乳房のくにで

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 387
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243260

作品紹介・あらすじ

21世紀目前、福美は困窮していた。抱えた娘の父親は行方知れず、頼る実家もなく、無職。ただ、母乳だけはあまるほど出続ける。それに目を付けた、母乳を欲しがる家庭に母乳を届ける活動をしているという廣田に福美はナニィ(乳母)として雇われることに。すると、かつての同級生の政治家一家から、ナニィの指名が入り……。
ひとはいつ「母」になるのか。母乳によって子を手放した女と母乳によって母となり得た女の視点から、母性を描いたサスペンスフルな長編。

感想・レビュー・書評

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  • ちゃろちゃすさんの感想が気になって読んだ本。

    もう、グイグイ引き込まれていきました。
    千代(義母)が恐ろしい。
    悪魔のような性格…
    人を陥れるためには、どんな手段も使う。
    相手のことを何も考えない無神経な人。
    息子を一人産んで、子宮筋腫が原因で子どもが産めなくなり、政治家の旦那は愛人を作り隠し子を二人も作られ
    後援会のパーティーでは「女は子どもを産めなくなったら終わり〜」などと言って失脚するのに千代の性格は変わらない…
    旦那にそんなことされたら、性格変わりそうなのに…

    嫁(奈美)は子どもを産んだが、母乳が出ず
    孫(光)のために乳母(福見)を雇う
    光の父(秀人)は福見の初恋の人

    福見はシングルマザーで生活に困ってる中、ナニィホーム(母乳のネットワーク)の廣瀬さんに救われ
    いじめっ子だった、政治家一家の奈美の息子の光の乳母に。
    →ここから、千代にうまいように使われとんでもない展開に…
    奈美は離婚するが光の親権は奪われて
    秀人は千代に逆らえず、奈美にも冷たいし、浮気相手が3人もいる最低なやつ。

    秀人が再婚して子供が産まれると、光に対して家族が冷たくなる…

    その後、光が波美と再会して
    奈美は選挙で元夫と対決

    奈美が当選するけど、元夫は比例の復活当選…

    てか、この復活当選の仕組みが不要に思う…


    母性に翻弄される話

    福見も自分の子ども沙羅がいるのに千代に光を優先しろの一点張りだし。
    無慈悲すぎる。
    沙羅がグレなくてよかった。

    本の中でに出てくるとんでもない法律が頭にくる。

    独身課税方→30歳までに結婚しないと男女ともに税金が上乗せ
    出産促進法→40歳までに子どもを産まない夫婦はともに年金額が祭減らさせる

    こんなのが、できませんよーに

    • pさん
      千代、ほんと最悪ですよね。
      あんなの身近にいたら最悪ですよ。鬼ですよね。
      秀人も小さい頃は、いい奴だったのに…
      でも金が絡んでたから優しかっ...
      千代、ほんと最悪ですよね。
      あんなの身近にいたら最悪ですよ。鬼ですよね。
      秀人も小さい頃は、いい奴だったのに…
      でも金が絡んでたから優しかったのか??
      福見の母、登場するのか⁉︎と思ってたけど出なかったですね。
      沙羅ちゃん、めっちゃ良い子に育って救われました。
      普通、グレますよね。
      2022/06/11
    • ちゃろちゃすさん
      光もわりとまともっぽいのが意外でしたね。
      祖母も父もアレだし、母とは疎遠だし。
      これはまともな大人にならないぞと思って読んだんですが、周りが...
      光もわりとまともっぽいのが意外でしたね。
      祖母も父もアレだし、母とは疎遠だし。
      これはまともな大人にならないぞと思って読んだんですが、周りが異様だからか、よさそうな子じゃん!と思ってしまいました。
      2022/06/12
    • pさん
      光、不憫でならないと思ったけど良い子に育ちましたよね。
      今後、弟と選挙で戦って欲しい。
      光、不憫でならないと思ったけど良い子に育ちましたよね。
      今後、弟と選挙で戦って欲しい。
      2022/06/12
  • これはすごい。
    日々の生活に困るシンママが、昔自分を苛めていた同級生の息子の乳母になる。
    それがまさかこんな展開になるなんて!面白すぎて1日で読み終えた。

    乳母の福美、その乳母に息子をとられる形になり結局シンママになる奈江。
    作中でそれぞれの語りに代わるので、どちらの苦悩もよく分かる。
    二人とも被害者。

    この国は、もう、母性という言葉で女性をがんじがらめにするのはやめないと。

    姑の千代のような、過去に女らしさや妻・母という世間が求める価値観で生きるしかなかった人達が、自然と次世代を生きる女性達を見えない檻に追いやるようなことをしてはいけない!

    母乳神話、帝王切開への引け目、保育園はかわいそう、母親なんだから⚪⚪は当然、園用の雑巾は手作りしないといけないとか、誰が得をするんだ?!

    本当にこの国は、滅びたらいいよ!と、苦い思いをしたことがある私は思ってしまう。
    女性からしたら、日本という国はブラック国家だと思う。

    この本の結末には希望を感じるが、
    同時にああそうだろうな、結局変われないんだろうなという絶望感がついてくる。
    表紙の女性の目、光がないでしょ。もうさ、絶望してる目だよね。

    読み始めた時はもっと軽めかと思っていたので、いい意味でやられた!
    これは未来ある若い男女にぜひ手にとってほしい。

    • pさん
      ちゃろちゃすさんの感想読んで気になって今読んでます。

      冒頭からグイグイ読めちゃいますね。
      ちゃろちゃすさんの感想読んで気になって今読んでます。

      冒頭からグイグイ読めちゃいますね。
      2022/06/09
    • ちゃろちゃすさん
      pさん
      私の感情たっぷりの感想をきっかけに読んでもらえるなんて、嬉しすぎます!
      グイグイ引き込まれますよね!
      感想ぜひぜひ聞かせてください!
      pさん
      私の感情たっぷりの感想をきっかけに読んでもらえるなんて、嬉しすぎます!
      グイグイ引き込まれますよね!
      感想ぜひぜひ聞かせてください!
      2022/06/09
    • pさん
      めっちゃ感想も引き込まれましたからね。笑
      めっちゃ感想も引き込まれましたからね。笑
      2022/06/09
  • <訪問>「乳房(ちぶさ)のくにで」を書いた 深沢潮(ふかざわ・うしお)さん:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/474660?rct=s_books

    国家に搾取される母性 『乳房のくにで』 作家・深沢潮(うしお)さん:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/60994?rct=book

    「母」とは何か。現代社会に通底する母性信仰の根を暴く|深沢潮『乳房のくにで』 | ほんのひきだし
    https://hon-hikidashi.jp/enjoy/115085/

    株式会社双葉社|乳房のくにで|ISBN:978-4-575-24326-0
    https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24326-0.html?c=30198&o=&

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      母乳が出ないことで母親失格とされた女と、母乳が出るばかりに利用された女。対照的な2人の行き着く先とは…|深沢潮『乳房のくにで』 | ほんのひ...
      母乳が出ないことで母親失格とされた女と、母乳が出るばかりに利用された女。対照的な2人の行き着く先とは…|深沢潮『乳房のくにで』 | ほんのひきだし
      https://hon-hikidashi.jp/enjoy/162025/
      2023/01/20
  • ちょっとできすぎなストーリーではあるが、とても面白かった。
    母乳だけはあふれるように出てくる貧困のシングルマザー福美は、乳母の組織を経営する廣瀬さんに救われる。そこで紹介された派遣先は、保守的な政治家の一家で、そこに嫁いだお嫁さん(奈江)は昔の同級生。自信家で、福美をいじめていたがそのことは全く覚えていない。彼女は仕事を続けたいが、姑から理解されず、早産で帝王切開の上、母乳が全くでないことをののしられ続けている。
    姑の千代の嫁いびりと、舅の保守的な考え(女は子供を産む機械だ!的な)の描き方が極端すぎる、と思ったが、実際ほんとにそんな発言した政治家いたな。それに、そこまで極端な発言をしなくても、あきらかにそういう考えを持っているから時々失言するよね、っていう政治家も実際いるし。それなのにとっとと政治の表舞台から退場してくれないのも、現実にあるので、そこまで極端とは言えないのかも。
    で、福美は奈江の息子(光)と愛着関係を築いていくが、徳田家では「おっぱいをあげる道具」としかみなされず、実の娘を後回しにしなければいけない状況。奈江は徳田家での居場所をどんどんなくしていく、みんながどうにもならない方向へと向かっていく。
    親子が引き裂かれるっていうのが、一番つらい。

    結果的に奈江は家を追い出され、親権も奪われ離婚。福美は逃げるように徳田家を出る。その時点で、奈江と息子(光)はどうなる?っていうのが一番気になる。
    小説では、一気に時間が進み、光も福美の娘も大学生になる。
    なかなか明快なストーリーなのだが、大学生になった光が、別の人生を歩む実の母と再会するシーンは素直に泣けました。複雑な奈江の気持ちを、美化しずぎず素敵に描いているなと思いました。
    この著者はほかにも、女性の生き方を考えさせる作品を書いているみたいなので、読んでみようと思います。

  • 序盤に「母乳=高尚・万能」と偏った考えを持つ登場人物がいて、ハラハラした。でも、参考文献のラインナップからよく調べて書いていることが分かり、安心して読めた。
    作者インタビューがきっかけで興味を持った。あらすじの内容的にも、自分の生活と重なる分野がテーマだと言う点でも、読むのはしんどいかも知れないと思った。しかし、沢山の問題提起がありながらもエンタメとして楽しめる展開で、あっという間に読んでしまった。


    (読んで考えたこと)

    1、母性ってなんだろう
    血の繋がりがあれば勝手に芽生える訳ではない。育てていく中で、沸いてくるものだと思った。福美→光の母性は、血の繋がりはなくても母乳をあげ続けることで生まれた愛情。
    対して、奈江→光は、血の繋がりがあるからこそ離れていても大切だし20年振りでも親子であることを実感できる。

    2、母乳の悪用ダメゼッタイ
    「母乳=単に栄養を与えるもの」ではない。それ以上の意味がある。親子の愛着の問題も絡むので、母乳を与えることを仕事として扱うのは、リスクがある。
    千代が福美や紗羅の人権を無視した行為を金と権力に任せて行ったように、立場の弱い物への搾取へつながるのではないか。たぶん、こういったことは代理母ですでに問題となっていると思う。

    3、広まれ正しい知識
    作中で奈江が語っているが、努力したから必ず報われるわけではないのが妊娠、出産、育児。私はここにものすごく共感した。
    個人のがんばりでは決まらないのに、社会が母乳や出産を神聖視すると苦しむ人が出る。出産方法や、母乳の出で優劣をつける考え方はなくなって欲しい。当事者にしか分からないので(しかも個人差が激しい)、小説をきっかけに多くの人に知って欲しい。

  • とてもよかった。
    冒頭からずっと先の気になる展開で、どんどん読めてしまった。
    深いテーマだけど、面白く、腹が立ったり、涙したり、、、
    たくさんの人に読んでほしいです。

  • すごい本だった。この国の根拠のない母性信仰と搾取はいつまで続くのか。答えなんてみんな分かっている。

  • 設定も展開も最高におもしろい。
    わたしが出産育児の経験がないからかもしれないけど、
    こわおもしろい世界観にどっぷりハマりました。
    久しぶりに時間を忘れて深夜まで一気読み。
    「光ちゃま」「ナニィ」って呼びあってたことに
    なんか分からんけどゾッとした。

  • タイトルとあらすじに惹かれて。

    独身やシングルマザー、母乳信仰など現代日本の問題みたいなものが詰まっていてちょっと考えさせられました。

    とても読みやすかったのこの作者の他の本も読んでみたい。

  • シングルマザーの貧困と仕事と子育ての話かと思いきや、予想外の方向に話が進み、一気読みでした。
    いつまでもおっぱいにしがみつかなくて良い国を目指す、いまの日本にも当てはまると思います。あと光ちゃまがまともな青年に育っていて安心しました。

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著者プロフィール

東京都生まれ。2012年「金江のおばさん」で第十一回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。著書に受賞作を含む『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』などがある。

「2022年 『わたしのアグアをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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