素晴らしいです。