養老孟司の“逆さメガネ” (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569630830

作品紹介・あらすじ

「世の中おかしくなった」と誰もがいう。教育の荒廃、凶悪犯罪、環境破壊、金銭汚職…。ことあるごとに「誰かのせい」がはじまる。政治家が、役人が、教師が、そして会社が悪い。そうじゃない!あなた自身の見方・考え方がまちがっているのだ。「都市こそ進歩」「個性は心にある」「バリア・フリーの社会を」…。現代人のその価値観は、大きな錯覚である。本書では、「都市主義」「脳化社会」のゆがみを鋭く指摘。これまでの常識にしばられず、本質を見抜けるか。養老流の"逆さメガネ"を披露。

感想・レビュー・書評

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  • 自分には難解でいまひとつだった。
    ・自分が正しいと思ってもそれ自体が曲がっている。
    これに気付くこと。
    ・歴史は起こったことを評価する。⇒歴史は、起こらなかったことの連続。

  • 現実は人それぞれ。
    あなたの行動に影響するものが、あなたの現実だ。
    個性とは実は身体そのもの(心ではなく)。
    日常生活は何かが「起らないため」の努力で
    埋められている(かつそれは評価されない)。

    私の仕事「品質保証」もトラブルが起こらないように
    することがミッション。
    できて当たり前で評価小。地味。
    問題が起こると大変。
    けど、社会のために大事な仕事。

  • もっともなんだけど、どうしても偏屈(?)なイメージのある養老さんの本。
    しかして 聞き流して読み流しては 勿体無い本でした。

  • 養老さんが教育について語った本だそうです。
    自分が読んだところ、そうは思いませんでしたけど。

    ただ、教育のヒントになることや、世の中の見方について色々考えさせられる内容でした。
    他の著書でも色々似通った内容が書かれており、同じことの繰り返しか、と思う部分があるけれど、逆に養老さんの考え方がぶれていないんだな、しっかり考えているんだな、と感じました。
    見習いたいものです。

  • 知ることは変わること。
    意識について説得力のある言葉が続く。
    都市に住むことによって人間がゆがんできた、なるほど。

  • 思ったより気になる部分多し。教育において、根本となる部分の議論が欠けているというのは、共感。一体どういう人を育てるための教育なのか。それが明確でないのに、方法論は語れない。

  • 体験なき概念化は、利口なバカの始まり。情報を求めすぎるのも危険。

  • 「養老孟司の<逆さメガネ>」3

    著者 養老孟司
    出版 PHP新書

    p77より引用
    “あの頃、そういう風潮に乗った人たちは、
    反省してるんですかね。”

    解剖学者である著者による、
    世の中を視点を変えて見てみるための教育論を記した一冊。
    ヒゲボソゾウムシと百円玉から脳に対する入出力まで、
    著者の実体験から得られた考えが数多く書かれています。

    上記の引用は、
    90年代初めから半ば頃のオカルト流行についての一文。
    ここ最近のTV番組等を見ていても、
    まぁ反省などしていないんだろうなと思わざるを得ません。
    p39の後ろから3行目以降の記述を読むと、
    結局生きるためには辛抱強さが何よりも大切なんだなと思います。
    予測不能の状況を前にして、
    どんな結果が出るかわからずとも努力し、
    失敗しても辛抱し、
    なんとかかんとか切り抜けて行かなければならない。
    こうして文章にするだけならなんとも簡単なんですが・・・。
    著者のその他の著作で書かれる主張が、
    この本でも繰り返し書かれているので、
    ファンならばその考えを深めるには良い一冊です。

    ーーーーー

  • 2011/4/17読了。
    まえがきにもある通り、主張ではなく議論の種をまくとのことで、本の内容に何らかの結論が示されるわけではない。それでも、視野を広げるための材料になると感じた。

    ○歴史に書かれていることは起こった事件であるが、本来の歴史とは起こらなかったことの積み重ねであり、起こさないための努力の結晶である。だからこそ起きたことがニュースとして伝えられる。起こらなかったこと、予防という行為は情報化社会では全く評価されない。
    ○都市化を否定して残るのは田舎ではない。単純な二元論でしかものごとを語れないようにはなるな。
    ○心に個性なんてない。もし他人と全く違うことを考えていたら絶対に分かりあえないし、共感もできない。個性は身体にある。
    ・現実とは、その本人に「行動に影響を与えるもの」であるから、客観的で中立な現実は存在しえない。
    ・都市では、お金=現実となっているため、自然そのものには価値がない。
    ・こどもは自然的な存在である。論理だけでは片付かない。
    ・釈迦の四門出遊:4つの門でそれぞれ赤ん坊、老人、病人、死人に会う。これが即ち四苦を意味する。都市生活では四苦は分離されている。
    ・人間のインプットは五感でなされるが、アウトプットは「筋肉を動かす」以外にはない。両者をきちんと繋げることが知行合一の意である。
    ・変わらないのは情報だけ。人間は本来的には情報ではない。知るとは変わらない自分に積み重ねるものではなく、それによって自分を変えていくこと。
    ・"同じ"という言葉は、本来は"違う"ことをある分類に従って同一視する心の働きである。
    ・自分探しは、どこかに本当の自分がいるという前提条件が間違っている。自分は見つけるものではなく変えるもの。

  • 「死の壁」の方が読みやすい でも内容はやっぱりめからうろこ

  • ・現在は「ああすればこうなる」と思いすぎている社会。ああしてもこうならないのが自然。ああすればこうなるのは人間が作った「都市」だけ。日本はすべてが「都市」化されている。
    ・子供=自然だから、ああしてもこうならない。それがまちがいである、悪であるとされる社会だから子供が生きにくい。育ちにくい。そうしているのは大人、都市である。
    ・本当に個性が宿っているのは身体である。思想、心なんていうのはそんなにオリジナリティなんてないものである。だからこそ、他人に共感できる。身体=自然だけれど、心=人工なのである。

    そんなことがまるで都々逸のような、老人の繰り言のような調子で書かれています。
    少し前、オウム事件の頃に出版された本ですが、震災の少し前に読み終わっていて、いろいろ考えさせられました。

    まさに今、読む意義のある本だと思います。

  • これはこうだと思っていること、逆に考えてみようか。

    養老さんの主張は簡単なようで難しい。

  • もらったので読むことにした本。

    知行合一及び文武両道の本当の意味はインプットとアウトプットのらせんサイクルであると主張。

    脳による意識化こそ都市化である。
    これを主軸に様々な切り口で社会について言及している。

    まぁ納得する部分も多いのであるが、語り口などから、
    老人の愚痴を延々と聞かされたという気分になる。

    筆者も最初に述べているように、この本の目的は一つの結論を主張するのではなく、
    議論の種を提供しているだけとわかってはいても消化不良な感じ。

  • バカの壁で有名な養老孟司さんの教育論が書かれた本。

    物事を深く捉えていて、考え方がとても参考になりました。
    文章の中の単語が二項対立のなっていて、概念が捉えやすかった。

    ・現実とはなにか
    ⇒現実は行動に影響するもの=行動に影響がなかったら現実ではない
    ⇒人によって違う

    ・都会人はすべてをコントロールできると考えている
    ⇒ああすれば、こうなる思考
    ⇒手順を踏んでものごとをする経験がない
    ボタンひとつで、全て解決の生活

    ・起こったことしか評価されない
    ⇒変わらないように、起こらないようにしたことは、評価されない。何かを変化させたことが、歴史において大きく取り扱われる。

    以下学んだポイント

    もっと身体を使う
    ⇒脳へのinputは五感。outputは筋肉の運動

    よいことは人に知られないようにやる

    自分の本質は毎日変化している
    ⇒昨日の自分は情報でしかない

  • 世間の常識は傾いているのに、それに気づかないことがある。
    養老先生は時々、世間を「逆さメガネ」で見ることが必要だとして、そのための見方、考え方のヒントを提供している。

    反常識的教育論といった内容であり、随所に養老先生の脳理論あり。

    「都市化」「脳化」社会の歪みを鋭く指摘しながら、1つの見方で凝り固まってしまう危険性を指摘している。

  • 普段の考えの土台になっている常識自体が、ひっくり返ったおかしなものになっていることも
    ありますよってこと。それを「逆さメガネ」って呼んで、語ってる。

  • 久方ぶりに養老孟司氏の著作に触れたが独特の視点が非常に面白かった。
    他の著作も読んでみたい。
    どしどしユニークな考えを披露して頂きたい。

  • バカの壁から始まって、もう何冊目になりますかね?人間の体をよく知ると、こうゆう考え方が出来るようになります。新たな気付きに感謝。

  • 和風「FACTFULNESS」

    題名の通り、逆さめがねをかけた視点をたくさん学べた。筆者からすると、世間が逆さめがねで見てるだけで私が裸眼だとも言っている。確かにそうかも知れない。
    特に印象に残った内容を自分の解釈で

    ・空き地って空き地じゃなくない?木も鳥も虫もいるじゃん!
    ・現実はひとそれぞれ。公平とか真実とか無理に求めるな!
    ・「ああすればこうなる」ばっかり求めるな!教育は特にそういう風潮あるよね!
    ・身体を使わなくなってきている、核兵器発射もボタン1つだもんね!
    ・学問、読書をすること→自分が変わること
    ・起きたことばっか注目されるけど、努力の末起きなかったことも大事!
    ・説明できないこと→間違っているという風潮あるよね!

    特に、「ああすればこうなる」が全てじゃないことは頭の片隅に置いておこう。

  • 養老孟司の本は自分にとって革命的な発想を教えてくれるので、多少言い回しが面倒だったり倫理的、道徳的な難しい話になったりしても読み進めていたが、今回は特にその類の話が多く感じた。逆さメガネということで現代人が気付かない問題について批判をしていたのだが、結局それに対してどうすればいいのか、どうするべきだと考えているかという具体的な話が出てこないことが多かった。しかし、この本で終始言っていた「シュミレーションの効かない社会」「文武両道」については納得させられた。特に子どもの教育に関しては「あぁすればこうなる」が一番通用しないため、子どもではなく大人の対応を変えなければいけないと感じた。

  • バカの壁で有名な養老孟司さんが現在の教育のおかしさを語った本。
    結局言っている事はバカの壁と同じようなことなんだけど、それよりは読みやすかった。
    「ああすればこうなる」という、物事を単純化した考えに基づいて作られたものが都市(=人工)で、そのせいで自然(=子供、身体)を忘れているんだそうな。
    「身体感覚を忘れた日本人」って言う章が特に面白かった。そうか、知行合一・文武両道ってそういう意味だったのか…。

  • またまた養老先生の本。いったい何冊書くんだろう。でも何冊読んでもおもしろい。「バカの壁」とは少し違うスタンスで書かれている。本書は教育について書いたものだとまえがきに書かれている。しかし直接学校教育について書かれているわけではない。そのまわりのところから責めているという感じ。特におもしろかったところを取り上げます。個性について。個性を伸ばす教育と言うけど、個性とはいったい何だろう。身体は一人ひとりすべて違います。親の身体の一部を移植してもうまくつかない。脳も身体の一部だから、人それぞれ違います。つまり、個性とは身体そのもののことです。しかし、普通、心に個性があると考えているでしょう。人それぞれの考え方があると。ところがです、人それぞれ勝手なことばで考えていたのでは話が通じません。話が通じるということは、共通なものをもっているということです。もし本当に心に個性があるとして、他人がまったく理解できないことを考え、他人とはまったく違う感じ方をしていたら、それは病気ということになってしまうのでしょう。だから、身体は個性だけど、心は共通なのです。心の個性を考えるのはムダなのです。養老先生の本が個性的で誰にも理解されないとしたら、こんなには売れないのです。もう一度言います。身体には個性があります。足が速い子もいれば、楽器を上手に奏でる子もいる、頭の良い子もいる。それを皆同じにしようというのが学校教育です。そこには無理がある。一方で個性尊重の教育という。矛盾している。もう一つ言っておきたいことがあります。「ああすれば、こうなる」原因と結果が一対一に対応する。そう考えている人が多い。どうすれば成績が上がるんでしょう。答が一つに決まっていれば皆の成績が上がるはず。そうすれば順位は上がらない。人が生きていく中ではいろんな原因がからみあって、いろんな結果が出てしまう。それこそカオスです。ほんの少しのずれが、大きな違いをもたらす。予測不可能なのです。養老先生の話を聞いた後にこう質問する人がいるそうです。「それでは、どうすればいいのでしょう。」だから、「ああすれば、こうなる」とはいかないんだ。自分でいろいろ考えろ!言いたいけど言えないことをよくもまあこれだけ堂々と書いてくれるなあ、という1冊でした。

  • 著者の教育論。

    著者は、近代になって、意識にとって理解できるものだけが存在すると考える「脳化社会」への動きが加速化し、「自然」が見られなくなってしまったという観点に立っています。そこから、現代人が「自然」である子どもや身体をどのように扱えばよいのかわからなくなってしまっていると論じています。

    意識は、自分というものは変わることなく、ずっと「同じ私」だと考えますが、教育は意識を変えることを意味しています。著者は、すべてを自分の意識で理解できるという考え方から、「生成する自分」という発想をとりもどすことが、迂遠に見えても現在の教育が抱える問題を根本的に解決する道だと考えています。

  • 読むたびにはっとさせられる本。
    「身体は人生の元手、使おうと思えばもっと使えるのです」

  • 「常識は意識されずに変わります。だから老人は気がつかないで時代遅れになる。」

    中年や老人にとって、激しく移り変わる常識について行くことは、とても難しい。でも、ついて行けないまでも「何となく知っている」というぐらいには、しておきたいものです。そして、そう簡単に移り変わらない哲学や思想、心理学などについては、若者たちよりも精通しておきたいものですね。

    「知るということは、本質としての自分も変わるということです。学問をするということは、いわば目からウロコが落ちることです。つまり自分の見方が変わるわけです。人間が変わったら、前の自分は死んで、新しい自分が生まれているといってもいいのです。それを繰り返すのが学問です。」

    勉強すると、見えなかったことが見えるようになる。アリのように地面の表面を歩いていたのに、いつのまにか鳥になって大空に舞い上がり高いところから見下ろしているような感覚。今まで部分を拡大して見ることしかできなかったのに、全体を見渡すことができるようになる。これは大きな自信に繋がり、今まで情報不足で判断できなかったようなことも簡単に決めることができるようになる。

  • 精読

    メガネひっくり返して世界を眺めよと

  • 要は、一元論じゃだめだってこと。

  • 意識というメガネ。思考とは脳の中だけで入出力を回すこと。学習とは反復。

  • P146 身体は個性、心は共通

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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