- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575238785
感想・レビュー・書評
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ときどき見えざるものが見え、聞こえざる声が聞こえる、少年。
武蔵御嶽山の山上にある、親戚である御師の屋敷での出来事や、伯母の寝物語などを描いた、短編集。
少年は筆者のことだそう。
神々や死者をともなう、不思議な出来事の数々。
神々に対する、素直な畏敬の念がベースにあり、恐ろしさよりも、清らかさがある。
少年が主人公でありながら、静謐な世界。
時代設定もあるが、独特の雰囲気があった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
浅田次郎さんは母方が神社を守る(という言い方があってるかわからんかど)旧家で、子供の頃の話が中心。神通力のある伯父さんやその兄弟の話、神様や狐憑きなど不思議な話が多く面白かった。
私自身が最近修験道を行ったりそんな話を聞くことが多いのでリンクしてるのも興味をそそられた。 -
浅田作品の底に流れる奇譚的な要素はここにあったのかと知らされた。
武蔵御嶽山、あまり知られない名の霊山ではさまざまな不思議が起こる。
現の中に不思議が混在する著者の作品はその不思議を実体験したからこそのものと思われた。 -
知人推薦本
これは御岳山に行かざるを得ない -
私には合わない話だった。淡々としていて日常的なのは自伝だったからなのだろうか。面白いとも怖いとも思わなかった。
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奥多摩の御岳山の神事に関わる一族が体験する山の怪異譚の短編集。
宮部みゆきの「三島屋」シリーズや、漫画「百鬼夜行抄」みたいな世界観。
心霊的な話もあれば、狐つきや天狗、山伏に関する話もあり、いかにも山の宿坊で起こりそうな話で面白そうなのだけど、最後までなんとなく今ひとつグッとこないまま終わってしまった。あんまり怖くなかったからかな。
でも、御岳山のあの雰囲気を思い返しながら読んだので、次にあの場所を歩く時はきっと前とは違った気持ちで歩くだろうなと思った。
天狗岩、軽々とのぼってしまっていたけど次回は躊躇しそう。 -
武蔵御嶽山の霊山にまつわる小話。
語られる人物は同じ人でもその人との関係性、年代が違う目線での話。時代掛かって今イチピンとこない話もあったけれど、一番心に残る話は「天井裏の春子」。老狐とその狐に取り憑かれた年若い娘の話が胸に迫りました。どちらの気持ちも分かるだけに切ない。老狐を想って泣く春子の気持ちも切なかった。
その他「兵隊宿」や「宵宮の客」などすべて魅力的な話でした。 -
著者が少年の頃に聞いた、伯母の怪談のような夜語り七つ。
人界と神界との境目にある山での出来事。
「聖」が最も心に残りました。
己が為すべきことは、己が成るべく目指している存在への道ではあるが、その道でたどり着くことができるかどうかはわからない。
わからないが、進むためには一歩ずつ歩くしかなく、常に自分への不信との葛藤を抱えて歩むしかない。無理解だけでなく徒労だという、周囲からの無言の圧力がある。
孤独しかない。
結末も救いがないと思ってしまうが、それが望んでいたことかもしれないし、望みはしないが成るために為すべきことだったかもしれない。
どうすればよかったのか、どうしようもなかったのか。自然が自然のままあるように、そうであると受け入れるしかないのか。
無力感なのかねぇ。共感も拒絶もなかったんだよなぁキゼンさんに対して。
なんというか、考えても考えても出口はないよなぁ。 -
久しぶりの
浅田次郎作品
相変わらずの
心に沁みこんでくる
ストーリーテラーぶりを堪能させてもらう
読んでいる間
「遠野物語」が思い出されて
同時回想していました
この世ならぬモノは
いつの時代でも
確かに存在し
確かに畏れられ
確かに敬われている