- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575239270
感想・レビュー・書評
-
+++
愛猫ペロを亡くした喪失感にうちひしがれていた立花明海は古本屋で普段は読まない自己啓発本を買った。
中には前の所有者か、「大滝あかね」と書かれた名刺が挟まっていた。
そして自分が唯一心を打たれたフレーズには傍線が。明海は思い切ってあかねにメールしてみるが……。
新たな出会いとともに違う人生が現れ、明海は悩み、勇気を奮い、道を決めていく。
+++
明海(あけみ)という名前でいじめられ、名付け親だと思っていた祖母を責めたことがトラウマになり、人の反応を先読みして、できるだけ害にならないように生きてきた25歳の青年が、人や言葉との出会いによって少しずつ自分を認め、受け容れ、成長していく物語である。会社の先輩の弥生さんや、ケラさん、そして、古本屋で買った自己啓発本に挟まっていた名刺の持ち主・あかねさん。誰もが胸の裡に屈託を抱え、それをそれぞれのやり方でなだめながら生きている。悲しみや苦しみに満ちた毎日だとしても、心の中のきらきら眼鏡をかけることによって、輝きにあふれたものに変えていくことはきっとできるのだ。後半はあたたかな涙が止まらなくなって困った。人前では読まない方がいい一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2015/12/24(木曜日)
-
「死」あるいは「別れ」。人生の中で避けては通れない瞬間。その瞬間はわずかな時間であっても、すぐには通り過ぎてくれない時間。森沢明夫が、「死」に主眼を置いて書いたのは「夏見のホタル」以来だろうか。弱くて頼りない主人公が、自分に向けられた「別れ」や「死」を経験して、一つ先の世界へと歩み始める瞬間までを描く。自分が生まれて親族がなくなったのは祖母の一回きりだけれど、その時に、自分は感情豊かに泣けていたのだろうか。
-
あかねさんをギュッと抱きしめたい。
誰かを好きになるのってとても幸せなことだけど、その幸せさと同じくらい悲しみや苦しみも伴うんだよね。いろんな偶然が重なって人と人は出会って、その偶然の中で「恋」も始まってしまう。誰かに恋する気持ちは自分でさえもどうすることもできないから、その気持ちを持て余して空回りしたり的を外れたりもする。だけど、だからこそ、恋はステキ。
あかねさんがいつもつけている「きらきら眼鏡」。哀しい時には眼鏡がくもったり、腹が立ったときには外してしまいたくなったりもする。だけどいろんなモノをきらきら眼鏡を通して見る、その気持ちさえ忘れなければ人生は今より少しだけ優しくなるはず。出て来る人みんなが優しすぎて泣きそう。