ビッケと木馬の大戦車 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784566013834

作品紹介・あらすじ

今から千年ほど昔、スウェーデンやノルウェーの海岸には"バイキング"とよばれる人たちが住んでいました。第五作目では、ビッケと仲間のバイキングたちが故郷を遠くはなれた地でどうもうなブルドゥース人と戦うはめに。さあ、どうなるでしょう?!-。

感想・レビュー・書評

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  • ビッケ達フラーケバイキングたちは、いま窮地に陥っています!
    以前悪い王から助けたブルガリア人が、野蛮なブルドゥース人に取り囲まれたため助けに来たのです。
    しかし獰猛な族長ブルレットに率いられたブルトゥース人は怒りっぽくて粗野で戦うのがとても上手です。遠征に出て略奪して運べるものは運び、後は焼き尽くすのです。
    絶望するブルガリア仁とフラーケバイキングは、ビッケの知恵に頼ります。
    ビッケは族長ハルバルの息子だけれど戦いは嫌いです。その代りに観察力があり優しく知恵が回ります。
    ビッケは良い考えが浮かぶと星が飛び散ります。ほら今回もビッケの周りに星が出ました!
     ブルトゥースがトンネルを掘れば、そのトンネルに水を流し込みます。
     竹馬で城壁を越えてこようとすれば、すべり液で転ばせます。
     城塞を丸太で突き破ろうとすれば、城壁を二重にします。
     巨大な木馬に隠れて場内に入り込もうとすれば、大きな網で覆ってしまいます。

    何度攻撃しても敵わない相手にブルトゥース人は戦意喪失、本当は凶暴なブルレットの支配に飽き飽きしていたのです。
    そしてその族長のブルレットも、沼に沈みそうになったところをハルバルに助けられ考えが変わったのです。自分が死にそうになったときに、自分の死を悲しむ者はだれ一人としていないだろうと分かったのです。だから命が助かったときに、今後は良いことをして生きて行こうと決心したのです。

    ***

    ビッケシリーズ5冊目。
    ビッケの出す知恵は、誰も傷つけず(怪我くらいはするけれど)、倒した相手は改心する、というものです。
    そして当時の男性社会に対しても、男の人も女の人も同じで男の人だけ威張って良いとか会議に出て良いというのは変だよ、という疑問も呈しています。

  • ※ネタバレ注意!

    今回のビッケは、いくぶん「冗談抜き」のテイストです。
    3巻で悪政から救い出したブルガリアの人々を助けるため、城塞に援軍として入り込んだビッケをはじめとするフラーケの海賊たち。

    対するは、獰猛な「野蛮人」ブルドゥース人ども。

    しかし野蛮(ブルドゥース)人などと呼ばれてはいるものの、穴を掘って城壁をくぐろうとしたり、竹馬(!)で城壁を乗り越えようとしたり、果ては「木馬の大戦車」を使って城壁を破壊して侵入を試みたりと、敵はしたたかです。
    さあ、ビッケの知恵は彼らを撃退することができるのか。

    もう今回はまるまる一冊、最初から最後まで彼らとの知恵比べ。ガチ戦争です。
    個人的には、もうちょっと笑いがあっても良かったかな。
    前回のはその意味でも最高でした。
    もちろん今回も、とても面白いですけどね。

    話の流れを言ってしまうと、もちろんビッケはちゃんと大活躍して敵を追い払うのですが、どの作戦も今までのようにはあまり笑えません。水攻めだったり、転倒させたり、城壁を増やして敵の攻撃を封じたり偵察したりと、手に汗握る策略と策略のぶつかり合いです。

    僕は戦争の物語はあまり観ませんが、ロード・オブ・ザ・リングの映画の世界を思い出しました。
    ブルドゥース人たちも、竹馬ではなく「ハシゴ」を使えばよかったんじゃないかと思います。
    もちろんビッケはそれでも撃退するでしょうけど。

    ラストも大人のドラマです。獰猛で凶悪な敵の大将が、最後は沼に落ちて死にかけるのですが、ビッケの仲間たちが助けたことで改心し、以後は死ぬまで人々のために尽くすのです。

    今回特に実感したのですが、ビッケ・シリーズは「新しい神話」みたいな雰囲気がありますね。水道管とか「実況中継」とか、いろいろなものが実はビッケが世界史上で一番最初にやっていたのだ……という記述が多い。

    戦争に神話と、作者にはそういうものに対する志向があるのでしょうね。
    トロイの木馬も出てきましたし。

  • 小さな海賊ビッケの第5巻。

    ブルドゥース人に攻め込まれたブルガリア人を助けにいったビッケたちの大冒険。
    3巻でブルガリア人から名誉王の称号を受けていましたビッケ。暴君から街を救った感謝の証、街の人とビッケたちの友好の証の称号です。

    ビッケの冒険に出てきた悪人は、登場直後はとんでもない性格してるのだけど、必ず改心するところが良いですよ。ビッケの知恵でピンチを切り抜けて、悪役をぶっ潰してやっほぅ、では力自慢のバイキングと同じですからね。

    5巻のボスのブルレットなんて、とんでもない暴君だけど、改心後は聖人君子になりますからね。ちゃんと、過去の行いと向き合い続けることができているのが、また素晴らしい。
    黒歴史から逃げずに向き合うことができる人は、素晴らしいです。

    そういう人になりたかったなぁ。

  • 獰猛なブルドゥース人との籠城の戦い!お話はバイキングたちの絶望的形勢から始まります。でも大丈夫。ビッケの知恵の火花はちゃんと散ります。今回の敵はなかなかの強敵。失敗すれば次の策で攻めて来ます。地下トンネル、竹馬、ついには城塞こわし機!対抗するビッケのアイディアは愉快なものばかり。そしてそれらのアイディアの一番いいことは、懲らしめるだけにとどまり、決して誰も傷つけないところです。小さなビッケがもたらした大きな幸せと平和。こんな風に単純によい気持ちで人も国も接すれば、何事も平和に解決するんじゃないかなと思わせてくれます。

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