少女、女、ほか

  • 白水社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560093665

作品紹介・あらすじ

時代も背景も様々な英国黒人女性が乗り越えてきた苦難をウィットに富んだ斬新な文体で語る。文学の新たな地平を拓くブッカー賞受賞作

感想・レビュー・書評

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  • Girl, Woman, Other / バーナーディン・エヴァリスト: 2019年を代表する1冊 - トーキョーブックガール(2020-06-09)
    https://www.tokyobookgirl.com/entry/girl-woman-other

    Booker Prize: Margaret Atwood and Bernardine Evaristo share award - BBC News
    https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-50014906.amp

    Bernardine Evaristo Bernardine Evaristo
    https://bevaristo.com/

    少女、女、ほか(仮題) - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b628114.html

  • 読み始めてすぐに、上手いギタリストが2人いるバンドを連想した。著者は表現したいことを文字にする能力を完全に自分のものにしていて、それを翻訳者が的確に日本語に移し替えている(翻訳ものでこのリズム!)。ツインギターのバンドにたとえると、じゃあボーカルは誰だリズム隊は何だという疑問が湧いてしまうが、要はそもそも技術力がゲージマックスなひとたちのコラボであり、読者はただただ読んでいればいい、最高、と感じたのだった。

    ストーリーについて。人間は単純化できない多面性を持ち、ものごとが変わらずにいることはない。このなんの新しさもない観点について、心の底から納得できる。本当にそうだと感じる。そして、変化はある、と思えることに勇気づけられる。

  • 訳者あとがきの言葉を借りれば、十代から九十代、黒人の血を引く12人の英国の女性たちとノンバイナリーの生の軌跡をたどる作品。ピリオドのない文章(あとがきを読むまで気付かなかったけど、会話文のカギカッコもない)は最初は意図がよくわからなかったが、読み終えてみれば、賑やかなカフェに入れ替わり立ち替わり訪れる客の話を漏れ聞くような、苛酷な話も多いのに軽妙さが際立つこの長い物語にはふさわしい語りだったのだと思える。12人よりもっとずっと多くの女性たちの人生に触れた気がするのも、この語りゆえかも。母娘、親友、同僚…と12人が意外な形でつながっているのも読みどころだが、わすれっぽい私は全部は気づけなかった気が。英国における人種差別や性差別のありよう、世代ごとの意識の変化が巧みに描かれ、夫婦、親子関係のままならなさにはため息をつくことしばしば。でも、みんな生きてるだけで強いよ、ほんと。分厚い本を手に取り、開いて、物語の中にダイブするこの贅沢な喜び、ゼイディー・スミスの『美について』をちょっと思い出した。

  • 人生に3番目と思われるくらいの最悪なタイミングとコンディションで読み始めたんだけど、あっという間に読み終わった、心が救われた。自分を肯定したくなった。リミッターを外したくなった。孤独が怖くなくなった。パワーをもらえた。

    どうやったらこんなすごい物語か書けるのか。文体のユニークさもさることながら構成に唸る。

  • 英国の黒人の血を引く女性とノンバイナリー12人の物語。章ごとに1人の人の人生が語られていて、それぞれ関わりのある人たちなので前の章に出てきた人を別の視点で見ることになったり、スピンオフのように脇役だった人が主人公になったりして、だんだんと広がりながら隙間を埋めるように話が進んでいく。差別されたり、辛い思いもたくさんしてきた、でも頑張った、時代とともに人々の意識も変化してきた、これからも良くなっていくはず、だから時代に置いていかれないように若い人たちから学びながら自分の意識もアップデートしていかないと。そんなメッセージが込められているような、希望が感じられる物語。

  • 500ページの分厚さだが、ドライブ感のある語り口で長さを感じさせない(本当)ピリオドやカギかっこ(「」)がないユニークな文体で、女性たちの様々な声、賑やかなおしゃべりや真面目な独白に耳を傾けているうちにページが進む。
    黒人の血を引く12人の女性が登場する。アリ・スミスの4部作もだが、一つの語りで脇役だった人が、別の語りで主人公になったり再登場したりして別の観点を示す、といった作りの小説がトレンドなのだろうか。周辺の人物もしっかり描き込まれているので、人物関係を記憶して読み進めるするのが難しいほどの広がりをみせる。後書にある通り、この内容でよく500ページに収まった。
    黒人への人種差別のみではなく、LGBTQの登場人物は多く、豊かさ・貧しさの階級もあり、家族やパートナーとの関係は様々に脆く厳しく、辛いエピソードは多い。しかし全体のハーモニーは、力強く生き生きとしてポジティブだ。この話を終わらせるのは難しいのではないかと思ったし、最後より途中の方が面白い小説だが、「ダメホ王国最後のアマゾン」というタイトルも内容も謎で面白いようなつまらないような演劇の周囲に人が集まるフィナーレはうまい。


  • 文体もさることながら圧巻だった。第一章のンジンガによって性差や人種差別以前に精神的迫害者の存在を示唆してる。章を進むごとに登場人物の関係性やルーツが紐解かれあらゆる問題提起を体験する。震えたけど読めてよかった。

    ジェンダーを解くなかで男性はどう捉えるのか思わずにはいられない。人間は女性だけではない。その視点の角度はあらゆる可能性をみつめて綴られている。人の本質の多様な生き方を肯定したものを読める。凄いと思った。そして男性と葛藤し苦闘の末、幸せに生きる女性の姿もこの本の中で貴重な存在的内容と思えた。
    ジェンダー、フェミニズムから何十年もずっと先を語っていて嬉しかった。こだわることから抜け出し人間本来の毅然と自己を尊重して生きるべきなのだ。
    イギリスに生きた黒人の人種差別と性差の色々な登場人物の関わりから読んでいくと身近な個人的な性差が思い出され日本や世界に同じ苦しみを共感する読み手が多いのではと思った。

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