きらきら眼鏡

著者 :
  • 双葉社
3.90
  • (74)
  • (108)
  • (65)
  • (13)
  • (3)
本棚登録 : 824
感想 : 91
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575239270

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • +++
    愛猫ペロを亡くした喪失感にうちひしがれていた立花明海は古本屋で普段は読まない自己啓発本を買った。
    中には前の所有者か、「大滝あかね」と書かれた名刺が挟まっていた。
    そして自分が唯一心を打たれたフレーズには傍線が。明海は思い切ってあかねにメールしてみるが……。
    新たな出会いとともに違う人生が現れ、明海は悩み、勇気を奮い、道を決めていく。
    +++

    明海(あけみ)という名前でいじめられ、名付け親だと思っていた祖母を責めたことがトラウマになり、人の反応を先読みして、できるだけ害にならないように生きてきた25歳の青年が、人や言葉との出会いによって少しずつ自分を認め、受け容れ、成長していく物語である。会社の先輩の弥生さんや、ケラさん、そして、古本屋で買った自己啓発本に挟まっていた名刺の持ち主・あかねさん。誰もが胸の裡に屈託を抱え、それをそれぞれのやり方でなだめながら生きている。悲しみや苦しみに満ちた毎日だとしても、心の中のきらきら眼鏡をかけることによって、輝きにあふれたものに変えていくことはきっとできるのだ。後半はあたたかな涙が止まらなくなって困った。人前では読まない方がいい一冊である。

  • 2015/12/24(木曜日)

  • 「死」あるいは「別れ」。人生の中で避けては通れない瞬間。その瞬間はわずかな時間であっても、すぐには通り過ぎてくれない時間。森沢明夫が、「死」に主眼を置いて書いたのは「夏見のホタル」以来だろうか。弱くて頼りない主人公が、自分に向けられた「別れ」や「死」を経験して、一つ先の世界へと歩み始める瞬間までを描く。自分が生まれて親族がなくなったのは祖母の一回きりだけれど、その時に、自分は感情豊かに泣けていたのだろうか。

  • あかねさんをギュッと抱きしめたい。
    誰かを好きになるのってとても幸せなことだけど、その幸せさと同じくらい悲しみや苦しみも伴うんだよね。いろんな偶然が重なって人と人は出会って、その偶然の中で「恋」も始まってしまう。誰かに恋する気持ちは自分でさえもどうすることもできないから、その気持ちを持て余して空回りしたり的を外れたりもする。だけど、だからこそ、恋はステキ。
    あかねさんがいつもつけている「きらきら眼鏡」。哀しい時には眼鏡がくもったり、腹が立ったときには外してしまいたくなったりもする。だけどいろんなモノをきらきら眼鏡を通して見る、その気持ちさえ忘れなければ人生は今より少しだけ優しくなるはず。出て来る人みんなが優しすぎて泣きそう。

全91件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森沢明夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×