- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560071427
感想・レビュー・書評
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原題は≪La salle de rédaction≫でそのまま。以前から気になっていてそのままになっていたものを、ブクログでアップされているかたがいらっしゃり、「あ、そうだった…」と手にとりました。
「編集室」に転がっている、記者やカメラマン、あるいは取材対象のエピソードから書き起こされた短編集、といっていいのだろう。著者のグルニエが元新聞記者ということもあり、とっかかりになる出来事、たとえば従軍時代の戦友や取材のために組むカメラマン、彼らの持つジンクスめいた感情や、仕事で顔を合わせる広告会社の女性などのありようはさりげなくリアル。元ネタはほんのひとつまみだろうけど、そこからフィクションくささを感じさせずに物語が繊細に展開されてゆき、苦さとやるせなさを加えて、すうっと締めくくられる。ピアノ演奏にたとえていえば、どの物語も、和音をガンッと叩いて終わるのではなく、1音弾いてすっと鍵盤から指を放すようなラストのタッチではないだろうか。
個人的には、『脱走兵たち』の、どちらも初老の男性記者と女性記者のやりとりと切り返しが、これぞ粋な仏文短編の典型!という感じで好き。『ジゼルの靴』の、リセ時代の友人との約束にはせる思いの苦さや、『北京の南で』の老記者の混乱は文学の国籍を問わず、ザ・短編!という構成ではないかと思って気に入っている。翻訳はだらだらと修飾語が長くなりがちな仏文をうまく処理してくださっているようで読みやすい。これはグルニエの経歴からいって、もともとが簡潔な文章の可能性もあるけれど。
センセーショナルに展開しようとすればできるし、そのほうが簡単な刺激的なエピソードを、極力抑えて書いた筆致がもうまったく私好みで、この☆の数。ドーデ『最後の授業』やジロドゥ『オンディーヌ』で、仏文の切り返しの鮮やかさにやられた頃のことを思い出し、久しぶりに「いい小説読んだよな!」と満足した1冊でした。 -
実話のような雰囲気の短編集。期待ほどではなく。
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『水曜日は狐の書評』より
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どことなく夜の匂いがする短篇群。いまひとつ。