「地形」で読み解く世界史の謎 (PHP文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569763910

作品紹介・あらすじ

古代の農耕は、雨の多い熱帯ではなく、乾燥地域のオアシスで盛んだった。実は雨の多い地域では、雑草や樹木の成長が活発なため、大木を切って農地を開発し、作物だけを育成することは難しいのだ。反対に乾燥地域は、水さえ確保できれば、容易に作物を育てることができる。本書は、このような世界史における地政学的な謎を解くもの。学校では教えてくれない生の世界史がわかる!

感想・レビュー・書評

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  • 以前より、歴史と地理・地形を関連させている書籍に興味を持ち、読むようにしていますが、そんな中、たまたま見つけ、衝動買いした一冊です。
    タイトルのとおり、世界史の謎を地形の視点から解説していこうという内容です。扱うテーマがかなり長期間にわたっているため、独自の視点で世界史を一気に読み通すことができ、とても面白い。しかも、地形に加え、気象条件を細かく解説しているため、歴史を見る上での新たな見方を教えてもらいました。
    「世界の文化の流れを掴むには、まず13世紀までのオアシスの道の役割を理解せねばならない」と、冒頭で書いている通り、普段なかなか理解できず、断片的だった知識に新たな一石を投じる、非常に興味深い一冊でした。

    ▼本書で読者に伝えたいこと
    ①古い時代に世界の各地で、地形とそれにもとづく気候の違いによって、多用な文化が生み出された
    ②すべての民族がこれまで、系統の異なる文化と自己の持つ文化との交流を通じて自国の文化を発展させてきた。別の文化と触れあうことのなかった民族の文化は、停滞したままであった
    ▼世界の歴史は、古い時代から各地で多用な文化がつくられてきたことと、多用な文化がさまざまな形で交流を繰り返して文化を発展させてきたことを教えてくれる。
    ▼日本人も中国人も、他国のものを上手に学んで文化を発展させてきた。現在の私たちの豊かな生活は、長い人間の歴史の中で生きた多くの人びとの努力によってつくられてきたといってよい。

    <目次>
    第1章 なぜ乾燥地にあるシルクロードが東西交易路として栄えたのか
    第2章 なぜモンゴルは短期間でユーラシア大陸の大半を支配できたのか
    第3章 穀物がほとんど採れないギリシアで、なぜ古代文明が興ったのか
    第4章 イスラム教はなぜ、インドや東南アジアまで急速に広まったのか
    第5章 なぜインドの南方には有力な政権が生まれなかったのか
    第6章 なぜ中国王朝は南北に分かれることが多いのか
    第7章 なぜ辺境の四川が、前漢の劉邦や蜀の劉備の本拠地になったのか
    第8章 なぜ朝鮮半島には、七世紀末まで統一国家が生まれなかったのか
    第9章 森林に覆われた西ヨーロッパがなぜ十一世紀以後急速に発展したのか
    第10章 なぜ超高地のアンデスに文明が生まれたのか
    第11章 アメリカ西部が十九世紀に意欲的に開拓されたのはなぜか
    終章 地形からみえてくる世界史の流れ

  • 第一章 なぜ乾燥地にあるシルクロードが東西交易路として栄えたのか
     世界の文化を大きく発展させたオアシスの道、絹の道
     中央アジアの地形がつくった広大な乾燥地
     オアシスの道を辿る
     縄文時代と同時代に始まった中央アジアの農耕
     地下水路で水をひくオアシスの農耕
     オアシスから生まれた遊牧民
     遊牧民の社会と農耕民の社会は根本的に異なる
     農耕民と遊牧民の交流がオアシスの道の長距離の交易をつくり出した
    第二章 なぜモンゴルは短期間でユーラシア大陸の大半を支配できたのか
     遊牧国家に支配されたオアシスの道
     中国系勢力とギリシア系勢力のはじめての出会い
     中国系諸王朝と遊牧民族国家の興亡
     オアシスの道から日本に伝わったペルシア文化
     国際都市長安と日本
     イスラム勢力の東進
     モンゴル帝国のもとでオアシスの道の役割は終わる
    第三章 穀物がほとんど採れないギリシアで、なぜ古代文明が興ったのか
     西洋文化の起源はギリシアにある
     古代日本に伝わったギリシア文化
     ギリシア文化を生んだ地中海の地形、気候
     地中海の交易の始まり
     ギリシア全盛への道
     ギリシア哲学の誕生
     ギリシア衰退後の地中海社会
    第四章 イスラム教はなぜ、インドや東南アジアまで急速に広まったのか
     中近東の広大な乾燥地
     中近東の地形と自然
     中近東の自然とイスラム教
     文化の結節点としてのイスラム教の誕生
     イスラム帝国の誕生
     イスラム教が育てた文化
    第五章 なぜインドの南方には有力な政権が生まれなかったのか
     謎のインダス文明
     インドの地形と気候
     アーリア人の南下と仏教の誕生
     北インド統一への動き
     インドの古典文化とイスラム化
    第六章 なぜ中国王朝は南北に分かれることが多いのか
     中国民族がつくった東アジアの文化
     中国の多様な地形と気候
     黄河文明と長江文明が別々の地でつくられた
     中国民族の南下と後世に理想の世とされた周王朝の誕生
     江南の原アジア人の王朝の誕生
     秦の統一が原アジア人の王朝を滅ぼした
     江南という土地柄
    第七章 なぜ辺境の四川が、前漢の劉邦や蜀の劉備の本拠地になったのか
     山の中の秘境四川
     四川省の地形と気候
     四川文化の起源
     四川を支配した秦の始皇帝
     短期間で滅んだ秦朝
     四川を手放した項羽の失敗
     前漢朝の繁栄
     孔明の天下三分の計
     大きな失策を犯した劉備
     成らなかった天下三分の計
    第八章 なぜ朝鮮半島には、七世紀末まで統一国家が生まれなかったのか
     新羅の統一より前には三つに分かれていた朝鮮半島
     主要な平原が二つある朝鮮半島の地形
     日本に似た朝鮮半島南端部の気候
     古代の朝鮮半島南部にいた人びと
     朝鮮半島につくられた中国人の王朝
     朝鮮三国の抗争から新羅の統一へ
    第九章 森林に覆われた西ヨーロッパがなぜ十一世紀以降急速に発展したのか
     樹海に覆われた牧畜の国であった中世前半の西ヨーロッパ
     西ヨーロッパ世界の範囲とは?
     西ヨーロッパの地形と気候
     日本人が見たパリ
     西ヨーロッパの大開墾の時代
     ヨーロッパの地位を一挙に高めたルネサンス
     民族国家の成立とヨーロッパ諸国の海外発展
    第一〇章 なぜ超高地のアンデスに文明が生まれたのか
     ラテンアメリカの多様性
     メソアメリカ文明の芽生え
     マヤ文明の誕生
     交易で成長したインカ帝国
    第一一章 アメリカ西部が十九世紀に意欲的に開拓されたのはなぜか
     ヨーロッパからの自立を求めた北アメリカの人びと
     アメリカの地形と気候
     アメリカが重んじた「辺境の精神」
     西方に移動していった辺境
     ゴールドラッシュによる西部の発展
     無法者の時代から辺境の消滅へ
     アメリカのめざましい発展
    終章 地形からみえてくる世界史の流れ
     交通の障害が生んだ多様な文化
     西の文化の誕生
     ギリシア・ローマとイスラム帝国
     中国からみた東西交流
     ルネサンスと近代科学の誕生
     歴史をつくる力とは?

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著者プロフィール

1950年、山口県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。同大大学院博士課程修了。文学博士。元明治学院大学教授。専攻は日本古代史、歴史哲学。比較文化的視点を用いた幅広い観点から日本の思想・文化の研究に取り組んでいる。著書に『律令太政官制の研究』『日本古代国家と律令制』(ともに吉川弘文館)など専門書のほか、『歴史書「古事記」全訳』『古事記・日本書紀を知る事典』(ともに東京堂出版)、『古事記と日本書紀 どうして違うのか』(河出書房新社)など多数。

「2022年 『古代史入門事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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