中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義 (白水Uブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560721254

作品紹介・あらすじ

1915年、日本に亡命したインド独立の闘士、ラース・ビハーリー・ボース。新宿・中村屋に身を隠し、西欧支配からアジアを奪還するため、オピニオン・リーダーとして活躍する。しかしアジア解放の名の下、日本軍部と皮肉な共闘関係に入っていく…。「大東亜」戦争とは何だったのか?ナショナリズムの功罪とは何か。

感想・レビュー・書評

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  • インドネシア独立戦争に参加した日本軍についての本を図書館で借りようとして間違えてこの本を手に取ったが、結果オーライですごく面白かった。テロを起こして日本に逃げて新宿のパン屋さんに匿われるインド人革命家ってだけですごいインパクト。
    インドを植民地とするイギリスの帝国主義と戦いながらドイツ、イタリア、日本の枢軸国による帝国主義を支援し同胞から糾弾されるくだりは読んでいて辛い。

  • インドに行く際に買って読む。
    アジアをどう捉えてどう生きるという問いには、終わりがない。

  • 新宿中村屋のインドカリーはなぜ「恋と革命」の味なのか、よくわかるようになる。

    戦前、インドから日本に亡命をしたインド独立の革命家・ボーズを日本の右翼(アジア主義者)たちはなぜ、イギリス政府に気兼ねして国外追放にしようとしていた日本政府に抗って彼をかくまったのか、よくわかる。

    そして、「近代を超克し、東洋的精神を敷衍させるためには、近代的手法を用いて世界を席巻する西洋的近代化を打破しなければならない」という難題こそが、20世紀前半のアジア主義者、アジアの思想家たちにとっての最大の課題であり、苦悩だったこともよくわかる。

    アジア主義の可能性と限界を見せるけられる本。

  • ★昭和初期とインド人の意外なつながり★亡命インド人が日本の戦前戦中に論壇で一定の立場を示した。現状からはなかなか想像できず、それだけでも興味深い。日本に逃げてなおインド独立だけを目的に過ごしたのは、もどかしさと意志の強さの混在であったろう。アジアの解放を掲げる日本が、一方でアジアを侵略し帝国主義の立場を取っていた矛盾。亡命外国人の視点だからこそ鮮明に浮かび上がる。

    著者は頭山満を「心情的アジア主義者ではあったが、思想的アジア主義者でなかった」と指摘し、思想ではなく精神力でボースを支持したとする。面白いが、正直なところアジア主義が何を意味するのか、うまくつかめない。最後に引用する「方法としてのアジア」はなおさらでもある。北一輝や孫文について知識が乏しいので勉強が必要だ。

    ただ、なにより著者の熱量がすごい。

  • インド独立運動の指導者RB(ラース・ビハーリー)ボースの物語。インドを追われ、命からがら日本へやってきた。日露戦争でロシアを倒した日本ならばインドを英国から解放してくれるのではと期待して。
    当時の移動手段や情報の伝達手段など、困難はあっただろうがよく祖国を離れて活動できたなと、現代の情報社会に生きていると感じる。
    同時にあの時代に日本でインドからやってきた活動家がいたことも知らなかったので、本当に食い入るように読んだ。
    先日モディ首相が日本に来た。パール判事を日本側が評価してくれたことをインド人は忘れないと言っていた。
    私からすればボースが決して日本を悪く言わず、生涯を閉じる前に、インド独立のために日本軍が国民軍と戦い血を流してくれたことに感謝しているとしていたくだりに胸が熱くなった。
    ボースは日本人に帰化しており、息子は防須正秀は大東亜戦争に出兵した。そして沖縄で戦死した。日本のために戦ってくれたその想いは、忘れない。
    この気持ちは日系アメリカ人の二世が日本のために戦ってくれたことへ抱いた感情に似ているかもしれない。

  • 日本で最初の本格インドカレーとされる東京新宿中村屋の「インドカリー」。この「インドカリー」誕生の裏には、時代に翻弄されたあるインド人の数奇な人生がありました。本書は、「中村屋のボース」こと、ラース・ビハーリ・ボースの半生を題材に、これまで語られることが少なかった20世紀アジア史の一断面を鋭く切り取った本です。独立運動に関わってイギリス当局から追われ、日本に逃げ込んだボース。ボースの逃亡劇をはらはらしながら読み進めていくうちに明らかになる歴史的事実に、読者は、日本人として、あるいはアジアの人間として深く考えさせられることになるかもしれません。
    本書はカレーが大好きな人、歴史に興味がある人、国際関係を勉強したい人、どの人にもおすすめです。教科書とは一味違った歴史の物語を堪能してください。

    志學館大学 : 教員 溝上 宏美

  • 20世紀はじめから第二次世界大戦終戦間際にかけて、インド独立運動を指揮したラース・ビハリー・ボースの半生を描いた本。

    イギリスからのインド独立運動を日本で指揮した点に特徴があるが、皮肉なことに当時の日本もアジア解放という大義を掲げ、「大東亜共栄圏」という美名の下、欧州の帝国主義列強のごとくアジアに侵略していった。
    しかし、この「アジア解放」の中にインドは含まれていなかったという。

    このような日本でインド独立運動をすること自体、矛盾や無理があったであろうし、ボース自身にも葛藤があったものと思われる。

    ボースは、インド生まれのインド人だが、インドで過激な独立運動を指導したことから、英国政府に目を付けられ、インド国内での活動が困難となったため、当時(1915年)日露戦争に勝利し、国力を高めつつあった日本に、当時アジアで初めてノーベル文学賞を受賞したベンガルの詩人ラビンドラナート・タゴールの親戚であるプレオ・ナース・タゴールに紛して亡命した。

    しかし、当時の日本がボースにとって安全な亡命先であったかといえば、甚だ疑問である。実際、日本でも官憲の目から逃がれるため、新宿の中村屋に潜伏していたわけだが、そこであの有名な中村屋のインドカリーが誕生した。
    ただ、本書の主要なテーマがインド独立と近代アジア史であることから、タイトルに『中村屋のボース』と謳いながら、カリー誕生秘話について本書ではほとんど頁数がさかれていないのは残念である。

    日本人が学ぶ近代史は、通常、日本や欧米からの視点でかたられることが多いが、本書のようにインドから見たアジア近代史という視点は新鮮であり、その視野から見ることで当時の日本が抱えていた矛盾(前述)もあぶり出され、多角的に歴史をみることの重要性を再認識させられた。

  • 戦前に日印間でこのような関係があったとは。日本も道を間違えなければアジアのリーダーになれるチャンスは数多くあったのだと思うし、まだ遅くはないだろう。

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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