- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560070734
感想・レビュー・書評
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古い本だが、長年気にかけては忘れ……(笑)を繰り返していた
レ・ファニュ「緑茶(Green Tea)」が収録されているので
取り寄せて読んだ。
19世紀~20世紀前半に書かれたイギリス人作家による
怪奇幻想作品のアンソロジー、全12編。
日本語訳が端麗で読みやすい。
「緑茶」にはヨーロピアンの東洋に対する偏見を感じたが、
その時代の知識・感覚からすれば止むを得ないものだったかもしれない。
ストーリーに驚きは感じなかったが、妙にシアトリカルな下記のくだりが
グラン=ギニョルを彷彿させてグッと来た(p.149)。
> 召使いは私を見て、あっけにとられて口もきけぬ風で、
> 階段の途中に立ちすくんでいた。
> 両手をハンカチで拭っていたが、そのハンカチは血まみれだった。
意外な内容で驚いたのはコナン・ドイル「サノックス卿夫人秘話」。
文筆業の初期に書かれたという恐怖短編で、
モロにグラン=ギニョル風でクラッと来た。
他には文化・宗教観の異なる世界で禁忌を犯した者に
呪いが降りかかる点が共通する、
H.G.ウェルズ「ポロックとポロの首」、
キプリング「獣の印」が面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
名編揃いだけどほとんどがどこかで読んだことがある話だった。「異形のジャネット」は怖い。編者が翻訳しているM・R・ジェイムズとサキの訳は酷い。こなれた訳を履き違えて読みにくくしているだけ。サキは講談社サキ短篇集で、M・R・ジェイムズは創元推理M・R・ジェイムズ傑作集で読んだ方が話の雰囲気がずっとよく感じられると思う。どちらも名品なのに残念。
ジョン・コリアもせっかくの名作が訳が拙く、特に勝手につけたと思しい邦題が酷い。ハヤカワ幻想と怪奇「ビールジーなんかいるもんか」の方がおすすめ。読んだことある話が多いだけに訳ばかり気になった。翻訳物は訳がつくづく大事と思った。 -
なんだかんだでレ・ファニュをあちこちで読んでる気がする。
宮部編「terror」のデ・ラ・メア、近くのレポート書いたばっかりのロセッティ(「林檎の谷」南條竹則訳)もいる。
初ウェルズ。
「マリオンには、まさにこの手術が必要だったのだ。」(ちょっと怖い。結びより直前の顔がこわばっている、て所が好き)
「サノックス卿夫人秘話」 ドイル 小野寺健訳
あれを見たら、一途な娘(コ)だってきっとおっしゃるよ。おれもほんと、そう思ってる。(かわいい。さわがしくてちょっとさみしい。)
「幽霊船」 リチャード・バラム・ミドルトン 南條竹則訳
(恩田陸が言ってた窓の話のひと?かわいげがある。深読みできそう)
「スレドニー・ヴァシュタール」 サキ 由良君美訳
(「宝島」の人。おどろおどろしい。怖い牧師さん、過去に本人が恐ろしい目にあってて、っていうパターン「淑やかな悪夢」にもあった。定番?)
「異形のジャネット」 スティーブヴンソン 小野寺健訳
(あの診断シリーズの第一弾?相変わらず、えらい目にあってる患者に対して結構突き放してる。そこが結構好き)
「緑茶」 レ・ファニュ 横山潤訳
「さあさあ、答えなさい。空想(ごっこ)はどっちか?」
「大きいサイモンと小さいサイモン」と少年は答えた。(ビールジーさん。杖で地面に印をつけたら出てくる、いたりいなかったりする、何にも似てない人。父親の、間違っちゃいないんだろうけどいちいち嫌な感じが良い。)
「われはかく身中の虫を退治せん」 ジョン・コリア 伊藤欣二訳
(兄さんの最後がすごく好き。読んでる最中はちょっと長いと思ったけど、構成がすごかった)
「樹」 ウォルター・デ・ラ・メア 脇明子訳
「そりゃ、あんた、只今現在、あやつが何をしてござるか、そんなこと誰にも分かるわけがあんめえ。」(一番好きかもしれない。怖かった。語り口がとにかくいい。他のも読みたい)
「ネズ公」 モンタギュー・ローズ・ジェイムズ 由良君美訳
(結末はだいたいわかるんだけど、早く楽にしてやれってくらいしつこい。そこがいい。題材がその時代っぽい)
「ポロックとポロの首」 H. G.ウェルズ 小野寺健 訳
(上に同じ題材。祟られた奴の対応に苦慮したり自分たちがやったことに落ち込んだりする側の話。面白い)
「獣の印」 ラドヤード・キプリング 伊藤欣二訳