マニ教 (文庫クセジュ 848)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560058480

作品紹介・あらすじ

三世紀のペルシアで生まれたマニ教は、厳粛な倫理と儀礼により律されていた。イスラム世界にラマダン(断食月)をもたらしたのもこの宗教である。本書は、開祖であるマニが唱道した教えを、彼が残した聖典を検証しつつ解説してゆく。ゾロアスター教とキリスト教と仏教とが秘教的に融合した世界観に迫る。

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  • マニ教についての概説書。マニ教の創設者であるマニの伝記から始まり、マニ教において聖典とされる書物をはじめとする教義文書について、マニ教の宗教共同体の特質について、そしてマニ教の世界神話について記されている。

    前3世紀に現在のイランで生まれたマニ教は、ゾロアスター教やペルシャ文化の背景を強く読み込む見方と、マニ自身が没頭したキリスト教の背景を読み込む見方に分かれる。本書は後者の、特にユダヤ人キリスト教、エルカサイ派からの出発と離反を中心にマニの思想的成立を読み解いている(p.35)。その思想の独創性は、全世界を視野に収めた預言者論と教会論にあると言う(p.38-41)。つまり、マニはみずからを当時の世界宗教の創始者たち、すなわちゾロアスター、ブッダ、キリストという預言者の系譜に連なるものであると認識し、自らを「預言者の印璽」であると主張している。マニはみずから多くの聖典を記し、教会を組織した。これは他の宗教の創始者たちにはあまり見られないことだ。このことにも、自分はキリストを継ぐものであるという自覚によるものといえる。

    マニ教は(現在ではほとんど消滅しているが)東は中国から西は北アフリカまで広まった世界宗教である。マニ教の世界的布教を何よりも望んだのはマニだったが、それはトマスを受け継いでいるのだという。トマスはインドにまで赴いてキリスト教の布教を行ったとされている。マニはそのトマスに倣って、東方への布教を志したのである(p.65f)。その宗教共同体の特質としては、何と言っても選良者と聴講者の区別が挙げられる(p.110-120)。すなわち聖職者たちからなる選良者と、教会に対して寄付をなして教会の経済的基盤となる在家の者たちである聴講者。この二つの区分の間には大きな差があり、それは服装や振る舞い、禁忌などにより明らかであった。その倫理規範の厳しさはマニ教の特徴としてよく知られている。

    マニ教の神話、つまり世界創造や善と悪の戦いとしての世界記述などはマニ教の特徴としてよく知られている。著者はマニ教の世界観を二元論として捉える見方には賛成していない(p.150)が、世界神話については概略的であり詳説はされていない。何よりもその特徴はギリシャ神話のような論理的・哲学的なものではなく、詩的で感覚的であるところにある(p.167)。このような詩的傾向をもつマニ教において、美術が大きな役割を果たすのも当然のことだろう(p.86ff)。

    概略的なところはざっと記されているが、フランス語の本からの翻訳で文体はちょっと読みにくい。教義文書や神話に関しては固有名詞が列挙される表面的な記述が多く、いまひとつの印象。比較宗教的な視点や宗教社会学的視点があるとよかったと思う。

  • [ 内容 ]
    三世紀のペルシアで生まれたマニ教は、厳粛な倫理と儀礼により律されていた。
    イスラム世界にラマダン(断食月)をもたらしたのもこの宗教である。
    本書は、開祖であるマニが唱道した教えを、彼が残した聖典を検証しつつ解説してゆく。
    ゾロアスター教とキリスト教と仏教とが秘教的に融合した世界観に迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 マニ(マニの誕生の場所と時 マニの両親 ほか)
    第2章 典籍(マニが読んでいた書籍 マニの著作 ほか)
    第3章 共同体(位階制 修道士の倫理規範 ほか)
    第4章 万神(物語 マニ教の神々一覧 ほか)

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