つわものども:誉れの剣1 (EXLIBRIS CLASSICS 誉れの剣 1)

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560099131

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦を描いた英国小説の最高峰、三部作開幕

 カトリックの旧家出身の紳士ガイ・クラウチバックは妻と離婚し、イタリアの別荘で鬱々とした日々を送っていたが、ファシズムの擡頭にヨーロッパ情勢が風雲急を告げると、今こそ大義に身を捧げる時だと感じ、イギリスへ帰国する。やがて第二次世界大戦が勃発、ガイは入隊して国家への義務を果たそうと各方面に働きかけるが、軍隊経験のない35歳の中年男を採用しようという隊はなかった。それでも、なんとか伝手をたどって伝統あるホルバディアーズ連隊に見習士官として入隊したガイは、アフリカ帰りのアプソープや一回り年下の若者たちと共に訓練を受けることに。旅団長には第一次大戦の勇士リッチー=フック准将が着任し、戦地へ向かう準備が進められるが……。
 英雄的な理想にもえて軍に身を投じた主人公がやがて直面する戦争の現実、その恐ろしくも愚劣なメカニズムに巻き込まれた人々の滑稽でグロテスクな生態を、真面目な思索と辛辣な諷刺、時にスラプスティックな笑いのめまぐるしい交錯のうちに描いたイーヴリン・ウォーの名作《誉れの剣》三部作の第一巻。ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。本邦初訳。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりのウォー。
    真面目な小説だった前作『回想のブライズヘッド』とは変わり、シニカルなジョークに満ちたシュールな作品。
    とてもウォーらしい味わい。

  • 戦場というシリアスな舞台で面白いことが起る。面白いヘンな男たちばかりの世界。深刻な中に滑稽が混在する。実はこの描写が現実世界に近いのかもしれないなと思った。例えば変わった性格で人望がないアプソープがトントン拍子で出世していくのなんかも、なんだかなぁ、と思ったまま話は進む。こういうところがリアルというか、書けそうで書けないのではないかと思う。訳者の小山さんの注釈の丁寧さにも感動。続きが楽しみ。

  • あんまり戦争の血生臭さはなく、軍に入るのが男子としての誇り、という時代に流されている青年達の話で、ブライツヘッヅもそうだが、全く世の中はしょうもないけど、なんとかやっていくしかないじゃん?そういうもんなんだからと、諦め半分に遂行できてる人、なんかどうしてもうまく咀嚼できなくて、つまずく人、人間の弱さとか、さが、が書かれているのかな、と思った。世の中にはコピペ文章が溢れてるけど、この人からはオリジナル感がすごい出てる。誠実。

  • イーヴリン・ウォーは皮肉と辛口ユーモアが好物なのだが、本書は「真面目な小説」の部類だ。おもしろエピソード:アブソープ・リッチー・フックとの便器を巡る騒動、スパイの勘違い、戦争エピソード:ドイツの捕虜になった甥への思い、ココナッツ、イタいエピソード:元妻とセックスしようとして失敗、軍のサッカーで足を痛める、などが織り混ざっている。それにしても、猛々しい戦闘や兵士の艱難辛苦が描かれるわけではなく、従軍兵士らの日常や社交などは随分のんびりしている。映画で米軍や戦中の米国の様子を見ても思うが、日本が連合国と戦って勝てるわけはなかったのだ。余裕が桁違い。
    続きが待ち遠しい。

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著者プロフィール

Evelyn Waugh(1903-1966)
イギリスの著名な出版社の社主で、文芸評論家でもあったアーサー・ウォーの次男として生まれ(長兄アレックも作家)、オクスフォード大学中退後、文筆生活に入る。デビュー作『衰亡記』(1928)をはじめ、上流階級の青年たちの虚無的な生活や風俗を、皮肉なユーモアをきかせながら巧みな文体で描いた数々の小説で、第1次大戦後の英国文壇の寵児となる。1930年にカトリックに改宗した後は、諷刺の裏の伝統讃美が強まった。

著作は、代表作『黒いいたずら』(1932)、ベストセラーとなった名作『ブライヅヘッドふたたび』(1945)、T・リチャードソン監督によって映画化された『ザ・ラヴド・ワン』(1948)、戦争小説3部作『名誉の剣』(1952-61)など。

「1996年 『一握の塵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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