うるはしみにくし あなたのともだち

著者 :
  • 双葉社
3.56
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本棚登録 : 783
感想 : 85
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243123

作品紹介・あらすじ

四ツ角高校三年二組で一番美しく人気もあった生徒・更紗が突如自殺する。遺書もなくいじめがあったわけでもない。彼女の死をきっかけに、次々に女生徒が見えない力によって容姿を傷付けられていく。互いを勘ぐり合う生徒たち、変化していくクラスカースト。担任の小谷舞香は、この異変の真相を探るうちに、地域につたわる「ユアフレンド」というおまじないの存在を知り――。

感想・レビュー・書評

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  • 高校教師の小谷舞香が担任するクラスで一番美しく、絶対的存在だった羽村更紗が突然自殺した。それは何年かおきに一人の少女の前に現れる謎の雑誌に載っている、同じクラスの女子のみに効果がある容姿を変えるおまじないで醜くされたせいだと噂が流れる。半信半疑だったが次々と現実に犠牲者が。誰がおまじないをかけている?舞香と更紗の信奉者だった鹿野真実が真相に迫る推理パートと美醜で固定される立場に振り回される少女達の苦悩が違和感なく混ざりあっていて読み応えあった。顔が変えられる描写が気持ち悪くその後の絶望が胸に来る。男共の自分を棚に上げまくった行為にムカついていたら返す刀で自分の中にも同じ下衆さがあるのに気付かされたりといった寒気も。最終的な真相がやるせなさ過ぎるが落とし所は上手いと思った。読み終わってから色々な箇所を読み返して確認してしまうのはミステリ好きの性だな。

  • ホラー感強めのミステリー。
    呪いをかけた犯人は誰だ⁈
    呪いの内容が恐怖で見た目も変わっちゃうし、それに伴って痛みも感じる。
    女の子にしか効かない呪いっていうのも、キツい。
    真犯人全然思ってた人と違ったな。
    幼い頃から親にかけられた美醜の呪いを女性が解くのはなかなかに大変と感じた。

  • スクールカーストのあらすじを追っているうちにいつの間にか犯行が加速して目が離せなくなった。
    女子の容姿はいつの時代でも問題があるんだなぁ〜と感じた。

  • 面白かった。先が気になってわりとはやく読めた。オチも考えさせられる。困ったのは佳以外の登場人物がいまいち覚えられなかったこと。可愛い・まあまあ可愛い・可愛くない・カースト上位下位という説明しかなく1人1人の印象がとぼしい。性格やクラブ活動や趣味やエピソードがほしかった。後半の佳と椛島のやりとりとても好きでぐっときた。いちばん好きなシーン。ステゴドンってマストドン(サービス終了らしい)っぽい何かなのかな。前に登録だけしたけどピンとこず。それにしてもユアフレンドの仕組みがめちゃくちゃ面白かった。可愛くする方のおまじないももうちょっと見たかった。可愛くしてもらえる方も女の子は執着しそう。男子は昆虫みたいに描かれてて面白かった。誰かに彼氏とか好きな男がいたらまたどろどろするだろうな。ユアフレンド次は誰に届くんだろう。デスノートみたい。続編むりかな。うるはしみにくしあなたのともだち2!読みたい。

  • 怖かったー。桂と同じで私も騙された。

  • 「その時私は私のみにくい顔を見つけたのだった
     そうしていつまでもじっと見つめていた」

    わかりやすいあらすじは、ブクログのあらすじに書いてあるので十分だと感じたので割愛する。

    うるはしみにくし…外見の美醜について、ある者は己を醜いと苦しみ、ある者は己の美しさゆえに愚鈍になり、ある者は自分の美醜を棚に上げて他人の美醜を評価しあげつらったり。
    外見…特に顔の美醜と、それに対する世間の目、ヒエラルキー、それらによる苦しみ優越、特にそれらの評価から逃れられない学校や家庭での閉塞的で陰湿な空気感。
    恐ろしいほど綿密にそれらの描写・設定がなされており、それでいてしっかりとホラー・ミステリー要素もきっちり盛り込み面白く。
    さすがの筆力で一気に読み進められた。と同時に、ここまで描けてしまう作者の観察眼と構成力に脱帽。
    作者はどんな思いでこの作品を書いたのか?
    恐ろしいほどだ。

    この本に共感する人は本当にたくさんいると思う。
    私も自分の顔に今はそんなにコンプレックスはないが、やはり特に学生時代は顔での優劣や評価をつけることを隠し立てもせず皆がやっており、大して美しくなければそれをはっきりと口にしそれを理由に見下す、そんな風潮の納得のいかなさと憤りを思い出させられた。
    本書が図書館のティーンズコーナーに分類されているのも頷ける。そんな風潮に疑問を投げかける作品だから。
    まあ大人になっても残念ながら、そのような高慢なランク付けをして、愚鈍にも人を傷つけていることにすら気づけずはしゃぐ(失笑)人間は多いのだが。
    その辺りもしっかりと本書では描写されている。
    胸糞悪いくらいに。
    そう、本書はホラーという非現実的なジャンルでありながら、現実の残酷さをありありと見せつけてくる、胸糞悪くて救いのない話なのだ。
    だからあまりにも外見について辛い思い出がある人にはおすすめできない。耐えられるなら読んでほしいが…そうでなくても精神的に不安定な時はおすすめしない。
    しかし、この作品は主に女性の美醜に焦点が当てられているが、世代性別問わず、全てのルッキズムに囚われている人に、読んでほしい作品だ。
    美醜について、評価する側もされる側も、もれなくルッキズムに囚われている。
    救いようのない物語にすることで、よりルッキズム社会に対する挑戦的な作品となっているからだ。
    ルッキズムに囚われている人間だらけの社会で互いに傷口を広げ合う、私たちは何なのか。
    そうも思わされる。
    またそのようなルッキズム社会で傷ついてきた人たちの、まだ残る心の傷を胸に、呪いや心の醜い人間たちに立ち向かう描写もあり、それら登場人物(主に担任とクラスの少女たち)の心の変化や成長が、救いのない中でも鮮烈なメッセージとして胸に強く刺さる。

    あとは、章の始まりごとに、その章のテーマと思われる主に人間の外見の美醜について書かれた文献からの引用がある。
    章を読み終えるごとに初めに戻って引用部分を読み直すのもおもしろい。
    様々な人の視点から物語を読み進められるところも、登場人物の名前を覚えてきたら面白くていい。



    以下ネタバレ含む簡単な感想になるので注意
    まとまってないです。

    本書は人間の醜さを余すところなく見せつけてくれる作品だが、同時にその醜さに抗い、己の傷ついた心を奮い立たせて立ち向かう、3年2組の担任教師舞香の自省と成長には目を見張るものがある。
    ルッキズムの世の中に憤慨し絶望するだけでなく、己の中の美醜の価値観と傷つきに向き合い、生まれ持った顔や体質などのせいで人から蔑まれながら生きるとはどういうことなのか、改めてその重さを実感しながら生徒たちと向き合う姿。
    それに胸が動くのだ。
    彼女自身が家族に容姿について馬鹿にされ続けたトラウマを持っている。そんな自分ですら心ない言葉をかけてしまうことがある。そのことについて真剣に自省する。その姿に共感し、私も共に自省する。
    その姿は3年2組の女子生徒、九条桂にも見られる。
    彼女は中学のときに事故に遭い、顔に醜い傷を負いマスクを外して過ごすことができない。
    そんな傷ついた彼女も、最初は熱心に犯人探しをするクラスメイトの真実に付き合って呪いに関する情報を集めていただけだったが、次第に自身の傷つきに改めて向き合いながら、他のクラスメイトたちにも向き合おうと懸命に努力するのだ。
    そして犯人(重大なネタバレ防止としてぼかさせていただく)の吐露する心情も。
    読んでいて胸が痛く、救いが欲しかったと心から思う。少しでも、ほんの少しでも環境が違えば…。
    違う未来があったのではないかと思わずにはいられない。
    死人が出ているといっても、どうしても犯人を悪く思えないのだ。だって犯人の境遇を思えば最終的にどす黒い感情に突き動かされても仕方がないものだから。
    ユアフレンドの残酷さよ。
    この学生時代という閉鎖空間を乗り切れば違う世界が…あったかはわからないや………
    改めて世の中の理不尽と残酷さを感じる。
    大人になっても犯人が救われたか分からないとしか言えない現実に。
    最初の呪いの犠牲者の羽村更紗については、うん、無自覚性格悪いというか心無さすぎるというか、私も好きにはなれない。一番本作で嫌いなキャラクターかも(タイで足立以外の男性教師陣と蚊帳の外で死人が出ているのに好き勝手やってるクラスの男子)。
    逆に椛島さんには無理しないでよ…自虐なんてしなくても強がらなくても明るくなくても私あなたのこと好きだよ…と思いました。一番心がうるはしい子だと。

  • 人を醜くも美しくもできる「おまじない」の噂がある高校で次々に生徒の容姿が変貌していく。果たして、この犯人は誰なのか?というような学園ホラーミステリーでした。

    題材としてはどこかで見た気がするような既視感は否めないですが、容姿が変貌する描写に関しては身の毛がよだつほどの怖さがあり、そこが本作品の良さなのかと思います。

    グロテスクな描写が一部含まれていますが、割とライトなミステリーとして楽しめると思います。

  • 最後まで予測がつかない展開に一気読み。
    面白かった。

    持つ者が悪意なく人を傷つける事。
    持たないと思い込み、悪意に染まってしまう事。

    おそらくホラーなのだろうが、とても哀しい話だった。

  • ※醜形恐怖の女、虐め被害経験がある女は気を付けて読むべき。

    元々図書館で借りて読んだけど、共感で身震いして号泣するくらいには刺さったので購入予定。

    親族に投げ掛けられる言葉、優れた身内との比較、学校で、クラスで、教師の中でのカースト・ランク付け、全部全部分かった。

    のぞみもちあきも自分に向けて願いを書いていたけれど、同じように特別な人間になりたいなんて大それた望み持ってなくて、周りと、皆とおんなじ、普通の、普通の見た目で普通の成績で普通の運動能力で普通の性格で普通に両親がいて普通に友達がいて普通に恋人が出来て普通に進学して就職して普通に暮らせる、そんな人になりたかった。

    この作品を読んで、普通以上の人はおまじないをかける加害者を非難して疎んで白い目を向けるんだろうなって考えるとつらかった。こっちは軽い気持ちで外見を貶すくせに全く覚えていない方が憎たらしい。

    のぞみのおまじない相手の選び方は間違っていたとは思う。私なら言葉の暴力で自分を傷付けた人間だけを呪うから。でもずっとカースト上位で常にこっちを見下してくる奴らにおまじないを使いたいのは痛いほど分かる。特に羽村とのぞみのやり取りは育った環境の違いがしんどくて、自分がのぞみそっくりでぼろぼろ泣いた。

    私が小中高生の頃に、ユアフレンドが届いたら良かったな。

  • 数年に1度誰かに伝わるクラスメイトの容姿を変えられるおまじない。
    事件は止まることなく被害者がどんどん出てしまう。

    半分過ぎくらいで犯人がわかって、そしたら??ってなって真犯人がいるってわかる。
    じゃあ、なんとなくあの子かなって思ったら作中でも同じ予想があって違うことがわかり、最後の最後に真犯人がわかる。

    途中まで犯人が誰か全くわからなくて事件描写が続くけど、犯人が出てくるあたりでペースが上がる。
    全編通して読んでて容姿について考えさせられる。
    実際生活していく上で容姿が占めるものは大きいし、どうしたって対応は違ってしまう。

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著者プロフィール

1979年、大阪府生まれ。東京都在住。幼少時より怪談/ホラー作品に慣れ親しみ、岡本綺堂を敬愛する。2015年に「ぼぎわんが、来る」(受賞時のタイトルは「ぼぎわん」)で第22回ホラー小説大賞<大賞>を受賞しデビュー。2019年、「学校は死の匂い」(角川ホラー文庫『などらきの首』所収)で、第72回日本推理作家協会賞【短編部門】受賞。他の著作に『ずうのめ人形』『などらきの首』『ひとんち』『予言の島』などがある。巧妙な語り口と物語構成が高く評価されており、新たなホラーブームを巻き起こす旗手として期待されている。

「2023年 『七人怪談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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