調香師日記

  • 原書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562047512

作品紹介・あらすじ

エルメスの調香師が南仏、パリ、東京…で綴った香水の創作日記。

感想・レビュー・書評

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  • Jean Claude Ellena<br>ジャン=クロード・エレナ | ルシェルシェパルファム
    https://lechercheurdeparfum.com/jeanclaudeellena

    調香師日記 - 原書房
    http://www.harashobo.co.jp/smp/book/b368739.html

  • エルメスの庭シリーズやイリスの調香師であるジャン・クロード・エレナ氏の日記。氏がフレグランスをデザインする時に目指すものや考えていることが落ち着いた文体でつらつらと書かれています。自分が使う香水がどのようなことを考えて調香されたのかその一端を知るのはとても愉しいものでした。受け手の私は、また異なるメッセージやイメージを想起していて、香水はまるで文学のよう。
    余談ですが先日、何点か大変気に入り買い求めたLe Couvent des minimの香水は氏の監修だと知り改めてタイミングと巡り合わせに驚かされました。

  • ・彼は、ジャン・ジオノを心の拠り所としている。
    (cf. Jean Giono:1895~1970/南仏マノスク出身、プロヴァンスを舞台にした作品を多く残す/『木を植えた男』)

    ・エドモンド=ルドニツカ:ディオールから「オーソヴァージュ」を発表/調香師としてエレナの先輩

    ・本の内容からは離れるが、芸術作品を批評する時には、2次的な接し方も存在すると考えた。
    1次:純粋に作品のみをみる。
    2次:背景知識や文脈を知り、その上でみる。

    ・アコードとは和音
     香水の世界では、香りのベースとなるようないくつかの香りの組み合わせを指す。

    ・エレナは絶えず、自問自答を続けていた
    香水作成、制作の期間はまちまちではあるものの、長期に渡る作品の場合、彼は頭の中のイメージに理想の香りを持ちつつ、それと付き合いながら試行錯誤を繰り返していたのが印象的だった。

    ・西洋画と日本画を比較した際の、稠密と余白という表現が説得的

    ・「匂いを覚えるということは、匂いに輪郭をつけるということ。匂いをただぼんやりと感覚的に捉えるのではなく、はっきりと知性で理解できる対象として捉えるということである。そうすれば匂いを利用し、使いこなし、方向性を持たせることができるようになる(一部略)。」(pp.118~119)
    この内容は、他分野にも大いに当てはまるだろう。

    ・「匂いは言葉。香水は文学」
    匂いにも言葉同様地域性があるはずで、そうなると同じ匂いでも作成者、嗅臭者で国や地域が異なれば感じ方は変わってくるのでは?
    フランス人がイメージした情景・感情・想いとそれを嗅いだ日本人がイメージするそれらは、同じ匂いを嗅いだフランス人のそれらと大きく異なることがあるのではないかしら、という話。

    ・同じ花でも時間によって香りは変わる
    一流の芸術家は、それを感じ分けられる。感じ取れる必要があるのだろう。

    ・余白があるとそれを埋めたくなってしまうのが人間の性(=空白の原則)。
    ≒「パーキンソンの法則」
    1:仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する。
    2:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。

    ・創造=組み合わせのオリジナル性
    言葉などは所与のものである。所与のものにオリジナリティはない。伝統は既得権益。アイデンティティは与えられたものを如何に使っていくかで形成されうる。

    ・一流は常に疑う、自問自答の姿勢、問いを持ち続けられる。

    ・一流がなぜ揺らがないか。
    大なり小なり疑問を持ち、規則的な生活を送り、適度にリフレッシュする時間を持つ。マンネリズム、コンフォートゾーンから脱し、普段触れないものに触れる。

    ・分析器(絵画に対してのカメラ/写真)の登場により、香水のあり方が変わった。香りの形が解明され、本物さながらのコピーが容易に作れるようになった。

    ・一流の日々は地味である。地味に地道に向き合わなければ続けられぬ。

  • ジャン・クロード・エレナ氏は、

    たくさんのヒット作を作った調香師。

    今はパリを離れてカブリと言う小さな街に住んで

    香水を作っている。

    彼の日常からの香水のヒントとなる手帳に書き留めた

    エッセイや、新しい香水についての覚書からできている。

    香水を作る作業において、何を考え、どんな風に香りを作るのか興味深い。

    古典的香水においては、本来の香りに酷似させるやり方が

    主だったが、

    今では印象派の絵画のように、

    連想させインスピレーションを与え、

    余韻に想像を加える設計に変化しているようだ。

    まるで点描画のように。



    最後のページに、何種類かの香りのイメージを

    何と何を加えて作るのか、実際の原材料が記されている。

  • 職人ではなく、芸術家としての調香師。

  • 著者の、嗅覚と思考と感性が全て美しく繋がりきったような文章。まるで噎せ返るような香りにぶつかったときのように、ただただ圧倒される。難しい言葉や彼独自の考えも出てくるので、わかりにくい部分も多いけれど、ぱらぱらとめくって断片を楽しめばいいとおもう。特に、日本を訪れた際の描写は、外国人の目を通して、それもエレナ氏の感性を通して表現されることで、改めて気付かされる文化としての美しさに少し涙がでた。

  • 「かねてより、調香師は作曲家にたとえられてきた。私はつねづね自分は香りの文筆家だと思っている。」
    エルメスのお抱え調香師ジャン=クロード・エレナ氏が綴る、「香りを作る」という仕事に就いた人間の日常。
    世界には色んな仕事をする人がいて、その人たちの仕事の果実によって、私は今日も自分では作れない至福を手にする。ということを、憧れに近い気持ちでもって再確認する類の本。

    読み終わって思ったのは、この本は「調香師」というより「エレナ氏」についての本。エレナ氏という、人生50年以上を香水作りに捧げてきた一級仕事人の、仕事観の本です。
    メゾンの専属調香師として、ひたすら自分の好きなように香水を作るわけにも行かず、けれども同時に芸術家として、そして職人としての自分とも対峙し続ける男。
    元々「職人」「芸術家」の目線に弱い私には、もう惚れ惚れとする顔(実際の顔知らんけど経験と自信と迷いが刻まれた素敵な「顔」だと妄想します)でございました。
    「調香の仕事を続けながら、私は自由を求めてきた。私はとらわれの身である。匂いをかぐことも、匂いのことを考えるのもやめるわけにはいかない。調香の感覚が失われるのが怖い。どんなアーティスティックな仕事にも言えることだが、私は体を張って香料と格闘し、香料に通じていなければならない。その努力と引き換えに、私は調香師でいられる。ときどきそのことで頭がいっぱいになる。」
    50年、「至福」を作り出すことに五感を費やしてきた人。遠い背中だなぁ。

  • 大切にしなくてはならない感覚を気づかせてくれる本。
    ある種、バイブルとしていつでも身近においておきたい類の本!

  • 現役の調香師の日記はなかなか貴重。
    アーティストが現代のマーケティング手法と拮抗するところがある点、ラグジュアリーブランドのマーケティングについても参考になる。
    日本を訪れた外国人からみた印象はやはりおもしろくて興味深い。

  • irisがイリス・ウキヨエだったのはビックリ 私からは違和感が感じられるかな でも大好きな香り このエッセイも大好き巻末の処方箋も 想像する楽しさがあって楽しい 物凄く面白いて云うのとはまた違うけど きっと何度も読み返して 身近に置いておきたくなる本でした。

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