ビッケと空とぶバイキング船 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566013810

感想・レビュー・書評

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  • 小さなバイキング、ビッケが活躍する物語の3冊目。
    表紙のアザラシさんがいいおかお。

    フラーケのバイキングたちは、今度はロシアへの大遠征に出かけます。
    だけど、遠征先では今回もさまざまなピンチに直面します。
    そんなときに彼らを助けるのはビッケの知恵とひらめきなのです。

    物語を読んでいると、ビッケに教えられることが多いなぁと思います。
    この遠征中、ビッケはバイキングではじめて地図を作りました。
    この大発明を独り占めしようと言う仲間たちに「大事な発見は、自分ひとりだけでしまっておいてはいけないよ」「ほかの人と分かちあえば、ほかの人もまた、いいことを教えてくれるだろう。そうすれば、みんながよくなる!」と言えるビッケ…すごいなぁ。
    それに、数の数え方がちがう国に行ったときのエピソードもすてきでした。
    ビッケたちは「1, 2, 3, 4…」と数えますが、その国では2が一番小さい数で「2, 4, 6, 8…」と数えます。
    数え方の違いに戸惑う仲間に、どちらが優れているというのはないのだから、その国ではその国の数え方に習おうと言うビッケ。
    頭がよくて、素直で、思いやりがあって…本当にいい子だなぁ。

  • アイルランドのフラーケのバイキング。族長のハルバル、息子のビッケ、詩人のウルメ、舵取りのスノーレ、力の強いゴルム、文句屋のチューレたち。
    族長のハルバルは今度はロシアへ遠征に行くことにしました。
    ロシアほど遠くへ行けば「遠征王」の称号が与えられるかもしれない!なんて素敵な響きでしょう!
    しかし息子のビッケは行くことを拒みます。「戦いなんかしたくないよ。でももしお父さんが大変なことになったら鳩を飛ばしてよ。必ず助けに行くからね」
    ビッケは小さく力も弱く戦いは嫌いです。でも知恵が回り優しさを持っています。

    その助けを求める鳩は思ったより早く帰ってきました。
    ロシアに辿り着く前のアイスランドでフラーケバイキングたちは捕虜になってしまったんです。
    二匹のアザラシに手綱を付けて海を渡るビッケ。
    アイスランドのバイキング首領は言います。「奴らは棒でぶっ叩いて麦畑で働かせている!収穫が終わったら殺してやるんだハッハッハ」
    ビッケは救出を考えます。
    船はある。西への風も吹いている。
    アイルランドバイキングたちは驚きました。
    ロープで大きな凧を結んだフラーケのバイキング船が空を飛んでいるではありませんか!

    見事に脱出したフラーケバイキングは、ロシアの一部でスウェーデン人の住むホルムゴードに着きます。
    さあ、交易だ!
    …しかしそうはいきません。フラーケバイキングたちはスウェーデンたちに冷たくあしらわれます。
    ビッケは、ホルムゴードの王トルケルと、交易の条件としてチェスの対戦をすることになりました。
    ビッケと同行するのはフラーケバイキングでも詩人のウルメ。だって偉い王様は褒められるのが大好きで、そのためには自分を褒める詩をたくさんたくさん作ってもらいたいですからね。
    チェス勝負はビッケの勝ちですが、賢いビッケはトルケル王の威厳が立つように気を付けたんです。

    次に到着した町に住んでいるのはブルガリア人です。ブルガリア人は数の数え方がおかしいんです、だって「一、二、三」の代わりに「二、四、六」って数えるんです。だからビッケとハルバルしかいないのに「お前たちは四人だ」って言うんですよ!
    そしてスウェーデン人たちの王様は、食いしん坊で、欲張りで、威張っていて、自分は椅子から動けないくらいに食べて食べて太っているのに、町の人たちは餓えて餓えて痩せています。
    町の人に助けを求められたビッケたちは、智慧を使って王様と兵隊たちをやり込めます。
    感謝した町の人たちは、ビッケに「私たちの王様になってください」と言います。
    でもビッケはぼくは小さすぎるし、お母さんのところに帰らなきゃいけないからずっとここで王様になるわけにはいかないって言います。だからビッケたちは、ブルガリア人といまではすっかり健康で善良になった王様に、数の数え方、働き方を教えてゆきました。
    いよいよブルガリア人と別れる時に、ビッケは「名誉王」の称号をもらいました。

    フラーケ地方に帰るバイキングたちですが、帰り道ではアイルランドを通らなければいけません。
    ここに来るときに、船を飛ばせて逃げ出したアイルランド!アイルランド人はきっと怒って復讐してくるでしょう。
    そしてアイルランドに着いたビッケ達は驚きます!アイルランド人たちは、山の上に大きな大きなふいごを作り、船も出せないくらいの大風を吹かせているのです!
    ビッケは、持っていたクシャミ粉と痒み粉で、アイルランドを抜け出すのでした。

  • ビッケ・シリーズの3作目です。
    このシリーズはいわば「連作短編」ですね。
    今回はストーリー全体を通してアイスランド、ロシアへと遠征するのですが、途中でいくつかの困難があって、それをひとつひとつ乗り越えて故郷に戻ってきます。
    このへんが基本パターンのようです。

    それにしても、けっこう大人向けの内容も含まれてますね。
    ロシアのチェス・チャンピオンでもあるホルムゴード王・トルケルとチェスで一騎打ちをしたり。
    ブルガリアの独裁者の地位を剥奪する計略を練ったり。
    アイスランドの兵士たちに毒をばら撒いて、くしゃみとかゆみで戦意を喪失させたり。
    前作で対決した赤目のバイキングの頭領・ブローレの姉、トーラとビッケの一騎打ちがあったり。
    むちゃくちゃ面白かったです。

    次! 次!

  • 冒険のワクワクも去ることながら、ビッケの人柄にますます惹きつけられていきます。奇抜な知恵で危機を乗り越えるだけでなく、その知恵をひけらかすことなく、みんなを幸せにする力。本当の賢さとは何かを考えさせられます。さて今回はロシアへ。アザラシと海スキー、空飛ぶ船、暖食器にビッケの粉…愉快な方法で困難を切り抜けます。一国を救ったビッケはついに王さまの地位に…?全巻のお話と繋がる部分もあって面白いです。太った王さまのお話は道徳的で大人も楽しめると思います。会話がテンポよく楽しい。

  • 小さな海賊ビッケの第3巻。

    「勇気がある人になろうとも思わない。だって、何も怖がらない人って、結局、何もよくわからない人ってことだもの」
    冒頭でのビッケのセリフ。なかなか含蓄ある言葉だと思います。勇気、勇者という言葉を振りかざすことが大事であるバイキングたちへの痛烈な一言。

    3巻にはトルケルというなの王様が登場します。この名前を聞くと、どうしても「ヴィンランド・サガ」で大活躍ののっぽのトルケルを思い浮かべてしまいます。ビッケのトルケルは、あちらとは全然違うキャラクターなのですが。

    これはもう、仕方ない。
    おそらく、今後「トルケル」という名前で一番最初に連想される姿は、あの戦士トルケルになります。
    これはもう、仕方ない。

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