魔の聖堂 (白水Uブックス)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072509

作品紹介・あらすじ

18世紀ロンドンで建設中の七つの教会に異端建築家が仕掛けた企みと現代の少年連続殺人の謎。過去と現在が交錯する都市迷宮小説。

感想・レビュー・書評

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  • 18世紀のロンドン、建築家のニコラス・ダイア―は、上司のサー・クリストファー・レンの下で七つの聖堂の建設に取り組んでいる。ニコラスは幼い頃ペストで両親を亡くし、浮浪児となっていたところ、ミラビリスという不思議な紳士に出会い、謎の集会所に出入りするようになる。そこはドルイド教の秘密結社だった。やがてニコラスは叔母に引き取られて、ロンドン大火のあと石工の親方に弟子入り。才覚を発揮し、サー・クリスに雇われて現在にいたる。彼には秘めた野心があり、表向きキリスト教の教会を建築しているふりをしながら、実はドルイド教の秘儀(生贄)を裏でおこなっていたのだが、そのことは愛弟子のウォルター・パインにも隠していた。だがある日、何者かから脅迫状が届き…。

    一方、250年後の現代のロンドン。あちこちの教会で少年(たまにホームレス)の絞殺死体がみつかり、警視正のニコラス・ホークスムアは部下のウォルター・パインと共に連続殺人の捜査に乗り出す。しかし手掛かりは皆無で、次第にホークスムアはノイローゼのようになり…。

    読み始めの序盤で、ニコラス・ダイア―が建築中の教会ってホントにあるのかなーと検索していたら、ニコラス・ホークスムアという実在の建築家が建てた教会だとわかって、彼がモデルなのかと思っていたら、現代パートで刑事としてニコラス・ホークスムアが登場してビックリ。(最後に訳者解説読んだら全部書いてあった…)ダウアーが生贄にした人物と、現代の連続殺人の被害者もリンクしており、まるで時間を超えたパラレルワールドめいてきた。しかもどちらの時代のニコラスも弟子(部下)の名前はウォルター・ペイン。

    解説によると、実際の建築家ホークスムアの仕事に、絶妙にフィクションが盛り込まれていているらしく、つまりこれはもはや歴史改変SFの一種なのかもしれない。だがもちろん実在のホークスムアはこっそり教会の地下に生贄を埋めたりはしていない。

    最初は、18世紀の建築家が教会にかけたドルイドの呪い(?)的なものが250年かけて作動して、連続殺人が起こっているのかと思っていたのだけど、なんかちょっとそういう感じではなかったぽい(実は最後なにが起こってどう解決したのかよくわからなかった…)蘇った「建築家」=ダイア―が、新たな生贄を捧げていた、という解釈でいいのかしら。(全然違うかも)

    もっとおどろおどろしいことになるのかなと思っていたけれどそれほどでもなかったです。

  • ロンドン大火後の18世紀、七つの教会の建設中に起こる連続殺人事件と、250年後の現代のロンドンで起こる連続殺人事件。過去と現在が交錯する都市迷宮小説。

    奇数章と偶数章で交互に描写される過去と現代、合わせ鏡のような相似形で起こる事件に翻弄される読書体験。面白かった。
    過去と現代で原文にあわせて翻訳文体を変えたり、活字を変えたりとどっぷりそれぞれの世界に浸れる工夫もあり。ただし、あらすじから期待してミステリ的なオチを期待してはダメです。そこをどう纏めているかは本書を読んでのお楽しみ。
    あとがきでは「帝都物語」だと言われているが、私個人としては「匣の中の失楽」とか「黒死館」とか「魔都」とかそういったモノがお好きな人は、これも好きなんじゃないかなぁと思いましたね。

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