指導者(リーダー)の不条理 組織に潜む「黒い空気」の正体 (PHP新書)
- PHP研究所 (2022年12月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569853673
作品紹介・あらすじ
「黒い空気」を知らない人は合理的行動で失敗する。
佐藤優氏推薦!
(作家・元外務省主任分析官)
人と組織は合理的に失敗する。とくに日本の組織において表面化するこの「不条理」のメカニズムの解明に長年挑んできた著者。その積年の研究を発展させ、経営学者、組織論の研究者としての「不条理」研究の集大成として書き下ろしたのが本書である。
失敗する組織内では、指導者たちの合理的な判断によって、「やましき沈黙」が生じる。そして、どこかに潜んでいた「黒い空気」が、いつのまにか組織全体を覆ってしまうと著者はいう。
日本の「空気」の研究においては、これまで故・山本七平氏の論が多くの読者に支持を得てきたが、グローバル化にのみこまれ、変質し続ける日本社会において、その論を超える社会・組織の分析が必要とされているなか、著者は自らの幅広い学問知識を援用してこの難題に挑戦した。
日本近代の戦史から現代の企業経営史まで、絶えることのない「不条理」現象に着眼し、最新経済学やダイナミック・ケイパビリティ論などの経営学、さらにはカント哲学を援用して、組織を汚染し、破滅に至らせる病への処方箋を、現代を生きるリーダーに向けて提示する。
悲劇の戦史からの学びを、自らの仕事・経営に生かすことを願うリーダーたちに贈る著者渾身の書き下ろし!
【本書の構成】
序章◆日本の戦史にみる失敗の真因――指導者は不条理な「黒い空気」に覆われて失敗する
第1章◆「不条理」への経済学的挑戦――戦史にみる「黒い空気」発生のメカニズムと最新経済学
第2章◆「不条理」への経営学的挑戦――ダイナミック・ケイパビリティ論とドラッカー経営論の援用
第3章◆「不条理」への哲学的挑戦――哲学者カントの「理論理性」と「実践理性」の援用
結章◆不条理な「黒い空気」に支配されないための処方箋――「理論理性」と「実践理性」の重層的なマネジメントが鍵となる
感想・レビュー・書評
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うーん。「黒い空気」という、わかったようなキーワードの裏に、経済合理性よりも高次の(おそらく倫理的ディシプリン)の重要性を一応説いているのだが、説得力があるのかな? 古今東西、最初から最後まで完璧なリーダーなんぞは、いたためしもないし。
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組織に潜んでいる「黒い空気」。
これを浄化しないと正しい判断が出来ない。
歴史からそれを問いていますが、少々観念的で「黒い空気」のハッキリした正体まではよく理解できませんでした。
少しでも理解できるよう、もう一度読み返してみたいと感じました。 -
なぜ失敗したか。
それはあいつらが、阿呆だったからだ。
そうなりがちなんだけど、それだけでは何も解決しない。
菊澤氏の話が面白いのは、合理的な判断をした結果として、不合理な行動をとってしまう、という展開で説明してくれることだ。
本書でも、そういった展開でインパールなどの日本軍の作戦がなぜ失敗したかを解説してくれる。今までの本とちがったのは、おなじ論理展開で、現代日本のコロナ対策や東京オリンピック開催について考えさせてくれたことだ。
合理的に、もっと言ってしまえば、損得勘定によってこれらの決定はくだされた。非合理、不条理に見えて、それらはみな合理的な損得勘定の結果なんですよ、と。
日本軍も、現代日本の官僚も計算については、実際とても長けている。その計算の中には、費用効果やステークホルダーへの説得の手間も含まれる。そうしたことを踏まえた結果が、ああなったのだ、と。
他にも松下電機とダイエーの戦いや、いろいろな事例で解説してくれており、とても感心した。
そしてそうした損得勘定からくる、菊澤氏による「黒い空気」をどのようにしたらはらえるのか。
それはプリンシパルだったり、人間的な理性、何を大切に思うかという基準になるもののような考え方だ。
そのあたり、俺がこれまで読んできた他の著者にも、共通するものがあるような気がしたなぁ。 -
日本の組織論。不条理な判断をする人を大戦の時と重ねて説明。ダイエー対松下、オリンピックなどの話は面白い。