- Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560084830
作品紹介・あらすじ
装幀を手がけた大江健三郎作品の秘密
大佛次郎賞を受賞した『本の魔法』では、実は著者と最も関係が深いと思われる大江健三郎について言及されていなかった。370頁を超える本書に目を通せば、読者はその理由がわかるだろう。
著者が手がけた装幀で、最多を誇るのが大江の作品である。二人はほぼ同世代。大江10歳、著者9歳のときに敗戦を経験し、同時代を歩んできた。1970年に『叫び声』の装幀を依頼されて大江と出会い、以来、作品の深い読みが反映された装幀で大江の代表作が次々と世に送り出された。
大江作品は、小松川高校事件(女子高生殺害事件)、安保闘争、浅間山荘事件、狭山事件、原爆と原発事故による被曝、沖縄、在日朝鮮人の問題など、常に実際の事件や社会問題と想像力が結びついたものである。本書で大きく取り上げる『叫び声』と『河馬に嚙まれる』には、大江が追究してきたテーマの全てが網羅され、不気味なほど現代に繋がる。
著者は装幀をした時代を振り返り、大江作品を改めて多方面から精読し、国家や組織などと対峙する「個人」の魂の声に突き動かされながら、小説からだけではわからなかった事実を引き出していく。著者ならではの視点と感性で大江文学から現代への鮮烈なメッセージを摑み取る、渾身の書き下ろし!
感想・レビュー・書評
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個人的な繰り言を書くと、私が物心ついた時は大江健三郎は既に日本文学の重鎮的存在だった(なにせノーベル文学賞にまで輝いたのだから)。ゆえに敬して遠ざけられる、語りづらい存在だったように思う。司修のこの本はそんな風に大江を遇してはもったいないことを私たちに教える。『叫び声』と『河馬に噛まれる』の2作を重点的に論じたこの本は大江が極めてジャーナリスティックでフレッシュな問題意識と感受性を備えた作家であり、ゆえに今読み返しても充分アクチュアリティが保証されていることを証明する。むしろ、これから大江の時代が始まる?
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