成長戦略のまやかし (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569814711

作品紹介・あらすじ

アベノミクスの成長戦略は間違っている! 『リフレはヤバい』で論争を巻き起こした俊英が日本経済の構造を解析。復活の処方箋はこれだ。

感想・レビュー・書評

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  • 小幡氏は反リフレ派の代表、アベノミクス3本の矢をばさばさ切り捨てる。賛成する人からみれば良く言ったとなり、反対派からはぼろくそに言われる。そう言う本だ。

    批判の向け先は例えば補助金や減税などで特定の企業を助ける事が上げられている。自動車などの製造業は消費立地に移ってきており、需要がない所に設備投資減税で誘致をするのは政府支出としては筋が悪いというのが論旨だ。エコポイントなどの補助金も同様で本来構造改革を進めるべき企業を延命させてしまった。

    円安は雇用を増やさないと言うがこれはどうだろう。逆に円高で企業の業績が悪化すると雇用を減らす企業が増える事は容易に想像がつく。貿易赤字の状態では円安はコストプッシュ型インフレの原因になるので経済にマイナスと言うのはわかるのだが、これもインフレ歓迎のリフレ派からすると同じものの解釈が180度違う。黒田日銀の異次元な金融緩和で国債金利が上昇したから失敗だと言うのも似たような感じがする。リフレ派は同じ現象を成功の証拠と上げるのではないか?

    金融緩和はインフレを起こす事ができないというのもはバブル期の話を思えば分からなくもない。株や不動産の資産インフレがおこり実体経済は良くならないと言う説だろう。一方のリフレ派は同じ現象に対し資産効果が実体経済に影響を与え景気が良くなると言う。これも程度問題のような気がするが。資産インフレはバブルのリスクを高めるので資産効果のメリットに見合ってるかどうかが問題だと思うが答えが出るのはだいぶ先かな。

    個人的に面白いと思ったのは東京が魅力的なのは地方の多様性が集積しているからじゃないかと言う所。東京だけを発展させようとして地方の活力が落ちると結局東京が無個性化するんじゃないかとの意見です。たしかに地方がミニ東京化するのはあまり面白くない。

    結局、成長戦略は人への投資だというのがほぼ唯一の提案なのだが、ではどうやって新しい産業を作るようなイノベーションが起こせるかと言うと小幡氏もわからないというのが答えなのでちょっと尻切れとんぼになってしまっている。

  • この20年の間に日本経済から失われたのは、新しいものを生み出す力だ。
    人が力をつけないといけない。新しい知識やイノベーションを生み出す力を持った人がその社会に溢れていることが、持続的経済成長の唯一の道なのだ。
    人の成長なくして経済の成長なし。

    まず人を育てよう。
    第一に、自己投資だ。基礎的な能力は、学校教育や職業訓練などで高めることが必要だ。
    第二に、実践的な人的資本への投資だ。勉強にならない仕事、自分が成長しない仕事では意味がない。

    政策としては、初等教育の充実が最優先だ。学校強化する。手を軸に、基礎教育、実践的職業訓練の基礎となる教育、この2つを徹底的強化する。
    具体的には各都道府県に高等専門学校を作ることだ。

  •  やたら断定口調である割には論理的な説明がほとんどなく、まったく説得力のない文章である。例えば特区についてその定義を明確にしないので、読者と認識がずれたまま議論が進んでいく。必ずしも特区=東京優遇ではないはずだ。また円安は輸出メーカーに値下げして増産する誘因を与えるから、明らかにプラスに作用する。著者は完成品以外のメーカーの経営事情をご存じない。材料・部品こそが日本の強みなのに。これ以外にも事実誤認、根拠を明示しない断定など数多く、勢いだけの机上の空論の印象が拭えない。
     ただ著者の思想に通底する「箱より人」の発想は素晴らしい。大企業の設備投資を助成するくらいなら、教育に投資すべきというのは正しい政策だ。ドイツのように大学と高等職業教育の2本立てにする提言もやってみる価値があるだろう。個人的には高等教育の学費を大幅に下げるか、学生に直接給付して家庭の経済状況に関係なく教育を受けられるようにするのが第一歩だと思う。
     そういう政策は支配者層の地位を危うくするから、今後も実現しそうにないけれども。

  • 今や古いがタイトルに惹かれて図書館で借りて読む。
    「XXXは誤りである。」という断定口調が鼻に付くが、四年後の今読むとそれなりに当たっているような。。
    「企業は箱に過ぎない」という主張は、民間企業に勤めたことのない元官僚、学者の弁、という気はするが、理路整然とした論調は割と好きな方だ。

  • 言わんとしていることはよく分かるのだが、納得感が薄い。
    敢えて極論しているという面もあるだろうし、そもそも本というのは著者の主張をするものではあるけれど、なんか目につく・・・
    正しいことが書かれている気もするのだが。

  • どう成長戦略を描くか?

    →日本には、設備ではなく人に投資すべき
    企業は箱にすぎない

  • 260606読了。
    状況変化が速く激しい現在では将来予測はほぼ不可能。未来が読めない以上、政府が定める成長戦略は根本的に意味がない。企業の活動をコントロールすることはできない。 人材の育成こそが100年の大計。企業の成長とは人によるものである。
    概要は以上のこと。言ってる意味は分かるが、そんなに極論でいいのかな?という気になる。

  • アベノミクス政策を批判し、経済成長には「人」が大事と唱える本。成長を支える人材になりたいもんです。

  • 現在行われているアベノミクスについての批判を述べている一冊。
    社会資本整備への資産の投入や、一時的な規制緩和が長期的に負の遺産しか生み出さないことを的確に述べている。
    企業は「箱」であり、その中の人材に投資するべきだという主張に共感を覚えます。

  • アベノミクスの本丸といわれる成長戦略では日本経済は成長できないと、きっぱりと論破していく、その論理構成が小気味よい。
    例えば、
    「規制緩和とは、規制が残ることである」
    「ホンダはこれから需要が伸びない日本で設備投資の予定はない」
    「余ったお金はモノにむかうのではなく、資産に向かう」
    「円安は日本経済からの所得流失」
    「経済がよくなれば株価は上がるが、逆は必ずしも成り立たない」等、納得の指摘が続く。
    すべての基本は人にあるという結論は否定しないが、その部分にもう一歩具体性がないところが残念。

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著者プロフィール

小幡 績(オバタ セキ)
慶應義塾大学准教授
1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省、1999年退職。2000年IMFサマーインターン。2001年~03年一橋大学経済研究所専任講師。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應義塾大学ビジネス・スクール)准教授。専門は行動ファイナンス。2010年~14年まで年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)運用委員。主な著書に『ネット株の心理学』(毎日コミュニケーションズ)、『リフレはヤバい』(ディスカヴァー携書)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『成長戦略のまやかし』(PHP新書)、『ハイブリッド・バブル』(ダイヤモンド社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(東洋経済新報社)がある。


「2020年 『アフターバブル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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