- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569846866
感想・レビュー・書評
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子供の出生率低下に伴って、確実に日本に襲いかかる人口減少と少子高齢化。最近は特に長寿化にともなう長期高齢化という言葉もよく聞く様になった。昔なら会社を引退して退職金を持って悠々自適な老後を送る事を誰もが夢見た。だからいつか楽するために、若いうちは頑張ろうという気になれたものだ。今は違う。高齢者の人口の割合は昔より遥かに高いし、街を歩いていると若者よりも中高年層が圧倒的に多い。将来への見通しが立たない、老後はいくらかかるんだ、そもそも現在と同じ様な公共サービスを受けられるのかも疑問だ。
本書はそうした人口動態が変わり続ける日本において、今後どの様な戦略を持って生きていくか、様々なケーススタディを用いて解説していく。
判りやすいところで言えばニーズ・嗜好性の変化だ。若者と中高年では体力も体格も変わってくるから、ファッションへの嗜好性は変わる。また、若い頃は平気で食べることのできた脂っこいラーメンやファストフードも年齢がかさむと中々体が受け付けない。そしてしょっちゅう体のあちらこちらが痛んで不調を来す。だから病院にはしばしば足を運ぶし、待合室に溢れるお年寄りの姿を見ながら、自分もいつかあの輪の中に居るだろうとの予想は容易にできる。こうした変化に今後の社会が対応していく必要がある。そこが変わらず、いつまでも同じ世代のファッションばかりを追い求めていたらモノは売れずに余っていく。社会は変化を求められている。
それに対する国家・自治体などの対応も見誤ってはいけない。海外からの労働力の受け入れには我が国は言葉の壁がある。介護労働力については近隣の中国や韓国と奪い合いにもなっている。安易に海外労働力を受け入れれば大丈夫だという幻想は捨てなければならない。実際に受け入れた後の社会もそうした人々が暮らしやすく、安心して働ける様な住居や職の提供も必要だ。日本人が考えている以上に宗教による食事の制限は厳しい。
本書2章ではそうした社会変化に対するどうにかなるだろうという淡い期待を否定し、技術的にも制度的にも変わることの必要性を説いている。
後半は過疎化が尋常でないスピードで続く地方の問題に触れる。地方で問題が顕在化している空き家問題なども早期の対策が求められているが、地方都市の在り方そのものの見直しが必要だ。鍵となるのは、減っていく人口をいかに効率良く支えていくかになるが、減るなら集めるという考え方を用いている。要するに総量的に減ったとしても集めることができれば、公共サービスも効率化され、現状と同じ様な維持費にすることができる。水道や下水、電気、郵便、輸送の提供労働力が減ることはそのまま価格に跳ね返ってくるが、その防止につながる。
直近の世界は新型コロナに直面した。店は閑散とし、ものは売れず物流も滞った。ワクチン接種によりなんとか社会は復活の兆しが見え始め、元の世界に戻りつつある。これも悪いことばかりではなく、将来の日本にとって良い影響・変化も沢山もたらした。今や会社に行かずとも仕事はできる。リモートワークは高齢者や移動困難な地域に住む労働力を確保することに大いに有効だろう。ただ一方で、これまでの会社の様に頑張って残業してる姿は見えないから、プロセス評価から成果による評価、実力主義に変わるのは間違いない。当然残業代という考えもいずれは無くなっていくだろう。この様な変化に一人一人が対応していく必要があるし、何もしなければ人口減少で沈んでいく社会と命運を共にしてしまうだろう。
本書はそうした未来の日本を想像し、自分がその中でどうなっていく必要があるのか考えるきっかけになる。戦争においても強大な敵に囲まれた際の撤退戦は重要だ。いかに被害を抑制し戦略的に撤退できるか、日本が戦略的に縮小するためには強力なリーダーも必要になるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
特に目新しいことはない。
「自治体間の人口の綱引きは,次回の選挙戦に向けて成果をアピールしたい政治家たちにとっては重要なことかもしれないが,日本社会全体で捉えたらならば,”勝者”なき,不毛の戦いなのである。」
「各自治体の枠組みを超えて「居住可能なエリア」と,そうではないエリアを区分けし,居住可能なエリアでこれまで通りか,これまで以上に快適な暮らしが実現できるようにしたほうがいい」
これらの指摘・提言は,世界規模で見たとき,もはや,日本という国を維持する必要性がないという議論につながりはしないだろうか?人口減少と高齢化ででインフラも行政サービスも維持できない国を,「居住可能な国」として残す必要があるのだろうか。特定の地域を居住不可能として切り捨てることは,究極的には,この国自体を切り捨てることと同義であるような気がする。
もちろん,それが悪いというつもりはない。この国は急速に沈んでいっており,それを回避することに労力を割くよりは,発展的解消の方が,効率的という発想もありうる。ただし,土地に根付いた国民感情はそうそう合理的な発想には馴染まないだろうとは思う。 -
「戦略的に縮む」が印象的。
少子高齢化を前提に戦略練っていかねばなりません。 -
● 2040年。九州沖縄山口の規模の消費者が消滅。マーケットの3分の1は高齢者。
●政治家の「意気込み」に付き合っている暇は無い。
●イオンモールが撤退する。アマゾンが残っても、配送業務がパンクする。
●世界中で少子高齢化が問題になるので、外国人労働者が必ず日本に来るわけではない。介護人材は奪い合いが始まっている。
●タクシーの自動運転は、道端で手を挙げても乗れない。急いでいる、荷物が多い、急に雨が降ってきたといった理由で流しのタクシーを止める人もたくさんいる。
●高齢者に対するマーケティング。おいしさより開きやすさ。大事なのは味ではない。開きにくい商品は売れなくなる。
●大学の対策として社会人の学び直し。
●水道料金が20年間で3倍以上になる。電気も電柱も保守点検に費用がかかる。あまりに利用料が高くなると、不採算エリアの社会インフラを維持するために、自治体住民全員が均等に負担することへの不満が募り、住民同士の地区間対立に発展する可能性もある。
●お金を出せば何とかなる時代の終わり。若い頃から「自分でできること」を増やしておけば、人手不足でサービスが撤退したり料金が高騰したとしても困ることが少なくなる。 -
日本の人口減少は止まらない。そんな状況下で求められるのは、古い価値観を捨て、発想を切り替えること。人口問題の専門家が、変化をチャンスに転じるための思考法を示す書籍。
日本の2019年の人口減少幅は、前年比51万人超だった。この減少幅は、今後さらに拡大すると見込まれる。
少子高齢化と人口減少は、働き手世代の減少につながる。働き手世代は、同時に消費者の中心層でもあるため、その減少は顧客数の獲得が困難になることを意味する。
人口減少社会の経営の手本は、ヨーロッパにある。同地には大量生産・販売を追わず、自社の商品を高く売るべく、他にはない商品価値を付加することに注力する企業が少なくない。
日本は、もはや内需の拡大が見込めない。従って、企業は質の向上により価格を上げ、利益高を増やすモデルへと転換すべきである。
自分たちの「強み」を生かすべく、捨てるところは捨てる。つまり、「戦略的に縮む」ということだ。
少子高齢化が進む中、企業は高齢者の行動様式などを把握し、そのニーズを汲み上げることが必要である。例えば以下のようなもの。
・高齢者は、缶や袋の開封に手間取ることが多い。商品の内容よりも、容器の開けやすさが選ばれるポイントになる。
・身体機能が衰えると、自動車への乗り降りにも苦労する。乗り降りを補助するような機能を標準装備すべきである。
・高齢者は、価格よりも融通が利くことを重視する。今後は、量販店よりサポートの手厚い街の商店が評価される。
コロナ禍は「人口減少を前提とした社会へのつくり替え」の契機となりうる。
消費の消失など、コロナ禍における課題への解決策の多くは、人口減少対策としても有効だからだ。 -
もはやすでになっていますが、将来さらに加速していく、人口減少の人類史上でも例のない「超高齢化社会」になってしまうことが確実な日本への、人口減少に負けない「提言」を述べられています。
”地域の財産”をうまく活用し、「拠点」での暮らしをいかに充実させるか。
自らの生命は、自らで守る時代が到来。
若い頃から”自分でできること”を増やしていけば、将来困ることも少なくなるし、その分だけ家計支出も抑制できる。
日本人同士、自治体同士、地域同士が、勝者なき不毛の戦いをするのではなく、一つの自治体だけが拡大発展していくということはありえない。産業面を含めて日本中が相互関係にある。
今後は世界各国で高齢化が進むわけだから、高齢者のニーズにきちんと答えた商品を開発しさえすれば、世界的な大ヒット商品となる可能性もある。
人口減少社会においては、各人がおのおのの立場を超えて理解し合い、新たな知恵を出さざるを得ない。
世界のどこを探してもない、将来の高齢化社会の日本では、予期せぬことがどんな形で起きてくるのか想像もつかない。
いろいろとどうしても将来の日本に明るい兆しが見えなくて、暗い気分になってしまいますが、日本人全員が手助けしあって、少しでも暮らしやすい日本社会にしていくように、わたしも気をつけていきます。 -
様々な観点から、少子高齢化が進む過程で、かしこく縮む国の在り方を示している。
今までの考え方や在り方を転換するには、早い方がいい。 -
人口減少・高齢化が進む中、
対人商売や地方自治体で働く人におすすめ。
【概要】
●2020年以降、少子化が大きく加速する。企業や地方自治体が存続し続けるためには何が求められるか。
●著者が未来予測する上で何に着目しているか。その思考プロセスが「人口減少に負けない思考法」
●将来はこんな状況になるから、今までのこんな考え方は通用しない。高齢者マーケットへどう対応すればよいか、行政や地方自治体のあり方はどうか、についてケーススタディ
●最後に、コロナ前からの課題についてコロナ後にどう対応すべきかケーススタディ
【感想】
●「未来を見る力」として未来を予測してどうすべきかが書かれているが、その対象は少子高齢化と人口減少に限定したものである。
●共感できる点は次のとおり。
・人口減少社会における企業経営のお手本をヨーロッパに見出す。
・日本の強みを活かすために捨てるところは捨てる。
・年齢に関係なく働いてほしいと思われる能力やスキルを身に付け、自分の能力を評価してくれる新たな職場にさっさと移る。
・高齢になるまで「使い勝手のよい人材」として社会に役立てるよう努力を重ねる。
●人口減少への対応にエンパシーが重要という考え方について理解できた。 -
p9 そして私が至った結論は、「戦略的に縮む」という考え方だ
人口減少社会ではすべてを実現・達成することは叶わない。「戦略的に」とは、何を捨て、何を残すかを判別することなのである
p28 どうせ変わざるを得ないのであれば早く挑戦を始めたほうがより多くの選択肢が残る
p42 少子高齢化 働き手だけでなく、消費者が減少する これが本質
p76 終身雇用、年功序列は人口減少とは相容れない
p78 人口減少に負けない思考法で考えるならば、若い人材の奪い合いをやめることだ。かわりに、優秀な人材をシェアする
p89 人口減少時代においては、生涯学び続けることはは誰にとっても当然のこととなるだろう
p95 清涼飲料 美味しさより、開けやすさ
p103 高齢者のニーズの把握するには、高齢者を開発メンバーにいれる
p104 東京町田市 でんかのヤマグチ 地域密着型
p107 人口減少社会に負けない思考法からすれば、高齢社会にとって価格が安いということだけがセールスポイントになるとは限らない
p109 これら老舗百貨店の接客は、販売というよりコンサルタントに近い
p151 屋根瓦職人の国家資格 かわらぶき技能士 2007 934人 2017 433人
地方自治体の職員も足りない
p161
周辺の自治体と広域に連携して住み分け、同じ機能の施設が重複しないようにする
p164 郊外拡大型の終焉とコンパクトシティ
p176 拠点を一から作る時間的余裕はない。中心地区、医療機関の周辺、郊外の大型ショッピングセンター、高速道路のSA、道の駅の周りに拠点をつくる
p183 最も重要なのはコミュニティを作ること
p186 人口減少は誰にも止められない国難であり、静かなる有事である。未曾有の事態に立ち向かうには、公共の福祉を求めざるを得ない場面がでてくることは仕方がないことだる
p187 同一エリア2地域居住
p210 戦後はことあるごとに結果の平等が重んじられてきた。国費で英才教育などをするいったら不公平だとの批判の声があがるだろう。だが、人口がへっていくこれからの時代は、誰もが頑張れる機会が得られるチャンスの平等を重んじる社会に変えていかなければならない -
戦略的に縮む。
アルバイトが集まらない=消費者も減る。
大型ショッピングセンターが撤退すると、空白地帯が一気に広がる。
女性のM字カーブは、すでにかなり緩んでいる。
起業は拡大再生産の発想を捨てる。
あらゆる商品がコモディティー化する。
終身雇用が崩壊、初任給で1000万円も現れた。
日本型雇用は人口減少とは相いれない。
優秀な人材をシェアする。「ONEJAPAN」という団体。
30歳を超えたら、自分の能力を棚卸。
町田市の「でんかのやまぐち」
栃木県カメラチェーン店「サトーカメラ」
老舗百貨店なみの丁寧な接客。
任天堂は、大人向け玩具にシフトした。
大学は留学生を呼び込まないと経営が成り立たない。
地方国立大学は、統合して特化する・
沿線をひとつの街に見立てて、暮らしやすい沿線にすることで乗客を増やす。
日本のガラパゴス化=いいものを作れば売れる、は過去のもの。
野菜を工場でつくる。それを海外展開する。
自治体職員が減る。地元の若者が少なくなり応募がなくなる。2030年以降、団塊ジュニアが退職。
住民税と固定資産税が減る。
人口かき集めで維持するのは限界がある。
フルセット主義=横並び、背伸びの意識がある。
隣の自治体とすみ分け、他の自治体と違うことをやる。
コンパクトシティ化は、どうしても必要。全国に20~50万人規模の都市が点在する形が理想的。市町村合併ではなく、コンパクトな街で人口が集中する都市。
水道事業は独立採算。地方のほうが高くなる。
ドイツ、スイスのような街づくり。
スーパーシティのような電脳都市はどこにもできるわけではない。
区分所有は時代に合わない。居住者が一斉に年を取る。