- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784562057306
作品紹介・あらすじ
終戦後のドイツ。自分が、純血アーリア人の子どもを“生産する”べくナチスが作った組織〈レーベンスボルン〉の里子だと知った少女。壮絶な人生を乗り越え、自らのルーツとナチスの優生思想、そして組織の全貌を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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ナチスが純血アーリア人を量産するために設立したとされる、レーベンスボルン(生命の泉)協会。
その組織で“生産”され孤児として引き取られた可能性のある著者による、自分探しの記録です。
恐ろしいことが実行されていたのはわかるのですが、文章からは被害者意識の強さを感じました。
様々な角度での検証が必要に思えましたが、特定の立場から書かれた資料となる一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
言葉にならない。
私は誰?自分探しのその問い自体が心理的な虐待になっている事実に閉口する。
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すごく重い話。ナチスがこんなことをしていたなんて知らなかった。
主人公の出自や養父母に対する葛藤に共感しつつ、その歴史を隠そうとするドイツ行政にはもやもやしました。
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普段は重い・辛い話は負担が過ぎるため読まないが、タイトル・書影が、読んでください、知ってくださいと訴えかけてきた。
普通の女の子の写真に見えるが、この子にそんなひどいことが…?と、ページを繰らずにはいられなかった。
結果として、誰もが知っているであろうユダヤ人の虐殺のほか、こんなことも行っていたのか…と、知ることに意味があったと思うし、レーベンスボルンの子供たち、イングリットでありエリカ以外にも多くの子供たちが、レーベンスボルンに選ばれなかった上で非道な扱いを受けた子供たちが、子供たち以外にも、とにかくたくさんの人々に思いを馳せることになり本当に胸が痛い。
歴史を繰り返さないために、辛くても様々な事実を、今後も一つ一つ知っていかなければならない。
イングリットの性格なのか、訳者のおかげか、苦手な種類の文章ながらするする読ませてくれたことに感謝。
イングリットや他の皆さんのご多幸を祈る。 -
3.94/73
内容(「BOOK」データベースより)
『終戦後のドイツ。少女イングリットは両親から冷遇されてきた理由が、自分の素性にあると知る。彼女は里子―それもただの里子ではなく、ナチスが純血アーリア人の子どもを“生産”するべく作った組織“レーベンスボルン”からもらわれてきた子どもだったのだ。本当の名前はエリカ・マトコ。しかしそれ以外に、自分についてわかることは一つもなかった。やがて60歳を目前にしたイングリットは、ドイツ赤十字や歴史学者の協力を得て、自分のルーツをたどる旅に出る。謎多き“レーベンスボルン”の全貌と、筆舌につくしがたい出自の真相が明らかに。』
原書名:『Hitler's Forgotten Children: My Life Inside The Lebensborn』
著者:イングリット・フォン・エールハーフェン (Ingrid von Oelhafen), ティム・テイト (Tim Tate)
訳者:黒木 章人
出版社 : 原書房
単行本 : 296ページ -
NHKのドキュメンタリーで放送された。レーベンスボルン生命の泉計画によってドイツに連れこられた女性の自伝である。男性の話は既に平凡社の本になっている。アウシュビッツだけでなく、こうしたことも知るべきである。日本でも同じ考えがあり、小説家の森敦も同じ考えによって、戦争中でも徴兵されずに日本に残された男性である。戦争中には小金井の陸軍研究所で遺伝子研究が行われていたが、そことの関連は本人は話さなかった。
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自分が誰なのかわからないという内在不安を全く味わったことのない人に実存的な疑問を逡巡することは皆無だろう・・筆者がナチスの忌まわしき企みの犠牲者であったことを知って旅立つ記録である。
金髪碧眼・北方人種を証する優生法は20C初期にいーろっぱを席巻した。妄想にまみれたヒトラーと忠実な子分が大好きな記録を駆使して綿密な計画の元 行った所業。
鼓動が高まる読書となり一日で読み終える。
筆者が辿った「生まれ」の謎の解明は完結とは行かぬまでも「自分の人生をあるがままに愛せる」と締めている言葉は胸が熱くなる。
巻末にある言葉がいい!~”人間は歴史から多くを学ばない、それが最大の教訓だ” -
寡聞にしてレーベンスボルン計画を知りませんでした。極秘に遂行されていた戦時中の作戦。ヨーロッパ大陸、特に東側の複雑な地名と複雑すぎる事情とが難しく、何度も冒頭に載っている地図を見返しました。人名もなじみのない音ばかり。
後半に名前の出てくるギッタ・セレニーとは「マリー・ベル事件」の著者のジッタ・セレニーのことなんですね。
一日で一気に読みました。