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- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569692920
感想・レビュー・書評
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アメリカの共産主義への病的に神経質な怯えが、言葉通り、世紀の茶番を現実のものにしてしまった。その模様が克明に描かれている。
そしてその茶番劇が現在の核兵器が支配する世界に明確に繋がってしまった。
日本人は核兵器の残酷さを他のどの国家よりも知っている。広島・長崎の悲惨さを見聞きする機会は、当たり前だがどこの国家より多い。だから原爆が戦争を終わらすための正義の鉄槌ではなかったことを知っている。
他方、どういう理由で原爆が製造され、実際に日本に投下されるまでの過程を、原爆の悲惨さほど、知っているわけではない。
原爆投下の理由のひとつとして挙げられる、科学者が発見してしまった新しい力を使わずにはいらなかったという考え方は、全てではないが誤りが多い。正確と思われる歴史的背景は、やはり、知っておくべきだ。
本書はシリアスで込み入った話の連続だが、他方、ニースル=ボーアが核兵器の国際管理を求めてロスアラモスを訪問し、オッペンハイマーと会談する場面やオッペンハイマーがアインシュタインの誕生日に、クラシックの聴けるラジオをプレゼントする場面など、伝説の物理学者達の体温が伝わってくる交流の描写に触れると、何とも言えない優しい気分になれた。詳細をみるコメント0件をすべて表示