桜風堂ものがたり(下) (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569768816

作品紹介・あらすじ

田舎町の書店で、一人の青年が起こした心温まる奇跡を描き、全国の書店員から絶賛された本屋大賞ノミネート作。待望の文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 下巻では、母を早くに亡くし、父と姉をも事故で失った、一整の天涯孤独な生立ちが語られます。
    そして桜の満開の季節に桜風堂にやってきた一整。
    美しい桜野町の桜風堂が見えるような気がしました。
    そして、入院中の元店主から桜風堂を引き継ぐ一整。

    一方、銀河堂書店では苑絵が『四月の魚』の帯の美しい絵を描いたり、百貨店の正面玄関のテナントで書店の宣伝をしたりと皆が去っていった一整の分も『四月の魚』を売ろうと頑張っています。

    そしてまた、一整の生立ちと『四月の魚』を書いた作家が関わっていて、今、一整もその本を売ろうとしているのはなんという偶然の運命だろうと思いました。

    そして最後は苑絵の母の友人の女優、鳴海と『四月の魚』の作家との再会によってとても優しいこの物語は、幕を閉じます。


    話しは変わりますが、私はビブリオミステリーが大好きで、今までに『金曜日の本屋さん』のシリーズや『ビブリア堂古書堂の事件手帖』のシリーズは全巻、読みました。この作品は書店を舞台にしたお話でも、そういったビブリオミステリー系ではなく、実際の書店のルポに近い小説ではないかと思います。
    私も高校生の時に通っていた盛岡市の書店『さわや書店』についての本の『まちの本屋』田口幹人著・などに近いかんじを受けました。(作者あとがきでは『傷だらけの店長』とおっしゃられていますが、未読です)


    ビブリオミステリーと本屋さんが大好きな私ですので、こういう書店愛に溢れた作品はとても素敵だなと思いました。
    今、コロナ禍で、外出が減り本は私もAmazonで買うことが多くなりました。以前のように安心して書店にも足を運び、好きな本を手に取って心ゆくまで選んでみたいと切に思いました。

  • 優しく奇跡のような物語。なんて温かいんだろう。
    作家、編集者、書店員など。読者の手に渡るまでどれほど多くの人が携わってきたのか。
    一冊の本にかけられた情熱。込められた願い。一冊の重みを感じた。
    本が大好きな人たちの強い想いが引き起こした奇跡。
    本が好きでよかったと思った。そして本がますます好きになった。
    そして、本の仕事に携わる方たちへ感謝の気持ちでいっぱいになった。
    一冊一冊、大切に読んでいきたいな。
    あと書店での購入も。大好きな本屋さんを自分のできる範囲で応援していこうと思った。

  • ありきたりな感想ですが、感動しました。

    時代が進むに連れて廃れてしまう業界、業種は残念ながら現実であり、この先も良くいえば『新陳代謝』、悪く言えば『淘汰』されていく未来。
    そんな中でも多くの人に知って欲しい。埋もれて欲しくない。忘れないでと訴えかけたい何かがあり、本作はとある『本』がその題材でした。

    その『本』のために多くの人が自分たちに出来ることを諦めずにやり遂げ、永く愛される『本』へと育ててくれた。その想いに胸を打たれました。

    書店と百貨店の人達の想いに、著者と女優の絆に、書店員の勇気に、何度かウルッとしました。

  • 埋もれていた名作を見つけ出し、光を当てる才能があると言われている一整には、どうしても売りたいと思っている本がありました。
    この物語には、たった一つの過ちを一方的に責めるような悲しい人は、一人として出てきません。
    一整を取り巻くすべての人たちが、奇跡の渦を巻き起こすように、どんどん前へと進んでいきます。
    感謝と謝罪の応酬のように。
    生きていれば誰でも、あの時ああすればよかった、こうすればよかったと後悔することばかりなのですが、「ありがとう」と「ごめんなさい」の気持ちがあれば、それが人と人とを優しさや思いやりで繋ぐ潤滑油のような役割を果たすのだと思いました。
    私もこの本を読んで、生きる勇気をもらえたような気がします。

    • m.cafeさん
      さてさてさん。
      「星をつなぐ手」読みかけております。
      このGWは、桜風堂ものがたりに染まりそうです♪
      遅読の私がこんなに夢中になってしまうな...
      さてさてさん。
      「星をつなぐ手」読みかけております。
      このGWは、桜風堂ものがたりに染まりそうです♪
      遅読の私がこんなに夢中になってしまうなんて、やっぱりこれはいい作品なんですね。

      江國香織さんは、私が育児後どハマりした作家さんです。
      何をおすすめしようかな?
      たくさんありすぎて迷います。小説に限らず、エッセイも童話のようなものもあるし。
      「流しのしたの骨」「神さまのボート」あたりは、優しい感じがして好きです。
      2021/05/03
    • さてさてさん
      m.cafeさん、そうですか。「星をつなぐ手」読み始められたんですね。正直、間隔を空けてしまって後悔しているのでGWに染まられるのがいいです...
      m.cafeさん、そうですか。「星をつなぐ手」読み始められたんですね。正直、間隔を空けてしまって後悔しているのでGWに染まられるのがいいですね。美味しいものは後回しにという癖があるのですが、私もとっとといただこうと思います。
      江國さんもありがとうございます。お勧めいただいた作品、メモメモさせていただきますね。江國さんは一年以上空いているので優先的に読みたいと思います。優しい感じというのがいいです。そのうちレビューをアップしますが、湊さんの超重いのを読んで、グッタリとしてしまっていまして、優しい世界で癒されたいです。
      ありがとうございます!
      2021/05/04
    • m.cafeさん
      さてさてさん。
      ふだん人に本を薦めたりしないのに、なぜか手が勝手に動いてしまって…あとで恥ずかしくなってしまいましたが、気に入ってくださると...
      さてさてさん。
      ふだん人に本を薦めたりしないのに、なぜか手が勝手に動いてしまって…あとで恥ずかしくなってしまいましたが、気に入ってくださると嬉しいです。

      私もこれから未読の作家さんにどんどん挑戦して視野を広げたいと思ってます。
      お互い読書生活大いに楽しみましょうね。
      それでは、また。
      2021/05/04
  • 下巻では悲しいことが起こらなくて良かった。
    悪い癖で、幸せが続いてると不安になってしまうので、ハラハラしながら読んだ。
    人を思いやれる優しい人達の話で、特に女優さんの気持ちを話すシーンでは少しジンワリしてしまった。
    続きもあるので読もうと思う。

    • あじょ子さん
      マメムさん

      コメントありがとうございます★
      読み終わってしまいました!
      少し間を空けてから続編を読もうか、すぐに読もうか悩んでいます!笑
      マメムさん

      コメントありがとうございます★
      読み終わってしまいました!
      少し間を空けてから続編を読もうか、すぐに読もうか悩んでいます!笑
      2023/10/31
    • マメムさん
      あじょ子さん、お返事ありがとうございます。
      私は数ヶ月経ってから続編の存在を知って読みましたが、懐かしさを感じながら読むのも良いかと^_^
      あじょ子さん、お返事ありがとうございます。
      私は数ヶ月経ってから続編の存在を知って読みましたが、懐かしさを感じながら読むのも良いかと^_^
      2023/10/31
    • あじょ子さん
      マメムさん

      確かに!
      内容は忘れそうにないので、楽しみをとっておくのも良いですよね♪
      マメムさん

      確かに!
      内容は忘れそうにないので、楽しみをとっておくのも良いですよね♪
      2023/10/31
  • すっかり自分が一整になってしまい、本当のできごとのように読んでしまった。
    周りの皆が自分の背中を押してくれる。
    見返りなどないのに優しく協力してくれる。
    船長とアリスもそばで見守ってくれている。

    苑絵がめいっぱいの思いを込めて、一生懸命POPの絵を描く場面は特にグッときた。

    一人ひとりの出来る事はちっぽけでも、それが沢山集まると不可能と思えたことが可能になる。
    とてもいい気分にさせてくれた物語でした!

  • 桜風堂の店主から店を頼まれた一整は、そこで居場所を見つける。そして、銀河堂書店に残った書店員たちや、さらには銀河堂書店が入っている百貨店までの広報部までが一整が世に出てほしいと望んでいた小説、"四月の魚"を売り出すため、それぞれに奔走する。

    そして、多くの人の気持ちが通じたかのように、"四月の魚"は好調に売れ、著者自ら、一整にお礼を言うために桜風堂を訪れる。
    あまりにうまく行きすぎながら、それぞれが痛みを伴う過去を持つ登場人物たちが、誰かのためを思い努力することで自分も相手も癒されていく、暖かいストーリー。

    電車内で読んでいると、涙が溢れてきて困りました。

  • 最高!

    人の優しさ、思いやりが重なって、奇跡に繋がっている心温まるお話でした。

    書店員さん同士の繋がりで、1冊の本をみんなで売っていこうと帯やPOPを手作りしたり、シェアしたり、素晴らしい世界だなと思いました。
    今までは「POPがついてる」くらいにしか思っていなかったけど、この本を読んで書店員さんの「この本を売りたい」という思いが詰まったものなのだと知り、今後は書店員さんたちの気持ちをもっと感じてこようと思いました。

    この本に出会えて良かった。

  • 人は悲しい過去と決別し前に進めるようになるには本によって勇気づけられ本が味方になって歩いていけるのかもしれない。
    何気に行っている本屋さんですが本をより知ってもらうためのpop作成などもう本屋さんのすごい努力や本を売りたい、世の中に出したいという愛情が詰まっていて、明日も本屋さんに行ってみようと思いました。
    人の温かい気持ち、百貨の魔法を読んだ時も感じましたが、こちらの本でもその温かさに泣けました。

  • 数ページ前を読んでいる時に「生きるってこういうことだな」と思っていたら、なるるの「わたしに命を生きることを教えてくださってありがとうございます。」という言葉がでてきて、これがこの作品のテーマなのではないかと思いました。
    その後の怒涛の展開は感動で目に涙がにじむことも多く、病院の待合室で読んでいた時には、少し困りました。
    本屋さんが好きで、学生時代からよく通っていた私としては、上下巻を通して、書店員さんの仕事内容や情熱を知ることができたのもよかったです。今後、本屋に行くときに、店舗ごとの本の展開やPOPなど、これまであまり気にかけていなかったことに注目してみるのも楽しそうだと思います。
    また、長崎で育った私には、あとがきに出てきたメトロ書店はなじみがあり、その書店のKさんもおそらく私の知り合いと交流のある人だと思うので、この著者とのゆるいつながりを感じます。

    • さてさてさん
      ponkobooksさん、こんにちは!
      この作品、私は単行本で読みました。そして、村山早紀さんのファンタジー世界にハマる機会となったとても...
      ponkobooksさん、こんにちは!
      この作品、私は単行本で読みました。そして、村山早紀さんのファンタジー世界にハマる機会となったとても大切な作品です。風早の街の雰囲気感豊かな物語世界が導いてくれるあたたかい気持ち。なんとも言い表せない幸せな読後。今もって大好きな作品です。お書きになられているように書店ごとのPOPの工夫などにも興味を持たせていただいた作品でした。あの時の感動を思い出させていただきありがとうございました。
      2021/11/16
    • ponkobooksさん
      さてさてさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。
      さてさてさんの感動を思い出すきっかけになったと知り、とても嬉しいです。私は、村山...
      さてさてさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。
      さてさてさんの感動を思い出すきっかけになったと知り、とても嬉しいです。私は、村山早紀さんの作品は百貨の魔法に続いて2作品目です。これから風早を舞台にした作品を読んでいきたいと思います。
      2021/11/17
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著者プロフィール

1963年長崎県生まれ。『ちいさいえりちゃん』で毎日童話新人賞最優秀賞、第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。著書に『シェーラ姫の冒険』(童心社)、『コンビニたそがれ堂』『百貨の魔法』(以上、ポプラ社)、『アカネヒメ物語』『花咲家の人々』『竜宮ホテル』(以上、徳間書店)、『桜風堂ものがたり』『星をつなぐ手』『かなりや荘浪漫』(以上、PHP研究所)、げみ氏との共著に『春の旅人』『トロイメライ』(以上、立東舎)、エッセイ『心にいつも猫をかかえて』(エクスナレッジ)などがある。

「2022年 『魔女たちは眠りを守る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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