- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569616414
感想・レビュー・書評
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自分には難しい内容だったが源頼朝の生涯をポイントを絞った年代で論じられていて、面白かった。先読みした陰謀家ではなく、適宜最善手を目指した卓越した政治家といえる。
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源頼朝が挙兵してから奥州征伐までの約10年に的をしぼり、彼の行動の政治的な意味を考察する本。平家追討の戦いも、朝廷との外交交渉も、源義経らの代官に任せきりにして、自分自身はひたすら鎌倉に籠っていたことを、「天性の政治センスの良さ」と絶賛している。頼朝の後ろ盾である関東の御家人集団の利害関係が複雑で、鎌倉を離れたくても離れられない事情はあったにせよ、義経を使えるだけ使っておいて、用済みになったら切り捨てるあたりは、マキャベリが聞いたら手を叩いて喜びそうな政治手腕であることも確か。奥州征伐は、政権移行の総仕上げとしての「儀式」的な意味合いが強く、総大将として20万の大軍を率いて出陣することになるのだが、それを「私闘」として正当化させるための慎重な根回しも、彼の政治的手腕として見逃せないところである。(奥州征伐は、朝廷ではなく源家による征伐と位置づけることで、政権が実質的に移譲されたことを示威するための大がかりなパフォーマンスだったのである)
豊臣政権以降の徳川家康の動きと通じる点が多いことから、家康は吾妻鏡を読んで、頼朝のことを深く勉強したことが容易に想像できる。50代になっていた家康には、30代の時の頼朝の行動を学んで実践する能力があったし、それをやれるだけの環境も整っていたということなのだろう。