「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか (PHPビジネス新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569852737

作品紹介・あらすじ

迫り来るインフレの中、価格戦略こそが企業の命運を握る! 顧客離脱を起こさず、むしろ売上を増やす「正しい値上げ」の方法とは?

感想・レビュー・書評

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  • ・安売りをする際によく「我慢する」「努力する」という言葉が使われる。ただ、そうやって「我慢するビジネス」は本当に持続可能なのだろうか。さらに言えば、そんなビジネスをやって本当に「楽しい」のだろうか
    ・「節約」とは「予算配分」の話。自分にとって意味のあるもの(意味合い消費)の予算を増やし、生活必需品(買わなければならないもの)を切り詰めているだけ
    ・生活必需品への出費を削ってでも使いたいものへのシフト
    ・ビジネスにおいて、「価格」は主役ではない。主役は「価値」だ。
    ・Value = Performance / Cost 価値を高めたければ「コストを下げる」か「パフォーマンスを上げる」かのどちらかが必要
    ・比較対象は別のものに変えられる。インスタントラーメンの価格を決める際に、自社のインスタントラーメンがリアルな店舗の味をほぼ再現できたとする。すると比較対象はインスタントラーメンではなく、リアル店舗のラーメンとなる。一冊の書籍の中に10万円のセミナーの内容を詰め込んだとする。するとその本が2000円だとしても「安い」と感じるだろう
    ・値上げは、自社にとっての優良顧客を絞り込むチャンス。価格を上げても流出しなかった顧客は、価値をあなたの商品や会社に見出してくれているということ。つまり、あなたの商品や店に意味合いを見出してくれているということだ
    ・自分が精進することで提供できる価値が上がったら、それに合わせて価格を上げる
    ・機能に「楽しさ」を加えると、商品の持つ「意味」が変わりギフトにもなる。そして言うまでもなく単価もその分高くなる。なんとも楽しい価格の上げ方である
    ・商品に「楽しさ」「体験」を付け加えると、一番高いものが売れる。「ぶっ飛んだ価格」のものをやってみると、「まさか」が現実になり、作りても売りてもいい意味でタガが外れる
    ・多角化で大事なのは会社の「価値観」に沿っているかどうかだ。本業という縛りから逃れることができないと、価格上昇時代には非常に窮屈になってしまう。それは自らのビジネスの衰退を招いてしまうのである
    ・自ら進んで値下げを提案していないか
    ・ファンダムとは熱狂的なファンとその人たちが作り出す世界のこと。顧客との強固なつながりがあれば、そこで価格は消滅。値上げを受け入れてもらえるのはもちろん、より高額な商品も喜んで買ってもらえる
    ・お客さんに、まだお客さんが知らないかうべきもの、お金と時間の使い方を教える存在。それによってお客さんの新しい日常の扉を開く存在。それがマスターである
    ・自分たちにとっては当たり前の情報でも、お客さんにとっては知らないこと、重要なことがたくさんある
    ・価値を伝えることが「自分の責任」。「売らんかな」ではどうしても強くお勧めしにくいという人でも「これを伝えなければお客さんに損失を与えてしまうかもしれない」と考えれば、自然と言葉に説得力が生まれ、「どのように伝えればいいのか」を考えるようにもなるだろう

  • 鎌倉の行きつけの飲食店店主が「価格を上げようか」と迷っていた。
    私たちはそのお店の料理がいくらになろうとも通う事は止めないため価格に関して何とも思っていなかった。

    価格の上昇をすると多くのビジネスパーソンは「顧客が離れてしまう」と不安に感じると思うが、著者は、「一旦スパッと値引きはやめる、そして必要な値上げはやる」と言う。

    更に著者は、「顧客を選んでいい」と考えている。
    値上げをしても離れない人は、商品や店に価値=「意味合い」を見出してくれている優良顧客であり、値上げは「優良顧客を絞り込むチャンスでもある」ということだ。

    自分たちのことを優良顧客と考えてはいないが、価格を上げたことで一定層の顧客は離れるはずである。ただそれ以上に残る顧客もいるはず。その残った顧客とより良いビジネスを続けていけば良いのではないか。

    本書では「値上げは悪」と考えているビジネスパーソンが多いとあった。
    個人的にはそうは思わない。適正価格をつけなかった結果ビジネスが成り立たなくなってしまうことの方が顧客や日本経済においてマイナスでしかないと考えるからだ。

    また価格の安さで来店される層が好むお店とそうでない層が好むお店は根本的に違っている。しっかり層を分けて商品やサービスを提供していくことも大事なのではと感じている。

    そもそも、消費者が購入をする際には以下の2つのハードルがあると著者は言う。
    ・買いたいか/書いたくないか
    ・買えるか/買えないか
    ビジネスパーソンは後者を考えて値付けをしてしまっているが、後者は容易に飛び越えることができると著者は説く。

    前者のハードルはその商品やサービスが提供する価値が自分にとって必要がかにより変わる。その価値が高ければ買いたいとなる。
    「買いたい」のハードルを越えれば、あとは買えるか買えないかである。
    ここに関与してくるのが予算の「配分」である。買おうとしている商品・サービスが自分にとって意味のあるものと感じれば感じるほど、その商品・サービスへの配分は高くなり、「買えない」のハードルは下がる。
    つまり、「価格」は「価値」に従うのである。そのため前者の「商品の価値を伝えていく」ことにじっくりと取り組む。顧客にとって「価値」あるものになれば、「価格」は消滅する。

    それを実現する1つの手段として、マスタービジネスがある。マスターとはその商品やサービスの価値を伝える師匠のような存在である。

    前述の通り
    ・マスターとして新しい世界を示すことができれば、そこに予算は存在しなくなる
    ・価格は価値に従い」、顧客は「2つのハードル」を越えてくれる

    マスターは価値を理解できる「良質な顧客」を育て、自分のビジネスだけでなくそれによって実現している「文化」も守れるようになる。
    マスタービジネスに近づけることができれば、値段を気にせず顧客に愛され、喜ばれるビジネスを営んでいける。と著者は説く。

    自分自身が提供しているサービスの価格だけ聴くと高額の分類に入るであろう。
    本業で携わっている住宅に関してはなおさら高額商品である。
    ただその価値を正しく解してもらうことで買えるか/買えないかのハードルは想像以上に低いことも知っている。

    そのため買いたいのハードルをいかに超えられるかどうか、その価値を相手に合わせて伝えていくことこそが重要で自分自身もマスター(師匠)を目指したいと感じる。

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    ジャンル:経営戦略 マーケティング
    出版社:PHP研究所
    定価:1,023円(税込)
    出版日:2022年09月08日

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    小阪裕司(こさか ゆうじ)
    オラクルひと・しくみ研究所代表。博士(情報学)。九州大学招へい講師、日本感性工学会理事。山口大学人文学部卒業 (専攻は美学)。1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「感性と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会であるワクワク系マーケティング実践会を主宰。現在、全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。産官学にまたがり、年間数多くの講演・講義も行う。2017年からは、この理論と実践手法を全国の企業に広める事業が経済産業省の認定を受けている。
    『日経MJ』紙に14年に渡りコラム「招客招福の法則」を連載した他、著書は『「顧客消滅」時代のマーケティング』『「感性」のマーケティング』(以上、PHP研究所)、『価値創造の思考法』(東洋経済新報社)など多数。

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    flier要約
    https://www.flierinc.com/summary/3173

  • 「値上げをすることが悪いこと」の呪縛を解くための、今まさに必要な一冊だった

  • 人は機能ではなく意味(価値)にお金を払う

    例:
    ・オタクの推し活→応援のため
    ・地元で人気のスーパー→店員と交流のため
    ・ゴールデンカムイの料理店→マンガ体験

    機能を売りにすると、
    原価を考えられ安いモノに流れる。
    だから、意味=価値が大切。
    意味は上記の例のように何個も種類がある。


    ≪販売方法≫
    人は購入の前に2種類のハードルがあり、
    ①買いたいか買いたくないか
    ②買えるか買えないか
    前者の方が大きな問題になる。
    つまり、価値を先に伝えることが大切

    例:定食800円→じっくり煮込み3日かけてつくった当店おすすめメニュー

    ただ価値は短時間では伝わらないため注意


    ≪値付けの方法≫
    客に「何と比較して欲しいか」を考えること

    例:
    ・街のお菓子→デパ地下価格で販売
    ・フラダンスを習う→健康維持の投資
    ・サプリ→スポーツジム
    ・あられ→ケーキ、お土産

    究極は対象がないモノがいい。
    ランボルギーニやハーレーなど。
    これはブランドでIPを持っている

  • ■ Before(本の選定理由)
    価格上昇時代はまさに実感。
    それをマーケティングで解決できるのだろうか?

    ■ 気づき
    なるほど「そんなこと出来ない」という言い訳をことごとく排除してくれるから、「俺でも出来るかも」と前向きな気持ちにさせてくれる。競合の設定をどこに置くか?のマインドが興味深い。

    ■ Todo
    推し活の言葉に代表されるように、欲しいもの・刺さる体験には人々は金を惜しまない。自分なりの競争のポジションを確立しよう。

  • 考えが変わる一冊。
    価格上昇で悩む消費者、経営者はぜひ手にとって頂きたい。

  • 良本!!

    意味合い消費
    意味のあるものにお金を使う
    どうでもいいものには節約思考

    価格が主役ではなない
    主役は価値

    最低品質価格
    ある一定の金額より安くなると売れなくなる(不安になる)


    本来松竹梅で真ん中のものが売れる
    でも、
    体験と驚きと楽しさを加えると一番高いものが売れる

    コラボの時はパッケージを変える
    ワクワクするようにかえる

  • オンリーワンになって安売りするなという本は昔からあるが、コロナ禍後の取引先や消費者の変化や、値上げのための理由づけを述べているのは役立つと思う。

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著者プロフィール

オラクルひと・しくみ研究所代表

「2022年 『「価格上昇」時代のマーケティング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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