- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569847573
感想・レビュー・書評
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マトリックスを使った表現手法はコンサルタントの説明手法として良く目にするものですが、政治思想をマトリックスにすると、本当に分かりやすい。
自分の記憶と照らし合わせて読むと、より深く理解できて府に落ちました。
家族や友人にも紹介したい一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
様々な時代、様々な国の政治思想をのせめぎあいを、X軸を経済的自由、Y軸を政治的自由として、政治思想を二次元座標で表現したデイヴィッド・ローランが考案した政治思想マトリックスを用いて示している。自民党には主に3つのグループの流れがあるという説明はわかりやすい。
フランクリン・ルーズベルト大統領は、ニューディール政策によって失業率を25%から15%まで下げる成果を出したが、財界から社会主義的であると批判されたため、「我々こそがリベラル」と主張したのがリベラルの始まり。
1924年にレーニンが死去すると、国内建設を重視するスターリンと、世界革命を進めようとするトロツキーをはじめとするユダヤ人との間で権力闘争が起きた。スターリンに敗れたトロツキー支持者たちは、迫害をおそれて世界各国に散らばった。アメリカに移ったトロッキー支持者は民主党に加わり、トルーマン民主党政権を動かして、米ソ冷戦を仕掛けたのではないかとも考えられる。1978年、カーター大統領がエジプトとの和平合意をまとめると、アメリカ国内のユダヤ系住民は、次のレーガン政権を全面的に支えて外交や軍事の分野で強い影響力を持つようになり、ネオコンと呼ばれるようになった。
吉田茂が始めた自由党は、アメリカの占領を受け入れ、アメリカが作った憲法を守り、安全保障はアメリカに任せ、日本は軽武装で経済発展に専念しようという路線だった(吉田ドクトリン)。鳩山一郎の日本民主党は、アメリカに媚びへつらうのではなく、民族主義的な独自路線を掲げた。
池田勇人の所得倍増計画は、大きな政府で所得を分配しようという政策だった。労働者にも支持を拡大し、労働運動や社会主義運動を抑え込むことに成功した。池田勇人を支えたグループは宏池会を名乗り、自民党の保守本流として大平正芳、宮澤喜一らの首相を出した。
高度経済成長時代に建設業界は景気がよかったため、土建屋出身の田中角栄は金の力で佐藤グループを乗っ取り、首相に就任した。税金を地方に投資して日本中を高速道路と新幹線でつなぎ、箱物と呼ばれる公共施設を日本各地に作った。公共事業を地元に誘致することで政治献金を受け取り、これを選挙資金として地元民から票を集める仕組みを作り、後の竹下派が自民党内で権力を維持することに機能した。竹下登は、中国へのODAで円借款を行ない、公共事業を日本企業に発注してもらうことで、中国共産党と蜜月関係になった。
小泉純一郎は、国家の借金を減らし、財政を黒字化したい財務省と組むことによって、経世会の支配を打倒した。小泉は、田中角栄が作った道路公団を皮切りに、石油公団、住宅金融公庫、交通営団など特殊法人の民営化を断行し、小さな政府を目指す改革を進めた。明治時代に地方の有力者や地主、豪商などの屋敷の一部を使わせてもらって開設された特定郵便局は、選挙では自民党経世会を応援し、議員に対しては高速道路や鉄道をつくることを陳情する関係が成り立っていた。この仕組みを壊すことが郵政民営化の狙いだった。 -
わかった気にはなるけど
これで良いものか -
国際政治のなぜが、とっても分かりやすく解説されている本です。中学生位から読んでも良いと思います。
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要するに立場が違えば考え方も違う。の具体例集。
ナポレオンが、フランス祖国強化のための保守主義
(貿易制限)をかけたが
制限をかけられた他国は、当然身を守るために
制限解除を求め連合軍を徒党
→結果ナポレオンと言えど戦に負ける。
自分側の利で動き、敵を作ってないか?見直し
ステークホルダー全体の利で動き、敵を味方にする動きが何にでも求められる。 -
近現代史から現代までの世界の歴史や政治の流れが分かる書。
著者は駿台予備校の世界史講師でありYou Tuberの茂木誠氏。
私は、この人のことを本書で初めて知ったが、You Tubeなどを見ても、さすが予備校講師をやっているだけあって話が面白い。
本書は、そのはしがきで、「もはや「右派」VS.「左派」では、世界や読み解けない」と問題提起し、x軸を経済的自由、y軸を政治的自由として政治思想を二次元で表現した米国の政治学者デイヴィッド・ノーランのノーランチャートを応用した、「政治思想マトリックス」を用い、複雑化した今日の政治思想を説明している。
本書では横軸に経済的観点から平等(国が管理して平等を実現)を目指す考えが左側、自由(自国利益優先)が右側、縦軸に政治的観点から個人またはグローバリズムを尊重する考えが上側、国家やナショナリズムを尊重する考えが下側に配置される。
例えば、ジョンソン英国首相やトランプ前米国大統領は、自国利益優先(横軸)でナショナリズム(縦軸)、メルケル独首相は経済的自由を認めながら、ドイツの主権の回復を指向(ナショナリズム)している、という具合。
世間ではよく「朝日新聞は、左がかっている」とか、「産経新聞は、右寄りだ」とかいうが、そのレベルの話はその通りなのだが、そもそも「右」とか「左」の定義が曖昧になっている。
例えば、中国共産党といえば「左」の代表のような存在だが、その中国で今日行われていることは、少数民族の抑圧、愛国心の徹底教育、年10%の軍備増強、共産党の独裁と個人の人権の無視など、およそ「左」というイメージとは真逆のことだ。
そして、共産党のこれらの行いに対し、「左」の人たちが中国大使館前でデモをやっているなど、かように「左」の概念は理解が難しくなっている(笑)。
そして、これは「右」も同様。
たしかに、私もこれはここ数年、不思議に感じていたことで、いきなりその長年の疑問点に切り込んできた本書、はしがきから期待が持てた。
そして、その中身もなかなか興味深いものだった。
以下は、本書でなるほど思ったところや新たに知ったことである。
1.「右派」、「左派」はフランス革命によって生まれた
・フランス革命によって共和派が作った国民公会で、共和派が分裂
→個人の権利と自由を制限するような伝統は、根本的に作り変えてしまえ」という「左派(=自由主義、ジャコバン派(≒山岳派)」と「共同体(社会や家族)の伝統や秩序を重んじ、急激な変化を求めない考え方」の「右派(=保守主義)、ジロンド派」に分裂
・議長席から見て、ジャコバン派が左側、ジロンド派が右側に着席したことから「左派」「右派」と呼ぶようになった
2.イデオロギーとしての資本主義は16世紀の宗教改革が起源
・堕落したカトリック教会をルターやカルヴァンが批判し生まれたプロテスタント(新教徒)、なかでも最も先鋭的な教えを説いたカルヴァン派が、「一生懸命働いてどんどん投資をすることが、神のご意思に叶う」と説く
↔カトリックでは「勤労と蓄財は罪」
・その結果、プロテスタントの教えが広まった西ヨーロッパ(スイス、オランダ、イギリス、フランス、アメリカ)では後に産業革命が起き、今日も経済的は発展が見られる一方、「勤労は罪」と説いたカトリック教国のスペインやポルトガル、さらに彼らが開拓した中南米が今日も財政赤字に苦しんでいるのは、ここに原因がある
3.ドイツがEUに加盟しているのは、経済劣等国のギリシアやイタリアがいるお陰でユーロ安が続き、国際市場でドイツ製品を割安で販売できるから。また移民を積極的に受け入れているのも、安い労働力を確保できるから。
4.グローバリストのトロツキーvs.ナショナリストのスターリン~ソヴィエト連邦という国家が存続できたのは、スターリンがトロツキーとの権力闘争にかったから~
・トロツキーは世界革命を指向したのに対し、スターリンはまずは自国で足場を固め、力を蓄えてから世界革命に備えようと考えた
・ロシア革命後、各国の共産党は暴動・暗殺・テロなどを繰り返し、困った存在となっており、このような組織をソヴィエトが認めるとなったら世界が容認しない
そのため、スターリンは、そのような組織を認めないと世界に誓い、国家としての主権を勝ち取った
5.イラン人とは~経典(コーラン)重視のスンナ派、ムハンマドの血統重視のシーア派~
・シーア派の多くはイラン人でゾロアスター教を信仰
・イラン人はペルシア人であり、人種としてはコーカソイド(白人、ヨーロッパ人と同根)でアラブ人とは違う
・3世紀にササン朝ペルシアを興し、長い歴史を有するが、7世紀に入りアラブ人に滅ぼされ、イスラム教への改宗を迫られ、受け入れたのがイスラム教のシーア派であった
・シーア派はイスラム教を始めた預言者ムハンマドの血統を重視し、彼の後継者であるアリーを初代として、直系子孫の12代を指導者(イマーム)とする立場をとる
→シーア派がイランに広まった理由は、ムハンマドの孫がササン朝ペルシアの王女を娶っていたため
6.小泉元首相が「郵政民営化」にこだわったわけ
・かつての郵政省が貯金業務をやっていたことで、地方の金持ちが国営事業(郵便貯金)への安心感から、お金を預け、それによって集まった資金が政府に貸し出され、公共工事で赤字を垂れ流す原因となっていた
・地方の山奥でも郵便事業を成り立たせるためにはそのような場所にも郵便局を作る必要があったが、その場所を提供したのがその地域の有力者や地主。結局、この高所得者と自民党の主流派閥である経世会が癒着し、無駄な道路などを作る原因となっていた
・こうした税金の無駄遣いは田中角栄以来のもので、その流れを汲む「経世会」が当時の自民党の主流派であり、ここにメスを入れる決意表明が、かの有名な「自民党をぶっ壊す」である -
著者のYoutubeにハマって購入。
が、Youtubeにある一つの動画にほとんど類似しているので、チャンネルヘビーユーザーとしては、新しい発見は無かった。
Youtubeを見てない人にお勧めする本。 -
単純明快にまとめられており、とても分かりやすい。著書の思想が極端に反映されていることもなく、比較的フラットなのもよい。
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著者の思想も介在してはいるが、各国の政治、経済をざっくり理解する為には最適。
今まで政治思想を取り扱いながら、これ程読みやすく、簡潔にまとめられた作品は無かったのではないだろうか。
以下ざっくりメモ。
ドイツEUのドン
移民受け入れは安価な労働力確保。
ユーロ安維持の為、貧困国を締め出さない。
ユーロ採用も、貧困国のおかげで通貨安が維持され、輸出時に自国製品の競争力が増すため。
反面イギリスは金融で稼いでいるため弱くなりやすいユーロを採用する理由はないよってポンドを採用していた。
アメリカの流れ。
元々広い国土を地道に開拓した移民の国。
他国にはあまり興味が無く、自国のことは自国で決める孤立主義、モンロー主義をとっていた。
=ナショナリズム。
変化の時。
ウィルソン大統領。
第一次世界大戦時欧州各国からの国債で潤う。
債権国が負けると、国債がただの紙切れになり、金融が大損を被るため、参戦。勝利。しかし、マジョリティの草の根保守が参戦には反対していた。国際連盟も否決。
共和党のゴールデンエイジに。
大恐慌が発生。
ソ連の情報統制により、社会主義が注目される。
ソ連の問題は共有されていなかった。
大恐慌を招いた共和党に対し、民主党は、ケインズ的な社会主義のような政策を掲げ当選。
ケインズの理論。
「非常時に神の見えざるでは発動しない。デフレを脱却するためには政府が積極的に道路やダムの建設などといった公共投資を行い雇用を創出して未失業者を減らすべきだ。また通貨発行や減税によって使えるお金の量を増やし民間投資や消費を刺激すべきだ」
フランクリンルーズベルトの登場。
「ニューディール政策」
もともとのリベラルは個人の自由と権利が最大限に尊重されると言うものだった。しかしルーズベルトは後主張した。「自由放任の古典的な自由主義が貧富の差を拡大し個人を不幸にした。国家が責任を持って個人の生活を守るべきだ。社会保障をしっかりと提供し、一人ひとりの生活の面倒を見るべきなのだ。これが本当のリベラルだ」
これが現在まで続く民主党。
共和党は、個人の自由を尊重し福祉を最小限に抑えて減税を要求する小さな政府を求めるもの。
これ以降リベラルと星の意味が逆転したまま現在に至り日本にも直輸入されて使われている。
今後思想を分けるのはナショナリズムとグローバリズムの違い。
グローバリスト、民主党
グローバリズムが力を持ち始めるのは20世紀の初頭。理由は金儲けの手段がものづくりから金貸しへと変わっていったため。国際金融資本の人たちは世界中で自由に投資をするためには国境の壁が低いほうがいいと主張しているできることなら国境をなくし関西を取り払い地球規模に人やモノやカネの自由な流れを作りたい。
リベラルは国家が責任を持って富を分配し個人の生活を守るべきと言う立場。彼らは主に19世紀後半にアメリカにやってきた移民たち。すでに西部開拓の時代は終わり土地が手に入らなかったため彼らは低賃金でと長時間働く工場労働者として苦しい生活を強いられました自力の力では自分の生活を守れないだから政府が低所得者層の生活の面倒を見るべきだと主張し始めた。民主党的リベラルは社会主義に近づいていっている
ナショナリスト。共和党。
それに対し製造業家に育ちは自由貿易には反対。10貿易を進めると賃金の安い新興国例えば中国で続く作られた安い工業製品がたくさん輸入されて国内国内の製造業が逼迫するため彼らは輸入製品には関税をかけ国内産業守ることを望んでいる。これが経済的ナショナリストの立場。
ナショナリストに多いのはアメリカ南部や中西部の農村地帯に多く住んでいる草の根星の中間層。最初にイギリスからやってきた白人たち政府の力を借りずに自力で政府を切り開いた開拓移民の子孫です