睦月童(むつきわらし) (PHP文芸文庫)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569768700

作品紹介・あらすじ

「人の罪を映す」目を持った少女と、失敗続きの商家の跡取り息子が、江戸で起こる事件を解決していくが……。感動の時代ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な目を持った少女と、彼女によって改心させられた酒問屋の跡取り息子が繰り広げる時代小説とファンタジーとの融合小説。
    ほのぼの系で推移するかと思いきや、後半は彼女の出生地での哀しい顛末を迎える。
    睦月神がいるというその地は、不老不死の里?!
    そこでの里長の言葉に、同感する女性もいるのでは。
    「女子が何故、美しくあらんとするか。なぜ老いを恐れ、若くあらんとするかーそれはな、男が絶えず、若く美しい女子を求めているからよ」
    「老いという誰もが直面する現実は、女から美を遠ざけ、子を産むという役目すら奪う。女としての価値を失ったとたん、男は見向きもしなくなる。女は誰しも、その不安から逃れることができない」

  • 睦月童(むつきわらし)

    著者 西條奈加
    PHP研究所
    2015年3月10日発行

    江戸時代のファンタジー小説。
    睦月童とは、座敷童のことらしい。

    長編小説だが、7話からなっていて、4話までは一話完結的な展開で、ミステリー小説。後半は、ファンタジー的な展開と締めくくり。
    江戸・日本橋の酒問屋の主人が、岩手・盛岡郊外の山里から1人の少女を預かってきた。1年間、預かるという。七つぐらいに見えるイオという少女。
    東北弁の素朴なかわいらしい子。しかし、彼女を見ていきなり手代の一人が腰を抜かす。彼女の目が金色に光っているという。そして、店の金3両を着服したことを白状する。
    次に金色の目に腰を抜かしたのが主人の息子。よくない仲間と三人でつるみ、夜遊び。ある時、湯島のおもちゃやの老主人ともめて、復讐しようと、当時、周辺を恐怖に巻き込んでいた強盗団のふりをしてその店に盗みに入って金を盗んだ。

    やましいことがある人間だけに、イオの目が恐ろしい金色に見える。イオがいうには、見る人の心を映す鏡なのだという。
    息子は、反省し、その店の手伝いをしてお詫びをする。
    時間とともに、老主人も心を開いて許してゆく。
    ここまでが1話。ミステリー仕立てで、最後の締めくくりがほのぼのととてもうまい展開。

    江戸平民の物語は、おもしろいものが多い。侍もの、捕物帖とはひと味違った癒しの世界がある。この小説も、そういう意味で抜群、とてもおもしろい。
    2話は、夜鷹の話。幼いイオに夜鷹の働く姿なの見せたくないと配慮しつつ、夜鷹を恐怖で襲うひとだま話の真相追及をするが、イオがその不思議な力で解決の糸口を見つける。
    これも、病気の亭主の薬代を稼ぐために夜鷹に身をやつした女に、ある男がほれて、夜鷹をやめさせようと仕組んだことだとわかる。やっぱり、ほのぼの話。
    しかし、イオの目が金色に見えるのは、単純にやましいことをしている人間ではなく、やましいことをしている自分を心の中で責めている、良心を持った人間であることが分かってくる。根っからの悪は、イオの目を見ても動じない。

    5話から、様相は変わってくる。
    もと遊び人の酒問屋の息子が、イオをつれて、イオの里に行くという展開になる。そこには、地下で暮らす女性たちが。子供を産むと同時に死ぬが、産まなければ不老不死の女性たちばかり。それを、ある武士が絶滅させようと目論む。
    理由は、人間が行ってきた環境破壊に起因する。

    前半の話は抜群におもしろい。短編的。
    後半の展開は、長編的。意味は深いが、前半と趣が変わりすぎて少ししんどいかもしれない。

    ただし、この西條奈加という作家、非常に注目すべき人。

  • 異能を持つ睦月童が江戸で起きた事件を解決する人情ファンタジーかと思いきや、後半は予想外の壮大な展開に一気読みでした。
    最後の締め方が難しそうな内容なのに、流石は西條さんという絶妙な塩梅です。
    こういった話はやっぱり東北地方が似合う。
    柳田國男氏の世界を味わいに一度は訪れてみたいです。

  • ジブリ映画の原作になりそうなお話だった。筆者の作品は読んでいるとどれも、いつまでもずっと浸っていたいお風呂に入っているような気分になる。

  • 江戸の人情物。と思いきや、和製ファンタジー要素もあって、あっという間に読んでしまいました。それだけに、しっかり終わってほしかったな。最初の方のエピソードが、愛し合う男女のエピソードが多かったのに、女性は若く美しくないと意味がないという価値観の人が多いというような話しで終わってしまったのも残念に感じた。

  • 悪事を働き、やましいことがあれば、その目を見ると金色に光るという座敷童の少女イオ。時代物、ミステリー、ファンタジー、家族小説の要素を併せ持つ。

  • 異能持ちのイオと央介の人情+(心持ちダーク)ファンタジー物語。
    央介とイオの触れ合いや人との関わりの優しい話で進むのかと思いきや(そのままでも良かったけど)、徐々に睦月の里の異様さと秘密が明らかに。
    イオと央介の兄妹感が愛しいからこそ、あのラストは胸が詰まる。

  • #読了 人の罪を映す瞳をもった少女と、その少女によって罪を暴かれて人生再スタートをきった青年のお話。舞台は江戸で、二人が身の回りの謎を解いていくお話かと思いきや、後半は少女のルーツにまつわる壮大なファンタジーが繰り広げられてびっくりした。
    座敷童の解釈とか里の設定とかは面白かったんだけど、前半と後半のギャップの大きさと唐突さに私は残念ながらついていけず……もう少しゆっくり、二人の交流の話が読みたかったなぁ。

  • 独創性とスピード感もあり楽しく読めた。作者の鋭い感性を感じた。イオと応助の掛け合いも楽しく読めたが前半のイオの力が活躍するシ―ンがもっとあっても良かったと思う。続編が出て欲しい作品だった。

  • 2022.07.04

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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