- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575238433
感想・レビュー・書評
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目黒シネマを思い出しましたw いや、ポルノ映画館ではないんですけどねww
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往年の輝きを失い、休館の危機を迎えた映画館「金猫座」。そこに集まるのは訳ありな人ばかり。
かつて支配人が捨てた恋人の娘がアルバイトを志願したり、父親に頭の上がらない青年が幻覚に襲われていたり、窓口のおばさんの憧れの人が突如訪ねてきたり……。
不器用な生き方しかできない男女のドラマを哀歓たっぷりに描く。
昔の恋人の娘が、年齢を詐称してアルバイトに応募。ポルノ映画を上映している映画館での受付業務は気まずいだろうなぁ。来る人が。この子が、なぜアルバイトに応募したのか。
ヤクザ映画の登場人物の幻覚が見える青年。きっと今までの鬱憤というか、遅い反抗期だったのだろうな。
映画館に現れるという子供ではない座敷童子。それが、現れた。いつも突然現れては忽然と消えている老人。そして、休館が決まった映画館を惜しむ常連さん。その正体がすごかった。
窓口業務に勤しむパートさんの前に現れた昔の恋人の思惑、これはすごかった。今も昔も彼は変わっていなかったんだなと。
ポルノ映画の題名ってなんかすごいんだなと思った。どんな内容なのか想像させ、そしてある意味わくわくさせるかんじがすごい。任侠映画も見たことないけど、男と男の熱い戦いがあるんだろうな。見るなら任侠映画か。
2023.11.18 読了 -
ロマンポルノ上映館「金猫座」。オールナイト上映のときだけは昭和の古き良き映画を流す。
ママに聞かされて続けていた彼、健司君が務めるのはそんな映画館だった。
「吸殻受けを覗き込むと、さっき健司君が落としていった煙草が、水浸しになった吸殻の上にうまく乗りかかって、白い煙をしぶとく吐き続けている」
この部分がとても印象に残っているのは諦めた顔してそのくせ自分の中で消化し切れない何かが私の中にくすぶっているからなのかな。
クセの強い登場人物(弱冠ヒトに非ず?)がゴロゴロ出て来ては、金猫座の一部と化していく。人の記憶と建物の歴史をまとめて想い出と呼ぶのかもしれない。 -
映画館をめぐるはなしにしてももう少し統一感がほしかった。
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加藤元さんの小説を読むと「懐かしさDNA」を刺激される。
なんていうのか、行ったことのない街であっても、会ったことのない人であっても、かつてそこに住んでいたような、いつか遠い昔どこかで出会っていたような、そんな気持ちにさせられる。
毎回お客を入れ替える最近のシネコンではなく、町の中にどしりと建っていた二本立ての映画を上映していた映画館。しかも途中から入って次の回の途中まで見ることもできるし、気に入れば何度でも続けて観られるという太っ腹の映画館。金猫屋はそういう昔ながらの映画館。
映画館自体がなんとなく胡散臭いのだけど、そこに関わる人たちがこれまたみんな胡散臭げで怪しげで。
その、胡散臭さにどっぷりと浸ってしまいました。
不器用で、打たれ弱くて、頼りなげで…そんなちょいとダメっぽい人たちばかりだけど、なんだろなぁ、放っておけないっていうか、見てらんないっていうか。
ついつい中に割って入って「ちょっと、アンタたち、もういい加減しゃんとしなさいよ!」なんて言いたくなる。
そう、いつの間にか自分もこの金猫屋ワールドにはまり込んでいるのである。そうか、そうか、なんてことない、私もダメっぽい人の仲間じゃないか。いや、うれしいねぇ。