ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 (PHP新書)
- PHP研究所 (2019年11月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569845524
作品紹介・あらすじ
いまこそ人類は17世紀の思想に立ち返れ! 日本人を取り巻く「野蛮な東アジア」のなかで戦争と平和の均衡をどう保ち、生き延びるか。
感想・レビュー・書評
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最後の宗教戦争である三十年戦争の時に、ウェストファリア公国の2つの都市、ミュンスターとオスナブリュックで講和会議が開かれた。それぞれの地で結ばれた、ミュンスター講和条約とオスナブリュック講和条約という、1648年に締結された2つの条約を合わせたものがウェストファリア条約である
395年 ローマ帝国は東西に分裂。腐敗した西を捨て、東だけでも立て直そうとした。西ローマ帝国は467年に滅びますが、東ローマ帝国は1453ねんまで約千年の延命に成功。
東ローマ帝国は別名、ギリシャ帝国。首都をコンスタンティノープルに遷し、ローマ教会の影響を排除
ローマ・カトリック教会が贖宥状(しょくゆうじょう)というデタラメをやっていると批判したのが、プラハ大学教授で聖職者のヤン・フス
バチカンから破門されたルターを保護したのが、ザクセン選帝侯(ローマ皇帝を選ぶ権利を有する貴族で、わずか7名しかいない)
ルターを批判したのはツヴングリ、カルバン派
3つのカルバン派の特徴は、金融大国(スイス、オランダ、アメリカ)なこと
カルバン派 禁欲的勤勉に働いて金を儲ければ、終末の日に神様に天国に連れて行ってもらえる
マックス・ウェーバー プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 プロテスタントの国で資本主義が始まった
ヘンリー八世が離婚したいという勝手な理由からリーマカトリックと縁を切り、1534にイングランド国教会が成立 中身はカトリックで有りながら、バチカンに逆らったのでプロテスタント扱い
フランスのカルバン派はユグノーと呼ばれる
ハプスブルクの神聖ローマ皇帝フェルナンド三世はドイツ300諸侯のウェストファリア公国にある2つの都市、オスナブリュックにはプロテスタントを、ミュンスターにはカトリックをそれぞれ分けて呼んだ
天皇、教皇、国王は皆対等。序列は即位順
ウェストファリア会議の時に至って、軍使は殺さないでおこうという約束が成立
ウェストファリア条約の要諦は、宗教的寛容です
教科書的なウェストファリア条約の説明では3つのことが確率
宗教に対する世俗権力の独立(政教分離)
帝国からの領邦主権国家の独立
主権国家の対等
大日本帝国が欧州公法を国際法にした
国際連盟で各国の調停を日本がした
1907から、大英帝国以下列国が日本と大使を交換した詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
倉山満の思想が詰め込まれている
0点か100点の二択だけ
戦争は王様のルールある決闘
暗黒の中世が無い日本
この数年、目から鱗が大量剥脱中
何より、世界史の数々の事件の意味を
知ることで歴史が楽しくなってきました -
<目次>
はじめに 日本人の全人類に対する罪
第1章偉大な天才グロティウス、その悲劇の生涯
第2章なぜ宗教戦争は悲惨な殺し合いになるのか
第3章なぜ戦争と平和の方は必要とされたのか
第4章ウエストファリア体制の現実
第5章日本人の世界史的使命
おわりに
関連年表
フーゴー・グロティウス(1583-1645)
オランダあたり(当時国の概念なし)出身
提唱したウエストファリア体制
①心では何を考えてもいい
②人を殺してはいけない
③お互いの存在を認めあう -
ちょっと乱暴で偏った意見ではあるが、割引いて読んだとしても、自分が知らなかった新しい視点で、欧米の歴史を知る事が出来た。
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『#ウェストファリア体制』
ほぼ日書評 Day435
著者の「天皇本」はこれまでにも紹介して来たが、「世界史」系は初めて読んだ。
'ウィルソン=キチガイ' など、例によって極論も多いが、無味乾燥な暗記科目とされる「歴史」という教科をこんなふうに教えたら、何百倍も興味が湧くのにな…と考えさせられる。
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ウェストファリア体制の意味が良くわかる。ちょっと乱暴だけど分かりやすい語り口で説明がなされている。
グロティウスがやりたかったことは、殺人が当然だった世界、すなわち、異教徒や異宗派は人でないから殺して良いという世界から、暴力の独占主体を国家(王様)にして、貴族や教会から暴力を取り上げて、その同格の国家間での必要悪としての戦争というものを発明したというのが倉山先生の説明するウェストファリア体制。
その一員たるには、自ら身を守る力が必要であり、力で対抗できない近代の非欧州圏には適用のないものだったが、大日本帝国がそれをグローバルなものにしたのにも関わらず、自らの滅亡によって弱肉強食の世界を生み出してしまった責任があると喝破。
国連憲章によって戦争が違法化されたが、それによって管理された戦いというのが無くなり、紛争やテロという名の前近代に逆行しており日本も必要な備え、すなわち軍備が急務と指摘。
また、民族自決というウッドロー・ウィルソンの考え方は人類に悲劇をもたらした呪いというのもなるほどなと。
ウィルソン狂人論について、筆者は書いているようなので、それも読んでみたい。また、田中明彦先生の新しい中世という20年前に読んだ本も、ウェストファリアから脱して国家以外が力を持ちつつあるという話だったが、趣旨は同じだと思う。これも読み返してみたい。
中々に考えさせられる本だった。 -
心の中で何を思ってもいい
人は殺してはいけない
お互いの存在を認め合う
そんな当たり前が当たり前でなかった欧州の獣の時代に、文明的な戦争を説いたグロティウス。
犯罪者と敵は違う。つまり、戦争は犯罪ではない。
欧州の法だったウェストファリア体制を本当の国際法体制にした、日本。
日本の罪は、国際連盟を抜け、先の大戦で殲滅されることで、再び獣を世界中に解き放ってしまったこと。
倉山先生の本は、ちょっとあれって思うところもあるが、唸らされる。
どーすんだ、本当。 -
30年戦争と以降の歴史解説が大雑把でわかりやすいし、当時の背景がつかみやすいのでこれ読んでからハプスブルク家ものを読んでもいいかも。
フロイトやデカルトも絡めつつ現代に向うのがおもしろいし、読みたい本ができるのもいい。 -
◆「ウェストファリア体制」は日本語
現代世界のルールの源となっているウェストファリア体制について、深く学ぶことができます。
日本では当たり前に通じることが、ヨーロッパでは中々通じないことが良く分かります。
□天才グロティウス
『戦争と平和の法』の内容を通じて、国際法の概念を解説してくれています。
戦争そのものは否定していないところがポイントだと思いました。
本書を通じて、国際社会の根底にある問題を深く学ぶことができました。
何回も読んでみて、日本には何が足りないか、考える機会にします。 -
今回も面白かったしスゴく勉強になった。
グロティウスやリシュリューのことがよくわかり、どうして国際法が確立していったのかがとても細かくて分かりやすく書かれていた。『敵とは利害が異なった者』で犯罪者とは違うと書かれていたことが、本当にそうだと思った。