鏡の国

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569855578

感想・レビュー・書評

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  • キラキラした世界の影… 美しさを求め続ける元アイドルと女性配信者の苦しみが胸を締め付ける #鏡の国

    ■きっと読みたくなるレビュー
    いやー、力作ですね。
    社会問題ルッキズムを背景に、悩める人の心のうちと友情を詳らかに描写した切ない作品です。

    既に亡くなっている作家の遺作を、相続人である姪が読み進めるという作中作で物語は進行。作品全体でより効果が高くなるように、突然の切り替えしもあり、プロットに様々な工夫してますね。

    本作で私が一番好きなポイントは、登場人物の心情をきめ細やかに表現している部分。友人たちとの会話と、その会話に秘めた想いのひとつひとつが、超リアルで読んでてしんどいんですよ。

    女性であれば、美しくありたい、アイドルになりたい、好きな人と一緒にいたいと思うのは、ごく一般的な願い。彼女たちがキラキラした世界への憧れが溢れ出すのがわかる…先生は女性の胸懐を表現するのがお上手です。

    いくら不幸な運命とは言え、登場人物たちの悩みや苦しみは辛すぎる。本来、友達や恋人と楽しく過ごせるはずの年齢なのに、何故こんなにも悩み苦しんでいるのか。誰しもひとつ間違えばありうることで、胸が締め付けられる思いでした。

    ホント、作中のお医者さんのアドバイスどおりですよね。何かもっていても、何かをもってなくても、人ひとりには絶対的な価値がある。ただ、人に教えてもらうだけでなく、自分の中で答えを見つけなければいけないんすよね。いやー切ない。

    なおミステリーとしてもしっかり仕掛けが効いてるし、真相もなんともやるせない。読み物としてもまとまりがよく「美しい」お話でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    カワイイがもてはやされ、商品の値段になってしまっている現代社会がもたらした影。他人から見たら何でもない悩みにみえるけど、本人にとっては生きるか死ぬかの問題なんですよね。

    以前から、美人にも関わらず整形手術を繰り返す人の気持ちが分からなかったのですが、初めて理解できた気がしました。

  • 大物作家・室見響子の遺稿『鏡の国』は、ほぼノンフィクションであると表現していたが、矛盾があり違和感があると担当編集者が、響子の姪に告げる。
    いくつかの伏線と削除されたパート。
    それらは何のため、誰のためなのか。
    真実は…。

    いくつかの⁇より第1章から始まる物語のなかの4人が気になった。
    身体醜形障害の響と、顔に火傷の痕がある郷音と、相貌失認の伊織。
    3人の抱える苦悩にどういった感情を示せばいいのかわからない状態で、こちらまで不安定な状態になりながらも読み進める。
    響の同僚の巧が3人のなかに入ってきたときに、少なからず何かあるとは思っていたのだが…。
    驚愕の結末にそうなのか…と。
    そして、最後に反転する作者と語り手に唸ってしまう。

    この仕掛けにはなかなか辿りつけなかった。
    すべては『鏡』

    しかしながら顔に関する障害には、本人ですら気づかないものなんだと知った。
    身体醜形障害は、あらゆる精神障害の中でもっとも患者を苦しめるものの一つと聞くと気にするなと簡単には言えない。
    だが医師の「いつかは失われるもの、いつかは失われるとわかっているものに、決して自分の一番の価値を置いてはいけないのです」と言うことばは、考えさせられた。

  • みなさんは普段見た目を気にしていますか?

    こんな私でも、学生の頃はそれなりにカッコ良く見られたいと思ったこともありましたよw

    女性なら綺麗に見られたい、可愛く見られたいなどあると思います

    けどね、おっさんになるとカッコ良く見られたいという願望は次第に無くなっていきますよw

    今はそれより、社会人として当たり前の身だしなみを大切にしています
    それは、自分が気をつけて意識すればできることですよね


    だけど、世の中には見た目のことで悩んでいる人も多いはず…

    外側から見えなくても、心の中では誰もが問題を抱えているかもしれない…


    本作は、ルッキズムをテーマにした物語
    身体醜形障害に悩まされている響
    顔に火傷の痕で苦しんでいる郷音
    自覚もないままに先天性の相貌失認を抱え、恋人や職を失った伊織

    本作を読めば見た目のことで苦しまずに日々を送れることがいかに幸せなことかわかるかも…

    • 1Q84O1さん
      タンパク質は遺伝に勝てるのか!?
      結果がどうなるか数十年後が楽しみですw
      タンパク質は遺伝に勝てるのか!?
      結果がどうなるか数十年後が楽しみですw
      2023/11/17
    • mihiroさん
      いっきゅ〜さ〜ん♬
      これ気になってました!さすが早いな〜!
      ルッキズムだから鏡の国ってタイトルなんですね〜
      やっぱり容姿で損得あるのは間違い...
      いっきゅ〜さ〜ん♬
      これ気になってました!さすが早いな〜!
      ルッキズムだから鏡の国ってタイトルなんですね〜
      やっぱり容姿で損得あるのは間違いないし、気にはなりますね〜!
      でもやっぱり身だしなみと清潔感が大事ですよね!
      よし!図書館予約しとこ〜!
      2023/11/19
    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん(`・ω・´)ゞ
      私もこれブクログで知って気になってたんですよー
      図書館に入ったタイミングで予約できたのでスムーズに借りれ...
      mihiroさーん(`・ω・´)ゞ
      私もこれブクログで知って気になってたんですよー
      図書館に入ったタイミングで予約できたのでスムーズに借りれました!
      mihiroさんもポチッと予約して読んでみてくださーい♪
      さぁ、今日も身だしなみは整えておきますw
      2023/11/20
  • 西暦2063年 神奈川県鎌倉市

    ミステリー作家 室見響子の遺稿が見つかり、著者最後の作品として出版されることに。
    それは室見響子が小説家になる前の実体験をもとに描いた「ほぼノンフィクション」の私小説であった。

    「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思います」――。

    出版を目前に控えたある日、著作権を持つ室見の姪の桜庭怜は、担当編集者からこう告げられる。担当編集者は作中に『矛盾』と『違和感』を感じたと言う。

    削除されたパートは本当に実在するのか、だとしたらなぜ響子はそのシーンを「削除」したのか。

    「これは作者から読者に向けた《最後の謎》ではないかと思うのです」
    あなたはこの謎に気づけますか?

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    作中作の『鏡の国』。時代設定はコロナが5類に移行した現代。ルッキズムをテーマに 自分の容姿や病に悩む4人の若者の友情・恋・仕事を描いた物語。

    作中の『違和感』見つけてみよ!と挑戦的な態度で読み始めたけれど、作中作もミステリー仕立ての作品だったので、そちらに夢中になってしまい ただの『鏡の国』の一読者として楽しんでしまった。

    結果、作中作の犯人探しと 隠されたもう一つの物語という二つの謎を楽しめた。

    ルッキズム。
    テレビ・YouTube・ネット配信・SNSなどの情報が頻繁に飛び交う現在。見た目がいい=人気があると間違った認識をしてしまう要因になってるらしい。

    今はアプリで簡単に自分の顔を加工した画像が作れるから、SNSの投稿も加工画像でアップしたり、加工画像でリアルタイムのライブ配信が出来ちゃったりするからね。

    今の若い子たちは SNSに溢れるキラキラ盛り盛りの加工画像を見て「世の中 こんなに綺麗でかわいい子がたくさんいるのに 何故 自分はこんな見た目なんだろ」と心を病んでしまうらしい。

    コロナ禍が明けてマスク着用が個人判断となっても 「今さら自分の顔を同級生に晒せない」とマスクを外せない子もたくさんいるみたいだし。

    「あなたがあなたであることに絶対的な、かけがえのない価値があるのだ」

    作中の精神科医の言葉。

    そうだよー。そのままのあなたが かわいいよって抱きしめてあげたいよ。(こわいこわい、何者?笑)

    • 1Q84O1さん
      え…!?
      私はノー加工ですよ!
      素で勝負です( ・`ω・´)
      え…!?
      私はノー加工ですよ!
      素で勝負です( ・`ω・´)
      2023/11/15
    • ゆーき本さん
      かっこよっっ!!笑
      かっこよっっ!!笑
      2023/11/15
    • 1Q84O1さん
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/11/15
  • 作品の構成と幾重にも重なる謎解き要素に惹き込まれる作品だったと思います。

    ⚫️ストーリー
    大御所ミステリー作家・室見響子の遺稿が見つかった。
    それは彼女が小説家になる前に書いた『鏡の国』という私小説を、死の直前に手直ししたものだった。
    「室見響子、最後の本」として出版の準備が進んでいたところ、担当編集者が著作権継承者である響子の姪に、突然こう告げる。
    「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思います」――。

    削除されたパートは実在するのか、だとしたらなぜ響子はそのシーンを「削除」したのか、そもそも彼女は何のためにこの原稿を書いたのか……その答えが明かされた時、驚愕の真実が浮かび上がる。(Amazonの紹介文より引用)

    ⚫️構成
    まず本作を語る上で大事なのは、作品の構成です。紹介文にありますように本作の序章で、ある小説家が残した遺作に違和感があることが示唆され、私たち読者は、その遺作を登場人物たちと一緒に読むという展開になります。そして各チャプターの切れ間に、違和感ポイントが提示されていくという構成になっております。

    ⚫️感想
    まず作品中に出てくる「鏡の国」という作品自体が面白いです。「ルッキズム」やそれに関わる病気を絡めながら、1人の半生を描くとともに、ミステリーや恋愛要素も追加して、割と内容てんこ盛りで、この遺作だけでも割と満足感がありました。そして、この遺作に隠されたエピソードの内容が明らかにされてからは、それこそ世界が「反転」したような感じがあって、思わず感嘆の声が漏れました…

    本作の良いところはこの見事な構成力によって、私たちが「探偵役」として謎と向き合うことができるだけでなく、長い物語のチャプターの切れ間にヒントが提示されることで、そのモチベーションがしっかり維持できるような構造になっていることかなと感じました。

  • 作中の「鏡の国」が面白くて、途中で作中ってことを忘れてしまうくらいだった。
    帯にある「反転、反転、また反転」っていうほどの反転ではない気がしたけど、仕掛けが随所にちりばめられていて、とにかく引きこまれる。
    編集者の勅使河原による種明かしでは、自分の読みの浅さを感じてしまった。
    今まで読んできた本も、真の部分までは理解できていないのかも…。

  • 今は亡き大物作家を叔母にもつ主人公。その叔母の編集者が遺作である「鏡の国」に違和感を持ったことを主人公に話しに来る所から物語は始まります。

    そこからは、六章で構成される遺作「鏡の国」が始まり、一章終えるごとに、現実世界に戻り、主人公と編集者が語り合い、終わると次の章に進み、小説の中で小説が進んでいきます。

    小説の中で小説が進むという展開に驚駭しました。そして、小説自体のミステリー、小説の中の小説のミステリーどちらも伏線が多く散りばめられ、終盤にかけて、点と点が線につながっていく展開に、ページを捲る手が止まりませんでした。

    タイトル、表紙の四つに割れた鏡に映る女性。物語を読み、全ての意味を理解できた時の満足感は、今年読んだ小説の中でも上位です。

    人は誰しも人には言えない病気や悩み、コンプレックスを抱えて生きています。他人にとっては「えっ?そんなこと?」と思える事でも当事者としては「そんなこと」ではありません。私もありますしね。
    外見でそれに気づければいいけど、内面だと気づくのがほぼ無理なこともあります。
    言動には注意していかなければいけないと考えさせられました。

  • ミステリー好きの娘のススメで拝読。二重構造の構成は興味をそそったが、二重構成はなくてもいいかと思うほど作中作が面白かった。全体理解した上で視点を変えて読み直すという楽しみがありそう。その意味では二重構造が功績。

  • 初読みの作家さんです。
    ミステリーの巨匠の遺稿を巡っての話。その「鏡の国」には削除されたエピソードがあるとの事。作中作の話も面白い。真相(犯人?)はなんとなく読めたが、更なる真相には全く気づかなかった。ここまで楽しませてくれる小説もなかなかない。

  • 面白かった。
    登場人物と共に、ミステリー作家の遺作を読みながら、削除されたエピソードのヒントを探していく構成。種明かしをされると「あぁー!たしかに!」と納得させられる。ほとんど伏線に気づけなかった。

    テーマとしてはルッキズムが大きいが、精神科や心療内科への偏見も大きなテーマだった。
    身体醜形障害(醜形恐怖症)、相貌失認、不安など、だれもがかかりうる心の病気に関して、私たちは勘違いや思い込みをしている。
    昔、小学生くらいの頃、男子たちが頭がおかしいとかキモいとか、そんな理由で「精神科へ行け」と言っていたのを思い出す。とても不快なエピソードだが、精神科は頭がおかしい人が行くところだという偏見をいまだに捨てきれない人は少なからずいるのではないか。
    この作品を読めば、そうした考え方が、苦しんでいる人たちをさらに苦しめていることに気づくことができるだろう。

    また、心療内科の小田医師の言うように、その人自身が「苦しい」と感じていることは、ほかの人と比べる必要も我慢する必要もないものなのだということを、もっとたくさんの人が心に留めておけたら、少しは生きやすくなるのではないかと思う。
    とにかくこの小田医師が素晴らしくて、フレーズの付箋がとまらなかった。現実にいたらお世話になりたい。

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著者プロフィール

1986年福岡生まれ。京都大学法学部卒。2012年、第10回『このミステリーがすごい!』大賞隠し玉に選出された『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』でデビュー。翌年同作で第1回京都本大賞受賞、累計250万部を超える人気シリーズに。この他の著書に『夏を取り戻す』、『貴方のために綴る18の物語』、『Butterfly World 最後の六日間』など多数。

「2022年 『下北沢インディーズ ライブハウスの名探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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