- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569850757
作品紹介・あらすじ
世に天才といわれる落語家は、何人かいたかもしれない。しかし凄みを伴った天才は、立川談志だけだ――。本書は立川談志18番目の弟子である著者が、正面切って挑む談志天才論。没後10年が経ち、談志の言葉の真意がようやくわかるようになってきた今、談志の本当の凄さに迫る。
著者は談志の天才性を「先見性、普遍性、論理性」の三つに凝縮して分析。さらに独特の身体性や立川流を創設した理由、師匠談志と志ん朝師匠のライバル関係などについて論じる。後半では「談志は談慶をどう育てたか」と題し、入門後二つ目に昇進するまでを振り返る。後輩の談生(現・談笑)が自分より先に二つ目に昇進した悔しさ、談春兄さんと志らく兄さんの話、妻からの衝撃的かつ的確なアドバイス……。通常4~5年とされる前座業を9年半経験してようやく二つ目に昇進した男が、自らの苦悩や師匠を疑問視した日々をさらけ出し、その上で「師匠こそがハートウォーマーだった」と語る。
感想・レビュー・書評
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立川談志の没後10年が経ち、弟子の立川談慶が書いた立川談志論。
私は談志の著書は全て持っており、弟子のもそこそこ集めてきましたが、キリがないので久しくやめていました。
ただ、次の惹句に惹かれて本書を買いました。
「弟子がやっと気づいた『本当の凄さ』」
本書を読んで、談志は「凄い」落語家だったのだと再認識しました。
その凄さを、著者は「先見性、普遍性、論理性」の3つの言葉で表現します。
先見性―それは、昭和40年に談志が著した落語家のバイブル「現代落語論」のラストに現れます。
落語界が勢いのあった時代、談志は「落語が『能』と同じ道をたどりそうなのは、たしかである」と言い切ったのです。
以後、そうはさせまいと、談志自身はもとより数多の落語家の活躍があったからこそ、今の落語界の隆盛があるのだと思います。
普遍性―それは、たとえば「たが屋」のオチを変えた点に表れます。
従来の「たが屋」は、刀ではねられた殿様の首が飛んで「たーが屋ー」というオチでした。
これに群衆が留飲を下げるのです。
しかし、談志はこれに「せこい下剋上のカタルシス」と異を唱え、たが屋の首が飛んで「たーが屋ー」というオチに変えました。
群衆の期待とは真逆の流れになったのに、それでも「たーが屋ー」と叫ぶ群衆の無責任。
それこそ、自身の持論である「人間の業」だと考えたのです。
いやはや凄い。
論理性―それは、先述の「現代落語論」と、その続編である「あなたも落語家になれる 現代落語論其二」を読めば一目瞭然でしょう。
著者は、談志の論理性を「普段からの不断の努力によって獲得された形質なのでは」と推察しています。
努力を「バカに与えた夢」と唾棄していた談志ですが、自身は努力家だったと著者を含め周囲の多くの人たちが証言しています。
談志の天才性は、「芝浜」の演出の変遷過程にも表れています。
「芝浜」が十八番だった先々代の三木助は、登場人物の女房を「良妻賢母型の古風な女房」として描いていました。
談志も当初、これを踏襲していましたが、徐々に「現代風なかわいらしい気質」を交えた女性像へと転換していきました。
そして、あの伝説の、よみうりホールでの「ミューズの神が降りた」高座が実現したのです。
すみません、談志フリークなのでつい熱くなって長くなってしまいました。
これでも触れたのは、まだ本書の10分の1くらいです。
談志のことになると熱くなってしまうのです。
全部書いていると日が暮れそうなので、このへんで。
遅くなりましたが、本書は、談志の凄さを論じた「客観的な談志論」と、そんな談志の弟子として師匠をどう見てきたのかを書いた「主観的な談志論」の大きく2部構成となっています。
9年間にも及んだ前座修行の期間が主となる第2部は、読み物としても秀逸。
著者が前座時代に婚約者を事故で失った経験があったなんて知らなかったので、思わず胸を締め付けられました。
いずれにしても、談志ファンなら読むべきでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
弟子から見た師匠の凄さが 書かれていました。
亡くなったから 書けたのかな??
ご存命の時だったら 書いたら怒られたり??
本当に立川談志さんて 凄い人だったのですね。
気配りも 優しさも 兼ね備えていたんですね。
他の落語家さん達は 結構長生きしているので
油が乗り切った時とはいえ 残念ですね。
まだまだ 生きていて欲しかったですね。 -
前半は談志の天才性について語っており、後半は著者ご自身が二つ目に上がるまでの軌跡を書いた本。著者自身はとても真面目ではあるけれども、とても不器用であり、時間はかかったものの二つ目になる軌跡が非常に興味深く読めました。師匠である談志のすごみや覚悟のようなものが非常に伝わってきました。著者ご自身にも共感できましたし、談志の考え方にも非常に共感が持てました。こういうとても激しくもあるものの愛情に深い師匠を得られた事は人生にとって本当に素晴らしいことだな、と感じたりもしました。
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『天才論 立川談志の凄み』
面白かった。
やっぱり、外からのイメージ通り、談志さんはかなり乙女チックな要素が強い人だったらしい。
弟弟子から、
「師匠が、"ワコール(前座の頃の芸名)のバカ"と言ってます」
と聞かされるみたいな、少女漫画に出てくる乙女みたいな言動が多くて普通に笑える。
談志さんが気に入るような好みの弟子のタイプって、自分の趣味に理解があり、かつ自分に無い要素も持ち合わせている人という感じがするので、やはり師弟の間柄は恋愛関係に近いなと思った。
似てる部分と、違う部分の両方を他人に求めるのは皆そうだろうけど、その割合の配分バランスが人それぞれというか。
だから、談志さんは、自分自身と瓜二つの人間と一緒にいても絶対同族嫌悪を起こすと思う。かつての若い頃の自分が談志の弟子になったとしたら、すぐに揉めて破門にしている様子が目に浮かんで容易に想像つく。
実際に立川談志と松ちゃんはかなり似ている部分が多いと思うけど、この二人が同じ場所で共演したのはM-1の審査員の時の一回きりで、それも直接の絡みは無かったし、やはりお互いに近寄ると揉めるとわかってるから一定の距離を置いてた雰囲気が漂っている。
片や、上岡龍太郎と談志さんは仲良かったらしいけど、上岡さんは何だかんだ引くところは引いて、その辺りのさじ加減とか上手かったんだろうなと。
大人なジェントルマンと乙女爺でとても相性が良さそう。
もう、このご両人ともこの世にはいないんですねー。
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尋常の人なら耐えられない罵倒に耐える。
真面目に努力を積み重ねるが、結果だけが評価され、昇進が遅れる。
本書の最終部分にかかれている「甘え」に対する批判的言及が印象に強く残った。 -
有り S779/タ/21 棚:13