- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575239393
感想・レビュー・書評
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生活保護や高齢者問題等の社会問題を内包したミステリ。そりゃあ不正受給は許せないと思います。ある意味の「正義」に燃える人たちの思いも、分からないではありません。だけど……。
本当に。なぁんにも見えていませんでした。
当事者でなくては、いや、それどころか当事者であってすら、見えていないことって決して少なくありません。先入観と偏見によって、見えるものはがらりと変わってしまいました。
スリリングな展開のあとで訪れたこのカタルシス。やりきれなさを感じつつも、読後感は穏やかでした。だけどそれが本当なのかな? というのもまた疑ってしまいそうで。いろんな意味で恐ろしい作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あまり本を読まない私にとっては物語が長かったですが、最後の締めくくりは気持ちいい終わり方でいい本だと思いました。
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115こういう作り方なら最後の10ページだけ読んだらいいようね。途中までのさまざまな物語が意味のないものに思えてしまう。ごめんなさい。
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年金財政の破綻、生活保護不正受給、医療、介護費用の問題など、社会保障に係る諸問題を背景にしたミステリー。ブログや介護用ロボットなど、最近の流れやアイテムも盛り込み斬新な感じに仕上がっている。福祉団地の住民が引き起こしていると思われる不正、虐待、こどもをターゲットにした事件に対し、自らの境遇と比べ憤懣やる方ない登場人物たちが思いきって取った行動に同情しながら読み進めていたが、最後に、見事にひっくり返される。ただ、途中、主語がわかりにくく、読みづらいと感じたのも事実。
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「幸せすぎるおんなたち」に続き2作目の雀野さん作品。やはり「世間」に対するアイロニーというか、ブラックユーモア的視点の描写がものすごい勢いで綴られる。なかなか表に出ない生活保護制度の悪用の実態、またそれを成敗して自分のうっ憤を晴らそうとする人間の脆さや弱さ。夫婦、家族、子育て、ママ友カースト、介護等々、問題山積。途中から救いがない感じがしてきて、ちょっと息苦しさすら覚える。雀野さんの心の底にあるであろう怒りが筆を走らせるのかななんて、勝手に想像。でも見方、感じ方は嫌いじゃない。
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福祉に力を入れるA市。大晦日、市営団地の一室で、老女と中年男性の遺体が発見された。
物語は死の数ヶ月前に遡る。子育て中の主婦、貧困に喘ぐバイト青年、老後の身の振り方を
模索中のサラリーマン、三つの視点から進んでゆくが、各々が出会うある人物がキーマン。
いかにも怪しげ、その正体は家族への暴行に生活保護不正受給者?まさかの連続殺人鬼…?
雀野さんと言えば「トンコ」ですかね。他作品も私は結構好きな感じで、面白く読みましたが
小説はもう書かれていない、らしい。残念だなー。 -
これは本当にもう、とてもとてもずるい小説だ。最後の最後に自分の醜さを実感させられる。人間て、なんて弱いの。ある一面で全て分かった気になって。自分勝手に善と悪と区別して。よく書いてあったもんね、「何も見えていないあなたに、見せてあげるって」それってもうまんま読者のことだったのね。つらいつらい。こんな辛い小説初めて。でも読んでよかった。本当に大切なことに少しだけ近づけた気がする。これから手に取る方、冊子背面のあらすじだけで絶対に判断しないでね。あれは触りですらない。何も考えず無の境地で読むが吉。そして衝撃を。
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高齢者福祉に力を注ぐA市が舞台のミステリー。「巧妙な仕掛けと意外な事実に驚愕必至の長編ミステリー」とありますが、終盤の種明かし部分が余りにもあからさますぎて驚愕以前に興ざめです。読者はそこまでバカではありません。