顔のない男

  • 冨山房
3.86
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本棚登録 : 140
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784572004642

作品紹介・あらすじ

結婚が趣味の母親、頭の良い異父姉妹…。女ばかりの家族の中で馬鹿にされ、大人を信用できない14歳の少年チャールズ。夏の日、顔半分に火傷を負ったと出会い、現実を見つめ愛を恐れずに生きていくことを知った。中学生から。

感想・レビュー・書評

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  •  フォローさせて頂いてる方の本棚で見かけた本だった、と思います……。(あやふや)
     いつも楽しく拝見しております。ありがとうございます(ペコペコ


     正直に言って、読む前に同性愛を扱った物語だということを知って、少し尻込みする気持ちがあった。
     私のイメージする同性愛のはなしはいわゆるBLとニアリーイコールだった。事の発端は私が小学生時代に姉が間違えて買ってきたスラムダンクの同人誌だった。表紙イラストがあまりにも井上雄彦先生の画風に似ていたため、間違えて買って来たらしい。そして私も間違えて読んだ。大変なことになっていた。
     原作ではあんなに晴子ちゃん大好きな桜木花道がどうして流川と×××しているの? どうして三井と小暮は当然のようにデキているの? BLというのはなんだかよくわからないがとにかく男同士が愛し合っていて、ときにはイヤンなシーンが描かれていたらそれでよしみたいな、そんなイメージを植えつけられて私は育ったのだった。今ではそういうものもそれなりに理解はできるけど、積極的に好きではないし、できたら人目につかないところでこっそりやっててほしい、ぐらいに思っている。○浦し○んとかBL小説を普通の文庫で売りつけやがってホントトラウマなんですけど……ああ、話が横道に逸れてしまった。

     いうまでもなく、『顔のない男』はBLではない。チャールズの家族は女ばかり。母親は結婚と離婚を繰り返し、姉のグロリアと妹のメグの三人のきょうだいはみな父親が異なる。姉妹はともにチャールズよりも出来がいい。グロリアは後から生まれてきたチャールズへの嫉妬から、彼につらくあたるようになり、母もグロリアの味方をしてしまう。この母娘は二人とも孤独を恐れているだけに見えるのだけど、そのために弟を(息子を)に孤独を押し付けてしまっていることに思いは至らないようだ。そしてチャールズは女性に対して不信感を抱くようになってしまう。マクラウドと出会う前から、彼には同性愛の兆しがすでに見えていた。
     このくらいしっかり書き込んであれば、同性愛もひとつの人間愛のかたちなのだと自然に理解できるのになあ。(もちろん、それをBL同人誌に求めるのは無理である)
     チャールズにとって救いなのは妹のメグの存在だ。末っ子のメグは聡明で家族をよく観察している。マクラウドに勉強を教わるようチャールズに提案したのはメグだ。そうそう、末っ子ってそういうとこあるよねー。かくいうわたしも末っ子だが、彼女ほどよく家族のことを見ていたかというと、ちょっと自信がない。
     さて、顔半分が火傷に覆われている謎めいた「顔のない男」マクラウド。ミステリアスな彼の過去が気になってぐいぐい読まされる。まるでナチスの長官のごとき傲慢な態度は、チャールズをわざと遠ざけるかのようだ。彼は火傷と一緒に、心にも深い傷をのこしていた。二人の出会いはチャールズだけでなくマクラウドにも良い影響をもたらしたのだろうな。終盤のあのシーンはとても抽象的な書き方になっているけれど、まあ、突き詰めるのも野暮というか、だいたいアレなんだろうと勝手に解釈することにする。

     ただ、心臓悪いのに泳ぐなよ、とは言いたい。

    原題:THE MAN WITHOUT A FACE

  • これ以上はない。
    この作者の著書は50冊以上あるのに、どうして日本語訳されたものがこの一冊だけなのか理解できない。
    悔しすぎて英版集めるって決めた。

  • 何からも自由でいられるが、自分の行為の結果からだけは自由になれない。

    真理すぎて、身に染みる。切なくも真摯で爽やかな青春小説です。
    妹のメグがいい子。みんな目なんか見えなければいいのにね、本当に。ルッキズムにどうしてこうも苦しめられるのか、透徹してる少女の素直な言葉が刺さります

  • 児童小説ではあるが大人も読める一冊。
    家庭に居場所のない14歳の少年が、窮屈な家を出ていくために奮闘していく話。
    思春期真っ只中の繊細さや、心の座りが悪くて落ち着かないさま、身を湯だらせるような激情の後の、何もかもどうでも良くなってしまう空虚感など。痛々しい感情に振り回される様子に覚えのある人は、かつての自分に重なって読み進めてしまうのではないかと感じた。
    話運びのボリュームバランスが良く、思わず泣いてしまうシーンがあったり、爽やかさを残す読了感。

  • 児童書。外国特有の言い回しや考え方につまるところはあったが、興味深く読めた。
    主人公の姉が、主人公に辛く当たったり、姉自身も父親から悪戯されたり?
    主人公と先生が比喩ではあるが一晩を過ごしたりと、児童書だが重いことが書かれていた。

  • 思春期の少年の不安定な気持ちが、丁寧に書かれています。母と姉、特に姉との折り合いが悪いチャールズ。家から出るため、どうしても寄宿学校に入りたくて、<顔のない男>に勉強を見てもらおうとする。<顔のない男>とチャールズは、不器用ながら少しずつ心を通わせていたのですが…。
     私はチャールズの彼への思慕は“父性”への憧れだと思っていたのですが、“同性愛”の方だったようです。愛情がどちらなのかということを一概に言うことは出来ないと思いますが、元はその人が好きということで違いはありませんものね。
    同年代が読むと共感出来る部分が多そうな気がします。だから児童書なのか ^^;

  • 児童文学です。

  • 美しい表紙が印象的で手に取った本。
    家に居場所のない少年と顔の半分がない男のひと夏の交流。
    優しく甘美な時間と、どこまでも張り付いてくる現実。
    読後の爽快感が素晴らしい。
    この作者のほかの著作も読んでみたい。

  • 頭が鳥籠の男の表紙が印象的。苦くも優しく、爽やかな本…かと。(yaz_shigooo03)

  • 2001.1
    この本、最初は家がいやな男の子だったけど、だんだんホモになっちゃう本なんだ・・・。なんかホモ?とか悪いとか言いたくないけど、あんまり好きな本じゃないかな。14歳の子がドラッグしてたり、世界が違うって感じ。最後も意味不明でおわったよ。

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